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第4話 できること

 ***


 一階、二の二教室。閉め切ったドア。その窓から廊下の様子をうかがう喜巳花と響輝の姿があった。


 リストバンドのシステムで力を得たままの状態で待機。今なお、ドアの前には化け物が何体もうろついている。


「……わらわら出てきたな……。今までと比べてもかなり多いんとちゃう?」

「だろうな。……明らかに多いのは違いない」


 響輝は拳銃を構えたまま、大きく息を吐いた。


 混戦状態になり、みんなとはぐれてしまった。たぶん、みんなも大丈夫だろうが、化け物の数の異常にも気づいているだろう。


 それに、この化け物も、前に職員室で戦った他より強いやつと同じレベル。この感じだと、だんだん強い化け物が意図的に校内に放たれていると考えてもいいんじゃないだろうか。


「ますます厄介な話になってきやがったな……。もしかしたら、これを仕組んだやつらは、そろそろ終わらせようとしているんじゃねえだろうな……」


 十分ことは済んだから、化け物の強さを上げて、このまま響輝たちを殺す。次のやつらに交代だ、って話か……。


「じゃぁ、終わらんだらええやん」

「……あぁ?」


 いきなり、ポンと軽いノリで超絶難しそうなことを言ってくる喜巳花。思わず荒い声で聞いてしまう。


 喜巳花は笑いながら親指を立てて言う。

「いや、ようはうちらがこのまま倒されへんだらええんやろ? なら、化け物をうちらで倒し続ければ終わらへんで」


 ……なんというか、……これまた楽観的な……。


「……あぁ……、いや……うん。終わらないのも……困るんじゃねえか? ……いや……え……っと、やられて終わりたかぁねえけど、ただひたすら終わらないのも……な。できれば……」


「よし、なら、バケモン全部倒し尽くそや」

 喜巳花は腕をブルンブルン振って元気よくそんなことを言う。控えめに言って頭空っぽだろう。


 ただ、現状において響輝たちができる一番のことが、喜巳花の言う通りなのも変わらない。結局、いまの響輝たちは、化け物に倒されないこと、そし化け物を倒すこと以外、できることはほぼない。


「……言ってることは間違ってないのかもしれないな。……三の一教室から化け物があふれ出しているらしいが、そこからまさか、無限に出てくるとは思えない。


 あの化け物も俺たちと同じようにクローンである可能性がる。となれば、当然数にかぎりがあると考えていい……。

 ……倒しきるのも……不可能ではないのか……」


「まぁ、ほかにも鍵ついた部屋はあったし、そこもバケモンの出現場所である可能性はあるけど、それでも数は決まってる。

 うちは……無理な話ではないと思ってるで」


 ……たしかに……。


 現状、化け物の強さは上がっているが倒せないレベルではまったくない。丁寧に一対一に持っていけば勝てる。


 もしやられるとすれば、ひとりで化け物に囲まれたり、不意を突かれたときぐらいだろう。そこに気を付ければ……。


 そんなことを考えていると、喜巳花が拳銃をぐっと持ち上げ構えだした。

「よっしゃ、周りでうろついてるバケモンぶったおしていこうや。んで、ついでやし、特別棟のほうの地下、見に行かへん? ちょうど一階やし」


 ……どうやら、喜巳花はもう十分体力を回復させたらしい。一応、唐突な戦闘で気分的に追い詰められていたはずなんだがな……。

 喜巳花の表情には、へたすりゃ笑顔が見えている。


「……お前、随分元気がいいな」


「うん! だって、うちの赤ちゃんに会えんねんで? 自分の赤ちゃんもいるって。うちが抱っこしたろか?」


「……成長した俺が代わりに言わせてもらう。やめてくれ」


 目の前で自分のクローンの赤子が喜巳花に抱かれているところなど、……想像もしたくない……。


「……ってか、赤ちゃんって例えがまず、あってるのか?」

「そんなん、直接見て確かめたらええやん。ほな、行こ」


 本当に軽いノリで急にドアを開ける喜巳花。

「って、おぉぅらぁあああっ!!」

 同時に目の前にいる化け物に重そうな一発かまして、銃を二三発たたきこんだ後、ドアを閉める。


「……目の前にいたらあかんって。ビックリしたやん」

「……」

 といいつつ、化け物一体のノックアウトに成功している。


 にしても、はたから冷静に見ていたらハッキリとわかった。喜巳花の戦闘技術が最初の時よりずっと上がっているように思える。急なことだったはずなのに、的確に化け物の急所をこぶしでしっかり打ち抜いている。


 自分自身も強くなっているのは自覚しているが、他人を客観的に見ることで、その傾向がよりはっきりとわかることができる。


「……ちなみにさ、柳生は記憶……デジャブがあるって言うけど、高森はなにかそういうのはあるのか?」


「……いや、まったく。毛ほどもない。うちらのクローンを見たから、そうなんか、って思えているけど、ぶっちゃけ信じられん話やんね」


「……そうか……」

 響輝も同じだ。デジャブなど感じたこともない。化け物と戦ったことなど、まるでない。


 だが……。

「戦い方だけは覚えてねえか? ってか……どんどん、戦いがうまくなってるっていうのかな……。やっぱり、これって……なんども繰り返された結果の積み重ねだったりすんのかなってよ……」


「……それ知って……どうするん?」


「いや……どういう目的があるのかな……って疑問に思っただけ……」


 でも、その疑問が解消できるかどうかはわからない……。ただ、言えることとしては……たぶん、それを知れた時、響輝たちはきっと、状況が変わっていることだろう。


 いい方向か、悪い方向かまでは……わからないが。


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