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八輪

 セセリ伝鈴が鳴ったので町の散策を切り上げて二人はエーク協会に戻ったのだが、塔一階を探してもコルー達の姿はなかった。


「いませんね~」

「二階ですかね?」

「受付に聞いてみましょう~」


 受付の人の話によると、すこしだけ問題があったらしく二人は依頼を持ってきたあのエークの偉い人に連れられて今は二階の応接室で話しているらしい。ルル達にはここで待っているよう言われた。


「そうですか。森でそのようなことが…」

「筋糸。本来、生まれつき腕や足が動かない人に縫い付け、動けるようにするもの。それを、あのような扱い方をするとは。気分が悪い」

「まったくだ」

「分かりました。この件はこちらで調査します。まあとにかく、お二人とも依頼お疲れ様でした。報酬は受付にてお受け取りください」


 一階にコルー達が降りてきた。階段前で待っていたルル達と合流し受付へ報酬を取りに向かった。


「それではこちらが報酬になります」


 報酬は合計で金貨二十三枚、コルーはその半分の金貨十一枚と銀貨五枚を受け取った。ルル達はレウスとここで分かれ、改めて町を散策…したかったのだが、戦闘から戻ってきたコルーのことを考え、今日の残りは宿屋でゆったり過ごすことになった。個室のベッドに横たわってルルは考え事をしていた。


「今日は町の西側だったから明日は東かな…!」


 次の日。想像通り、今日は町の東側の散策をすることになった。こちら側も西側と似た構造をしているが雰囲気が違う。静かで落ち着いた西と違って、賑やかで活気のある場所だ。すこし道幅も広いかもしれない。


「わぁ~!」

「ここは、小躍り小道というらしいぞ。歩けば自然と体が踊り出してしまうほど楽しいこと間違いなしと書いてあるな」

「色んなお店が並んでますね~。どれから入ろうか迷ってしまいます~」


 道沿いにたくさんの店が並ぶ。小躍り小道は特定の店が並ぶわけではなく、なんでも揃う道なのだ。


「服屋の向かいにまた服屋、その隣には果物屋とは。まったく愉快な町だな」

「ですね~。住んでしまいたいくらいです~」

「ダメですよー。私達は旅人なんですからっ!」

「分かってますよ~」


 コルーとロッダの前を舞うように歩くルルはまるで小さな子供のよう。右のお店を覗いたり、左のお店を眺めたり。道は舞台、二人は観客、小躍りする少女は主役だった。


「そう言えば、その帽子はどうしたのだ?」

「えっ!?今、気づいたですか!」

「それはですね~。昨日、買ったんですよ~」

「そうだったか。なかなか似合っているぞ」

「えっへへ」


 コルーはとあるお店に目が止まった。同時に足も止まっちゃったのでルルやロッダが不思議そうにしている。声をかけてみようとしたが逆にかけられた。


「なあ、ロッダ。ルル」

「はい~?」

「なんですか?」

「二人は武器を持っているのか?」

「武器?」

「あぁ、旅をする上では必要性だろうからな」


 ともかく、ウェリウス武器防具店に三人は入っていった。店内は当然ながら多種多様な武器と防具で溢れていた。よくよく見ると変わったわ形や能力の武器もあった。


「いろいろあるなぁ」


 確かに、コルーの言うように旅をする上で護身は重要。戦闘になったらコルー頼りばかりでは、きっとこの先は大変だろう。常にコルーが近くにいてくれるとは限らないんだ。


「ねぇコルーさん」

「なんだ?」

「私、あまり剣のことは分からないんです。扱い方も…」

「なに。旅をしながら我輩が教えよう」

「本当ですか?お願いします!」

「あの~、僕もいいですか~?」

「もちろんだとも」

「ありがとうございます~」


 なぜか喜ぶ二人はお気に入りの武器を探しにサーっと店内に消えてしまった。店内は刀剣、鈍器、ポールウェポン、投擲、射出、格闘などなどあらゆる武器がある。そんななかコルーはある武器を手に取った。


「おぉ、これはフランベルジュか」


 フランベルジュとは波打つ刀身の剣その総称。フランベルジュというのは発音は誤りではあるものの炎を意味する言葉らしい。刀身が揺らぐ炎のようだからとそう名付けられたとか。なんと、この剣は死よりも苦痛を与えることで有名だ。


「うむ。相変わらず恐ろしいな」


 揺らぐ刀身を鞘に納め棚に戻すかと思いきや、なんとコルーは購入を決意した。すると、後ろにいつの間にかルルが戻ってきていた。


「コルーさんコルーさん!これどうですか?」

「なるほど、レイピアだな。刺突に優れた剣だ。護身用としてはいいだろう。だが、レイピアはダガーなどの小さな剣と共に扱うものだ」

「そうなんですか?」

「ダガーで敵の攻撃を流し、隙を見て突くのだ。そうだな、この短剣がいいだろう」

「わぁ~」


 今度はロッダも戻ってきた。しかしどうして、こんなにも種類があるのに誰も剣しか選ばないんだろうか。店主のウェリウスはルル達にそんな疑問を抱いていた。


「僕はこれにしました~」

「サーベルか、軽く扱いやすい。気に入ったのならいいと思うぞ」


 みんなそれぞれ、フランベルジュ、レイピア、ダガー、サーベルと気に入った武器を見つけ購入した。早速、店の外で装備してみた。新しいものを買うのは、その物がどんな物であれちょっとウキウキする。たぶんそれが三人の感情の状態だろう。


「次はどこ行きますかー?」

「明日からの旅の分の食材、買わないとですから、そういう食べ物のお店を~」

「ロッダさん、食材は後にしませんか?もっと町を見てからでも!」

「…そうですね~。そうしましょうか~」


 ということで、ルル達は小道をどんどん進みその途中途中でいろんなお店に立ち寄った。夕方になる頃にはなんとテルペを半周していた。たくさんいろんな物を見てきたが特に買うことはなく食材だけを抱え宿へ戻っていた。多くの荷物はただ旅を困難にするだけだからだ。


「なんか、前より食材少ないですね」

「はい~。次の町はここから近いですし、最近は狩も上達したので~」


 主に旅での主食は野生の生き物。狩はロッダがやっていて、手持ちの小さなナイフでどうやったか知らないがウサギやリスなど小動物を狩ってくる。なので、こうやって町で買う食材は調味料と日持ちする干した肉、乾物などだ。


「次の町、どこなんですか?」

「次は国境を超えますよ~」

「なんと!」

「シスカテル王国のリリオンで~す!」


 自然豊かな歴史ある王国シスカテル。982年の歴史をもつシスカテル王国は国土、人口ともに世界トップクラス。格式ある伝統と文化を守り続ける為にあまり他国の文化を取り入れなかったことがあり、少し技術面で遅れをとってしまうものの。そのおかげで、昔ながらのどこか懐かしい生活風景が見られるとか。しかしなんと、逆にそれが他国の人達からの関心や興味を惹いて、観光客や移民者が後を絶たないのだとか。自然と共存するシスカテルは、どの町にも必ず一つ絶景があるらしい。

 と、いうのを三人は食事をしながら宿屋の人に聞かせてもらった。それからというもの、ルルはシスカテルに早く行きたくてうずうずしていた。


「んん~!楽しみですね!シスカテル!」

「ははっ、そうだな」

「とりあえず、今のところ目的地は王都レブリステです~」

「王都からはどこに行くんですか?」

「まだ未定ですよ~。でも、シスカテルは東西に長いですから、行くなら北か南にしようかと~」

「北へ行けば雪国リーセレオ魔導王国。南へ行けば温泉地マクテリア国か」

「どちらも興味をそそられますね」

「リーセレオとマクテリア、どちらにするかは旅をしながら決めましょう~」

「はいっ!」


 明日はまた早い。今日のところはこの辺で、三人はそれぞれ部屋へ戻って休むことにした。明日からの旅への希望や期待を膨らませて、ドキドキが止まらないルルだった。

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