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人とゆかいな化け物たち  作者: 亥BAR
第4章 
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第6話 響輝の変化

 三階の教室で休憩をとっていた一樹たち。だが、あまり悠長に長居するわけにもいかない。文音が言う話が本当なのであれば、化け物化が進行する前に終わらせないとならなそうだし。


「奈美ちゃん、いくならもうそろそろ動かないと」


 奈美の近くにより声をかけると、奈美もうなずきつつ顔を合わせてくる。

「……そうだよね。……といっても、前に出て戦うのはあたしたちじゃないし。みんなはどう? いける?」


 そう言いみんなのほうへと振り返る。すると、なにやら話をしていた響輝と文音が少し遅れて振り向いた。


「え? ……あぁ……」

 はっきりとは聞いていなかったらしい。頭の中で理解させるのに時間がかかったのか、少し遅れて口を開く文音。


「そうだな。……さっさと行こう。ひとまずは、この三階にいるやつらを倒して、また一階に向けて降りていく感じか」


 文音が分析でもするように窓から外を見つつ言う。その隣では少し険しい表情を見せる響輝の姿があった。

 響輝は奈美の話に対して特に返事をする様子もない。


「……ふたりでなにを話していたの?」


「……あ、いや……」

 少し口ごもる響輝に対して、文音がフォローするように声を出す。


「次はだれが先頭に立とうかという話をしていただけだ。さすがにわたしたちふたりが後ろにいて、喜巳花と綺星を先頭に立たせるのは避けるべきだろう?

 ま、響輝は後ろにはいきたがらなかったがな」


 そう言って響輝の背中をポンと押した。それにされるがまま、前かがみになりつつ数歩前に出る響輝。すると、すぐに奈美の前で右腕を上げて見せた。


「おうよ。俺が先頭で化け物これからも蹴散らしていくからよ。三好たちは後片付け、しっかり頼むぜ」


 さっきまでの響輝の様子が完全に嘘だったみたいだ。明るくいつもの調子で勇ましくこぶしをブルンブルンふるっている。

 文音も腕を組みつつ、そんな響輝を見ているだけ。


「ゆっとくけど、適当に化け物の背中を撫でるだけ撫でて、無傷のもんをこっちによこすのだけはやめてや」


 ……いや、ほんと喜巳花の言う通り。今の化け物は適当に一撃見舞っただけじゃ倒せないのがほとんど。的確に首や頭といった急所を狙わないと倒せない。

 できる限り、なんとかしてほしいもの。


「なにを言ってる? 次は高森も先頭だぞ?」

「うっしゃ、かわいがったろ! 撫でつくしてよしよししたやつ、全員みんなに譲ったる!」


 ……喜巳花がこういう性格だってのは知ってた。


「息の根止まる最後まで面倒見てあげてね」

 奈美がすっごいいい笑顔でなかなか厳ついことを言ってくれる。そんな奈美の表情に少しビクついた喜巳花が適当にそっぽを向いた。


「というわけだ」

 パンと手をたたいてみんなの意識を集中させたのは文音。

「休憩は終わりとしよう。いいな?」


 全員しっかりとうなずくと、話あった通り、喜巳花と響輝を先頭にして再び廊下を出ていった。


 近くには化け物はいない。だけど、三階の向こう、特別教室棟のほうにはまだまだうじゃうじゃいる。渡り廊下のところにも。

 先頭のふたりが気合を入れてズンズンと進んでいく。

 そのまま、ふたたび化け物との戦闘に突入していった。


 しばらく化け物との戦闘を続けていると、響輝がさっきまでとかなり違っているのに気が付いた。


 ずっと、まるでみんなをごぼう抜きするようにひとり突っ走っていた響輝だったが、今は足並みそろえて、戦っている。先頭の喜巳花と並んで、近くにいる化け物のせん滅を優先するように。


 おかげで一樹たちの負担は少し減ることになった。


 奈美も当然、響輝の変化には気づいていたようで、驚きの表情を隠すことなく文音に声をかける。


「……文音ちゃん……、響輝くんになにを言い聞かせたの?」

「ふふっ、内緒だ」


 文音は小さく微笑みながら戦闘スタイルを変えた響輝を見ている。なんか、……この子、底が知れないな……。


「ま、でも、余裕ができるわけではないがな」

 そう言うと一気に飛び出した文音は響輝が取り逃した化け物に一撃を入れた。ちょうど、響輝を後ろから襲おうとしていたところ、容赦なく切り裂く形に。


 響輝は前を向いたまま、目の前の化け物に意識を集中させ続けている。それからというものは、本当に順調といえるものだった。


 三階は一気に踏破。続いて再び二階に降りて、残党を狩る方向へと戦いをシフトさせていく。もう、目に見えて化け物の数は減ってきているようだった。


 そして再び。

 二階の教室に入り、休憩を取っている。


「みんなのおかげで、だいぶ減らすことができたね。あとは……一階に残っている残党がほとんどって感じかな?」


 そう言って奈美が窓から一階を見ている。たしかにもう、二階や三階にはほとんど化け物は残っていない。やはり、出てくる数には限りがあったというわけだろう。

 ひとまず、ゴールが見えてきたと言えるほどにはなっていた。


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