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39 ケインズと幼なじみ(ケインズ視点)

『ケインズ?』

 振り返るとそこには幼なじみのニオがいた。ニオは幼い頃に虹の聖女の力に目覚め教会に預けられてしまい、その後は白龍の生贄として選ばれ連れて行かれた、と噂で聞いていた。


『ニオ、まさかニオなのか?お前、白龍の生贄にされたはずじゃ……』

 目の前の幼なじみの姿に懐かしさと愛おしさが溢れてくる。だって、俺は小さい頃からニオが好きだったから。ニオが聖女として教会に預けられた時も、生贄として選ばれたと聞いた時も、どれだけ苦しかったことか。そんなニオが、今生きて俺の目の前にいる。


『驚いたよね、ごめん。これには事情があってね……』

『ニオ、何をしている』

 突然、ニオの背後から声がして、ニオはその声にビクッと肩を震わせた。


『あ、あのこれは……』

『その服装、王都の騎士団の騎士見習いか。なんだよ、お前だって他の男をたぶらかして遊んでるんじゃないか』

 ふん、といけすかない顔をした男が偉そうに立っている。こいつは、見たところ……騎士?


『そんな……たぶらかしてなんかない』

 暗く俯いて呟くニオ。一体、どういうことなんだ?


『あんた誰だよ。俺はこいつの幼なじみだ。こいつが聖女として白龍の生贄になったとばかり思っていたから、生きていてびっくりしてるんだよ。あんたはどういうことか説明してくれるのか』

 いけ好かない目の前の男にそう言うと、その男は一瞬目を細めてニヤリと笑った。


『そうか、こいつの幼なじみか。へえ、それはそれは。だったら教えてやるよ。俺は白龍使いの騎士。こいつは俺と俺の白龍の聖女に選ばれて俺と契約結婚した』

 契約、結婚?


『虹の力を持つ聖女は、白龍と白龍使いの騎士にその力を分け与えるために身も心も捧げなければならない。力を分けるために必要なことをするのが役目だ、こんな風にな』

 そう言って強引にニオの手を引っ張ったかと思うと、いとも簡単にニオに口付けた。


『〜!!!』

 ニオが抵抗しようとするがその男はニオを両手で拘束して執拗にキスを続ける。俺には見ていられないほどの濃厚で粘着なキス。


『おい!ニオが嫌がってるだろ!!』

 思わず叫ぶと男は横目で俺を見た、その一瞬でニオは抵抗を強め男を突き飛ばした。


『や、めて!ケインズの前でこんなこと……』

 ニオが涙を浮かべて口を拭きながら言うと、男は不機嫌そうにニオの肩を抱く。ニオは解こうとするが男の力が強くて解けない。


『キスだけじゃない、時にはそれ以上のこと、男女の交わりだって必要なんだ。俺たちはもうそれを済ませている』

 なぁ?とその男がニオに顔を近づけるが、ニオは顔を背けて目を瞑る。やめろ、それ以上ニオに触れるな、口を開くな、何も聞きたくない!


『ザイ、良い加減にしなさい。あまりにも悪趣味すぎる』

 突然その場の空気が変わる。声のする方を見ると、そこには人外離れした中性的な容姿の人間がいた。いや、人間?なのか?


『チッ、リオンか。なんだよ良いところだったのに』

『ニオ、こちらへおいで。君もすまない。うちの騎士が随分な無礼を働いた』

 うちの騎士?ということはまさかこれが、白龍……。


『つまんねぇな。興が冷めた。じゃあな』

 そう言って男は手をぷらぷらとさせながらどこかへ消えていった。


『また他の女のところに……』

『ザイのことは放っておこう、大切な聖女をこんなに悲しませるのでは白龍使いの騎士としてはもはや失格だ』

『でも、まだリオンの力は完全に回復してないじゃない!』

『君が拒まないのであれば私は君から直接力を分けてもらえる。……いや、ここでする話ではなかったな』

 白龍がこちらを見て呟く。なんだよ、一体どういうことなんだ。


『すまない、我々はここで失礼するよ。王都の騎士見習い君。いずれ任務で一緒になることもあるかもしれない、その時はよろしく頼むよ』

 男の俺でもどきっとするような微笑みで白龍がそう言った。


『ケインズ、いろいろゴメンね。また会えて嬉しかった』

『待てよ、せっかく会えたのに……もし何かあったらいつでもいい、俺を頼ってくれ!王都の騎士団にいるから!』

 立ち去ろうとするニオの背中に向けてそう言うと、白龍に肩を抱かれながらニオは振り向き、微笑んだ。




「っ!!!!」

 ガバッと起きると、そこは俺の部屋だった。全身に汗をかいている。


「くっそ……またあの夢か」

 最近、やたらとニオの夢を見る。若い頃、ニオと再会した時の記憶がそのまま夢になって出てくるのだ。多発する瘴気の事件や聖女の誘拐についてここのところずっと調査し、白龍使いの騎士団と連絡を取り合っているからだろう。


「胸糞悪い……」

 ポツリと呟くと、その声は部屋の中に悲しげに響いた。 




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