表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人とゆかいな化け物たち  作者: 亥BAR
第4章 
83/168

第3話 役割分担

 化け物むらがる廊下をひたすら進軍。全員無事の状態で一階の渡り廊下を制圧することに成功した一樹たち。そのまま勢いに乗って、通常教室棟の一階部分も一気に突き進んでいった。


 化け物を突き当たりまで追い込み、せん滅。ひと通り、一階部分の化け物はすべて打ち倒すことに成功した。


 最後の化け物の首を打ち抜く響輝。

「よし、残り一匹、始末完了。これで一階は制圧だな」

「……ってわけでもなさそうだな」


 そんな風に響輝を否定しつつ、もといた特別教室棟のほうを指さす文音。そこにはいったん制圧したはずの化け物たちがまた、むらがっている状態だった。


 一応、周りにいる化け物はすべて倒してきたはず。トドメを刺しきれていなかったとは思えない……。ということは、また沸いたか……。二階の化け物が一部、また一階に降りてきたのか。


「……マジか……、どないせいっちゅうねん」

 まず割れることもない窓をたたきつつ現状に抗議する喜巳花。だけど、その声が天に届くことはないのだろう。


「……ま、サラさんがこもっている会議室が破られていないのか不幸中の幸いか……」

 遠くを見るような目で会議室の中を見る奈美。中ではサラが一体でじっとおとなしく待っている状態。


「……ひとまず、この近くにある食料をあさっていこう。二階以上はほとんど食料も残ってないからここでしっかり、取っとかないと」

 そう言って、一の二教室のドアを開けて入っていった。


 そう言えばそうだ。実質、まともに食料が残っているのはここの一階の二部屋と、二回の一部屋のみ。三階はなにも残されてはいない。


 一樹たちも一緒に教室に入っていくと、ふと思う。


「僕ら、後衛がいくらか食料を持ち歩こうか? せめて水だけでも持って行った方がいいんじゃないかな?」


 正直、さっきはそこまで思いつかなかった。最後だ、せん滅するぞ、なんて気を奮い立たせるので精一杯で冷静さが欠けていた。だけど、少し戦闘を続けた後、一区切りつけば、頭が冷えてくる。


「うん、それは後で思って、実は後悔もしてたんだよね。今からでも遅くはない。いくらか持っていこう。

 あと……」


 ダンボールから食料を取り出しつつ、奈美は文音と響輝のふたりに近づく。


「ひとまず先導ありがとう。次はあたしたちのうちのだれかが前をいくよ。ずっと前線を張るのは疲れるだろうから、交代で進んでいこう」


 そういう提案が来るのか……。奈美の提案をしながら内心、少しドキッとした。

 だけど、奈美のいう事に間違いは一切ない。なら、一樹自身も前線で戦う覚悟は今のうちに持っていた方がいいのか。


 ぐっと水が入ったペットボトルを握り締めていると、響輝は余裕そうな表情であっけらかんという。


「いや、別に俺はまだまだ問題ないぞ? っていうか、俺はずっと前はってやるよ」


 そんな響輝を少し憐れむような目で見る文音。

「……響輝、少しは奈美の言うことを察しろ。ようは、ひとりで突っ走るお前を先頭におけるかバカ、って言っているんだよ」


 ……文音も響輝の突っ走り具合に少し怒りを覚えていたらしい。バカの一言がすごく協調されて言い放たれていた。


 奈美は少し頭に手を当てつつ小さな声で言う。

「……そこまできつく言っているつもりはないよ? 否定はしないけど……、いやでも響輝くん自体には本当に感謝してるし……。響輝くんの行動が、あたしたちの戦う気力、士気を保っているのも間違いないし」


 ……珍しく奈美がはっきりと物事を言わないな……。いや、戦闘において士気は大切。勇ましく先陣を切る切り込み隊長がいるかどうかで、その要素が大きく左右されるのは間違いない。


 ……そうか……これは戦闘なんだ……、しかも今までもバラバラの戦いなどではなく、集団で立ち向かっている。そして、その指揮をとろうとする奈美。 

 なにより、この奈美の指揮は的確のように思える。


 いろいろ考えこむ上級生の中に喜巳花が割って入る。

「じゃぁ、こんどはうちも前に出るよ。前に出たがってる響輝と一緒に先陣きるわ。文音は今度、後ろに下がっててや。

 んで、そう考えたら、奈美と一樹は後衛確定やね」


「……なんで?」

 喜巳花がさも当然のように言ってきたので思わず聞き返してしまった。一応先陣をきるタイミングもくるかと意気込んでいただけに少し戸惑った。

 

 だけど、奈美は特に表情も変えずうなずいた。

「それはあたしたちが使うシステムの特性を見て、ってわけだよね? ウェストポーチのこれは回復などのサポート色が強いから。

 君たちのケガを後ろでなおすのが一番の仕事ってことになる」


 そうか……そう言えば、そういう物だったな。ほとんど、戦闘のアシスト程度にしか思っていなかったが、そういう特性があったよな……。つまり、一樹たちは戦場医ってわけだ。


 ……思えば、化け物じみた身体能力で翻弄する変身システム、銃器類で中間距離から化け物を打倒すプットオンシステム、そして回復可能なドレスアップシステム……。まるで、戦隊を組むような組み合わせ……。


 ……あぁ、もう察してしまった。これは意図されたものなんだ……。たぶんこうやって奈美が指揮を執るのも想定内……。すべては仕組まれている……。


「じゃぁ、それで行こうか。また特別教室棟にもどって化け物を倒し続けてもキリがないし、二階に進んでみようか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ