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25 誤解(ランス視点)

 ユーズ団長のお屋敷から自分の屋敷に帰ってきて一息つく。

 すっかり夜も更けてしまったので、きっとセシルはもう寝てしまっただろう。


 今日は色々あったけれど、団長と話ができてよかった。それに、セシルの可愛らしい姿も見れたしあんな風に言ってもらえて良い1日だったな。


 コンコン。

「ランス様、もう寝てしまいましたか?」


 セシルのことを考えていたら、まさにそのセシルの声がドアの向こうから聞こえる。これは幻聴か?


「え、ええと、起きているよ。セシル、どうかした?」


 答えると、控えめにドアが開いて寝間着姿のセシルが入ってきた。なぜか枕を両手に抱えている。なんで?

 というか、うわぁぁ可愛い、寝間着姿のセシルを見るのはこれが二度目だけど、やっぱりめちゃめちゃ可愛い。

 お風呂上がりだろうか、ほのかに良い香りがする。そうか、一緒に住んでいるから同じ石鹸を使っているし、俺と同じ匂いになっているんだ。でも同じ匂いだけどセシル特有の匂いというかいい香りが……って、俺、今すごく気持ち悪い男みたいだな。


「もしかして、また道に迷った?」

「ち、違いますっ!ランス様とお話をしたいなと思いまして」


 話?なんだろう。セシルが自分から話をしたいだなんて珍しい。え、まさかやっぱり俺のことを気持ち悪いって思い始めたからあまり触れないでくれとか?


「……ランス様、また勝手に悪い方に考えを巡らせていませんか?」


 俺の顔を覗きこんで呆れたような顔をしている。あれ、セシルには俺の気持ちが読めるのかな?


「ごめん、君のことになると悪い方に考えるのが癖になってしまってるみたいだ」

 自嘲気味に笑うと、セシルはほうっとため息をついた。


「私が悪いんですよね。ちゃんと気持ちを伝えようともせず、聞きたいことも聞こうとせず、すぐ黙りこんでしまうから」


 枕を両手でぎゅっと抱きしめる。あぁ、いちいち可愛いな。なんでこの子はこんなに警戒心がないんだろう。いくら夫婦になったとはいえ、男の部屋に寝間着姿でのこのこ現われるなんて何をされてもおかしくないと考えないのだろうか。そんな気持ちを抑え込んで、セシルの話に耳を傾ける。


「聞きたいこと?」

「今日ベル様に、ランス様とちゃんとお話しした方がいいと言われたんです。……その、浄化の日のキスの後、ランス様はすごく塞ぎ込んでいるようだったのでどうしたのかと思って気になっていて。私とキスするのがそんなに嫌だったのかなと……」


 セシルの言葉に俺は思わず目を丸くした。きっと今すごく素っ頓狂な顔をしていると思う。そのくらい不思議で意外な話だった。


「そんなことない!君とキスしたくないなんて思う男はいないよ。どうしてそんな風に思ってしまったのか検討もつかないけど」

 俺の言葉に顔を上げてじっと俺の目を見つめるセシル。あぁ、そんな辛そうな切羽詰まったような顔も可愛いな、なんてそんなこと思うのは今は止すべきなのはわかってるけど。


「本当ですか?だってあの後ずっと塞ぎ込んでいらっしゃいましたし……その、私なんかとキスをすることでご迷惑になる方がいたり、とか」


 セシルが一生懸命言葉を選んで言っているが、正直言ってる意味がわからない。


「迷惑になる相手?いないよそんな人。……ごめん、セシルの言っている意味が全然わからないんだけど」

 頭をかいてセシルに言うと、セシルは顔を青くしたり赤くしたり忙しい。


「その、あの、ですね、……ランス様に他に思う人がいらっしゃって、私とキスしたことでその方に悪いと思っているのではないかと」


 両手に抱えている枕をぎゅーっと抱きしめるセシル。え、なに、その可愛さ。そしてやっぱり何を言われているのかわからない。俺に他に思う人がいる?どうして?


「そんな人いないよ?俺が大切に思う人はセシルだけだ。どうしてそんな風に思ってしまったのかわからないけれど……俺が塞ぎ込んでいたからそう思ってしまったの?」


 そっとセシルの顔を覗き込むと、セシルは慌てて目を逸らして小さく頷く。この子は教会から逃げ出そうとしたり、聖女の力についてわかった後でも契約結婚すると決心したあの子と本当に同じ子だろうか?あの時の意志の強い瞳とは真逆で、今はすっかり萎縮してしまっている。このギャップは狙っているのだろうか、いや、セシルにはきっとそんな器用なことはできないだろう。


 このまま小さい子供のような可愛らしいセシルを見ていたい気もするけれど、今は一刻も早く誤解を解かないといけない。すうっと深呼吸して、俺はセシルに話しかけた。




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