表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蜘蛛人間  作者: 双澤金魚
8/8

明かされる真実

蜘蛛人間事件は多少世間を騒がせた。

巻き込まれた佐々木萌乃や安藤早希、ショーン武藤に注目が集まったのはもちろん。蜘蛛人間の風貌が世間の興味を一層盛り立てた。


1年が過ぎた。

大きな事故も、事件も起こらない日々。

俺か拳銃を使うのは後にも先にもあの事件だけになるだろう。

そんな安心もあった。

何気なくつけたテレビで、映画ランキングというのをやっていた。

「10週連続1位の作品は、ショーン武藤監督の蜘蛛人間です。ホラー界に革命を起こした映像表現とリアリティ。この夏見るべき映画です!」

キャスターがそう伝えた。

映像は短く、薄暗い映像でよく分からなかったが。

ショーン武藤と蜘蛛人間というこの単語から、ショーン武藤があの事件からインスピレーションを受けたことは間違いなかった。


非番だったので、ふらっと映画館に入った。

映画館でホラー作品を見るのは少し緊張した。あのデカいサウンドで恐怖を煽られたら、大の大人でも少し震えるだろう。

後方の端の席に座れた。

そこ以外は、すっかり埋まっており、おそらくリピーターと思われるグッツを身につけた客も多かった。

面白くなければ出ればいい。

そんな気持ちで見始めた。


そして、後悔した。

映画終わり、エンドロールまで目を話せなかった。

何度も、めまいがした。

映画館を飛び出すと、駅前のベンチに座り込んだ。

「俺は人殺しだ。」

汗が止まらなかった。

ラストシーンはリアリティを超えていた。そう、俺の見た景色そのものだったのだ。

あの映画は、アラーネという結合双生児を上手く操り、警察官の俺が彼を撃ち殺して完成する映画だったのだ。


おそらく、冬木とショーン武藤は繋がっていたのだろう。冬木の邸宅で撮影されたと思われるシーンもあった。

隠しカメラだろう。アラーネが町で暴れるシーンも様々な人のスマホ映像を繋げていた。

ヒロインの名前は峰原純菜。佐々木萌乃が演じている。

隣人で劇中では通報者になっている安藤早希は役名、西村徳子だ。

純菜の家となっている場所は、あの撮影所兼稽古場だった。

2階には数人のスタッフが常に駐在し、隠しカメラやマジックミラーを使い巧みに映像に収めていた。

まるで、アラーネと純菜の生活そのものを移したように。

アラーネ役は数名の役者がCGで演じたことになっていた。


アラーネ。彼は様々な違和感を持っていた事だろう。

そして、金儲けのために育ての親の冬木、そしてショーン武藤によって殺されたのだ。

しかし、忘れてはいけないことがある。

実際にアラーネを殺害したのは、この俺だ。

この事実を報告するべきか。

それとも、俺は殺人者として生き続けるのか。


俺は絶望した。

あの蜘蛛人間を思い出しながら、泣き叫んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ