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小坂の部屋から戻ってくると、紗綾たちは再び各々のベッドに寝っ転がって浦添の話をまとめた。しかしそれは個人の意見であって、なんら新しい情報は出てこなかったから割愛させていただこう。ただ、舞は籠塚が怪しいと言っていたこと、美輝は特にコメントをしなかったことだけは記しておこうと思う。
夜も十一時を回ると、なんだか紗綾は眠くなってきた。布団にくるまりながら話をしていたからだろうか。見てみたら舞も眠い目をこすっている。先ほどから美輝が何も言わないなと思っていたら、美輝はもう夢の中にいるようであった。確かに今朝は早起きであった。行きの電車で寝られるかと思ったが舞が寝させてくれなかった。疲れているのか……? 舞がもう寝ようと言い出した。確かに、いくら今考えてもこれ以上進展がないことは明らかであった。何よりも頭がずっしりと重い。明朝になれば警察が到着するはずである。舞がエイヤッと起き上がると部屋の電気を消して紗綾の横に寝っ転がった。本当に寝ちゃっていいのかな、紗綾の心のどこかにはそんな気持ちもあったのだが、起き上がるのも億劫になっていた。意識していないとまぶたが開かない、暗い部屋の中、今自分が起きているのか、それとも眠っているのかがだんだんわからなくなってきた。
日付が変わる頃、三人の部屋の中には三つの寝息が聞こえていた。
中庭は一切の灯りが消え闇の中にあった。ごうごうと風の音がする。空を見上げると雲の流れが早く、月が見えては隠され、見えては隠され、時々うっすらと闇夜を照らした。
ふと、コテージの一つからすぅっと影が伸びた。かと思うとそれはすぐさま塀に張り付く。風の音は、この何者かにとって好都合であった。きっと、あなたが今この場にいたとしても、その影がどかに向かったか、知ることはできなかっただろう。いくつかのコテージを横目に影は塀沿いに歩いて行った。ふと、あるコテージで立ち止まると、影は素早くコテージの窓に張り付いた。このコテージは、他のコテージに比べるといくらか無骨に見える。というのも、窓に鉄格子がはめられているのだ。この鉄格子のコテージこそ、もとの駒澤文名がアトリエとしていたもので、今は支配人である籠塚の居室となっている。鉄格子の中の窓はカーテンが閉められていた。はて、あの影はここで何をしているのだろう。しばらくカサカサと草が小さく揺れた。するとどうしたことか、少し部屋のカーテンが動いたではないか。影はその中を覗き込んだ。そこはちょうど支配人室の寝室にあたっていた。折しも月が顔をのぞかせ、その明かりに照らされた寝室のベッドには籠塚が眠っていた。




