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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

花束を抱えて

作者: 岡村
掲載日:2023/01/18

例えば、猿が交尾をしたい雌に近づく時

花束を抱えて愛を囁くだろうか。


食べ物でも無ければ、自分と子供を守れる強い雄だと証明するものでもない。


では何故人は交尾したい異性にそれをするのか?

好意とはなんだろう。

相手は自分にこんな感情を抱いて欲しくてこんな行動をしたのでは?

なら、私はそれを踏まえて、目を輝かせて花束に頬を埋め、感謝の言葉を伝えよう〜

なんて

互いにゴール地点は見えているのに蛇行するような、摺り足で進むような無駄な行為では無いだろうか。


正しい手順をトレースすることは出来ても、

私にはその意図が皆目理解出来ない。




「でね、私告白しようと思うの。」

昼食の最中、彼女は高らかに宣言した。


「おお、すごいね。」

これは私の素直な感想。


「なんだっけ、部活の先輩?」


「そうそう。

絶対人気あると思うんだ。スタートダッシュミスったせいで成約済みになっちゃったら悔しいじゃない?」


「なんだよ成約済みって」


「予約済み・・・?売り切れ?

まあそんなような意味。」


「いいんじゃ無い?私甲斐のそういうアグレッシブなとこ好きだよ。応援するね。」


甲斐と呼んだのは彼女のこと。

高校に入ってからの友人なので、長い付き合いでは無いが真っ直ぐな性格が心地よく、気に入っている。


「ありがとー、七海ー。

上手く行ったらお祝いになんか奢ってね。

あ、ダメだった時もなんか奢って慰めてね。」


「どっちにしろ奢るんかい。」


「・・・いや、試合に臨む前に負けた場合のこと考えちゃダメって誰か言ってたな・・・ナポレオン・・・?」


「猪木」


「猪木か。」


つい手に力が入るのか、手に持ったツナサンドの中身が出たり引っ込んだりしてるのを眺めながら。


「告白ってなんていうかどっちにも不利なシステムだよね。」


「と、言いますと?」


「大抵は、そこを通過した後でプレゼンが始まるわけじゃない?OKしてもらわないことには自分を知ってもらうことも出来ないというか。」


「なるほど、ポケモンで言うとステータスもタイプもわからない状態で見た目から選ぶのむずくない?みたいなことだね?」


「そうそう、そんな感じ。」


「そう考えると見た目も大事だよねえ。

七海から見て私はどう?予選は通過出来そう?」


「外見なんて好み次第だからなあ。

甲斐は普通にかわいいと思うよ。」


「褒めたってなんにも出ねえからな!

からあげを一個あげよう。」


「出んのかよ。」


実際の話、私にはそれがわからない。

どうやってよく知りもしない相手を「この人だ」と選べるのだろうか。

将来的に好きになる可能性がある。

なんて決められるのだろうか。

みんなは私には見えないパラメータが見えているのだろうか。






ああ、甲斐って泣くんだ。

なんとなく彼女を「強い人間」にランク付けしてしまったからだろうか。

私が最初に抱いた感想はそれだった。


「恥ずかしながら予選落ちでした。」

彼女は鼻を啜りながら笑った。


「そうか。甲斐はがんばったよ。」


「うん。」


「甲斐はかわいいよ。」


「うん。」


彼女がどんな理由で選ばれなかったのかは知らない。

たぶん彼女もそれを言わないだろう。

だけど、彼女の「好き」が踏み躙られた気がして無性に腹が立った。

でもそれを相手にぶつけるのは違う。それくらいはわかる。それこそ彼女の勇気を踏み躙る行為だ。


「なんで七海が泣くの?」


「甲斐はかわいいよ。」


「うん。」




「七海って泣くんだ。」


「泣くよ。」


ああ、そうか。

花束は笑って欲しい相手に渡すんだ。


私には今も彼女のパラメータもステータスも見えない。

だけど、もっと知りたいと思ってしまった。

ゆっくりでもいいから同じゴールを目指すことが出来たら素敵だなって、そう思ってしまった。


私は「好き」を見つけた。

いつか彼女のように、伝えられるといいな。


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― 新着の感想 ―
[一言] 随分と淡々とした主人公だな……という冒頭からラストへの変化に、「好き」という気持ちの強さ・大きさを感じました。 ふたりの何気ない会話が心地良く、この関係性がずっと続いてほしいと思いますね。 …
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