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人とゆかいな化け物たち  作者: 亥BAR
第6章 謎と高まる難易度
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第2話 難易度アップ

 次の日、午前中はしっかり休憩を取った後、全員で職員室の探索へと向かった。職員室の場所は二階、図書室のとなりだ。

 無事、そこまでたどり着きドアの前で立ち止まる。


「じゃぁ、入ろっか」

 奈美が戦闘に立って扉を開けた。が、その瞬間、すぐに締めた。


 ……なんかデジャブ。


「なかにやつらが居たのか?」

 響輝が静かな声で奈美に問う。


 奈美は神妙な顔をしながら首を傾げさせた。

「うん……。おかしいな……。昨日は居なかったのは確認済みだったんだけどな……。油断しちゃってたよ」


 昨日も職員室には一応、顔を出していた。中に入ってあちこち探索することまではやっていないが、化け物が居なさそうというのは確認済みだった。


「なんやろ。夜中に移動して入ったか……職員室に沸いて出たかやろね。昇降口は封鎖されてたんやし……、どっから来てもおかしないしな」


 響輝はさっさと銃を取り出し、構えたあと扉の近くで立った。

「どうだっていいよ。ようはまた倒せばいいんだろ? おら、先に行くぞ。ついて来いよ」


 こちらが返事をするまでもなく、一気に扉を開けて職員室の中へと入っていく響輝。

「ちょっ、待って……」


 奈美の制止の声が走るころにはすでに職員室の中で銃をぶっ放す響輝の姿があった。続くように喜巳花も入室。

 思っていた以上に、響輝たちは戦闘に対する抵抗が減っている……それどころか、どんどん慣れている。彼らを見ていればそう思わざるを得ない。


 一歩遅れて一樹たちが職員室に入ったころには銃声もやんで、戦闘が終了していた。


「よう、遅かったな。化け物は一体だけ。バッチリ倒せたぞ」

 打ち終わった銃を肩にかけてやたらと自慢げに言う響輝。もうなんか、こなれすぎちゃっているよ。無駄に天狗になってるし。


「……あの……」

 奈美が戦闘にこなれた響輝の後ろをゆっくりと指さす。

「……倒せてないよ?」


「……うん?」

 一瞬、停止した響輝がワンテンポ遅れて首を後ろに振る。あわせて一樹の視線も奈美が差すほうへ向ける。


「…………」

 化け物……しっかり立ち上がっていた。


「……もう一回寝てろ」

 シンプルなセリフとともに再び銃が撃たれる。それによって化け物は体が跳ねるのだが、倒れることなくまだ待ち続けている。……ていうか……、傷口……もうふさがり始めてない? ……再生してない!?


「べぇぇぇ~~~~~~」

 何事もなかったかのように鳴き声を発する化け物。


「なに!? お前、ゾンビなの!?」

 響輝のツッコミと化け物が飛び出したのは同時だった。一気に、響輝のいる方向に向かって駆け抜けてくる。


「響輝! 逃げて!」

「わかってる!」


 全員が弾けるようにその場を離れる。化け物の攻撃はだれにもかすらなかった。だが、化け物は特に気にする様子もない。キキキッという鳴き声とともに、再度こちらに体を向けてくる。


「みんな、撃って!」

 奈美の一斉攻撃宣言。一樹、喜巳花も銃を取り出し、一斉に引き金を引く。


 四人同時の一斉射撃が化け物の体を大きくふるわせる。だが、手ごたえがあったのは最初だけだった。攻撃を続けるが、だんだん化け物のひるみはなくなっていく。すると、銃弾の間を縫うように跳躍をしてきた。


 化け物の狙う先は……こちら……一樹のところ。

 銃を撃ち続けても止められないのはすぐにわかった。なので、一樹も後ろに跳躍しつつ逃げだす。

 だが、化け物との距離はグングン近くなってくる。


「させるか、オラぁ!」

 響輝が横から飛び出してきた。その響輝から繰り出されたこぶしが一樹に向かって突進してくる化け物をうがつ。


 だが、化け物。響輝の攻撃に反応したらしく、急に方向を転換、横に飛び出した。響輝の攻撃が空振りに終わるころ、化け物は職員室の壁を蹴り離れた場所で着地していた。


「……なにあの動き?」

「……うそやん……、昨日までのバケモンと全然ちゃうやん!?」


 奈美、喜巳花、化け物の動きに対して同時に驚愕の声を漏らす。これにより、この場にいる全員が、初めて見る動きであることがわかる。


「べぇぇぇぇ~~~~」


 見た目はいつもの化け物と変わらない。なのに、明らかに動きが違う。しかも、銃弾を受けても倒れなかったのもいつものやつらとは違っていた。


「……なるほどね……。こっちがレベルアップしたから相手の強さも上がるってか!? ゲームの基本がわかっているじゃねえか。

 でなきゃ、クソゲーになっていたところだ」


 奮い立たせるように声を響かせる響輝。いつもと違う化け物に対しても決して臆することなく挑む姿勢を見せる。

 ゲームだと言っているのは、みんなの不安を取り除くためか、自身の不安を消すためか。


 響輝は再び、目の前の化け物に対して攻撃を仕掛ける。接近戦での勝負。化け物の顔にこぶしがしっかりと入っていく。だが、化け物はそれにひるむことなく、響輝に向かって乱暴に手をふるってきた。


 化け物の長い爪が響輝の肩をえぐり吹き飛ばされていく。化け物も響輝の攻撃で吹き飛ばされ壁にぶち当たる。しかし、化け物は痛みをほとんど感じていないのか、そうとうな衝撃を受けたはずだが、すぐに再び接近行動を見せてきた。


 床に転がる響輝をかばうように間に入る奈美。

「一樹くん! 響輝くんの手当を! ライトくんは隠れてて!」

 この場に指示を出しつつ奈美は化け物に向けて蹴りを繰り出す。だが、化け物は方向転換をしたかと思えば、空中を舞いながら避けた。そのまま向かうのはライトがいる場所。


 まずい!

 ライトはみんなから離れるように逃げていたため、周りにはだれもいない。

「ライトくん!」

 奈美が宙を舞う化け物を追うように走り出す。だけど、タイミングが遅かった。奈美ではたどり着けない。


「あたしがっ!」

 そんななかで、化け物とライトの間にかろうじて入りこんだのは、化け物の姿になった綺星だった。


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