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人とゆかいな化け物たち  作者: 亥BAR
第5章 仲間と摩訶不思議な学校
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第4話 成長を超えたなにか

 少し……いや、かなりライトたちの話し声が大きすぎたのだろう。ライトたちが話をしている途中で入りこむように聞こえてくるやつらの鳴き声。

「べぇぇぇぇぇ……」


 気が付けば、彼らが二体、ライトたちの近くでこちらをじっと見られている状況になっていた。化け物がいるのは昇降口がある方向だ。

 化け物は今にも襲ってきそうに爪を見せびらかして体を震わせている。


「……先手必勝」

 こちら側の響輝は思っていた以上に冷静だった。すでに準備していた銃で素早く化け物を狙う。


 化け物の一体は、響輝の攻撃でひるみ後ろに下がる。だが、それは同時にもう一体の攻撃開始の引き金にもなる。

 化け物は爪を立たせてこちらに向かって振り上げてきた。


「……っ」

 少なからず反動が残っていたのだろう。ライトは化け物の攻撃に反応が一歩遅れる。だが、代わりに間へと入った喜巳花が対応。同じく取り出した銃で襲ってくる化け物の攻撃を押さえる。


「ナイス、高森。和田は下がってろよ」

 響輝は今度、両手で持つような大きさの銃を召喚。それはいわゆるマシンガンで、化け物二体を一気にうがつ。化け物はそのままあっさりと倒されていた。


 ……やはり、響輝も喜巳花もこの短期間でかなり成長を見せている……。いや、彼らはまだそれほどの戦闘を重ねたわけではないはず。だけど、……彼らはすでに戦い方を理解している……。


「……なんといいますか……おふたりとも……すごいですね」

 彼らふたりは自身の変化にどこまで気づいているのだろう。戦い慣れている自身に違和感を抱いたりは……していないのか。


「やろ? もっと褒めてくれてええねんで?」

「まぁ、ざっとこんなもんだ。もっと難易度上げてもらっていいくらいだな」


 ……違和感を抱くどころか、天狗になっちゃってるよ。

 だけど、このふたりはそもそも、細かいことは言うほど気にしないタイプだったっけ、なんて思いながら納得してみる。


 それに、どちらかと言えば、最初から戦い慣れしていたライト自身のほうがよっぽどおかしいんだ。文字通り、成長もなにも……もとから……。


「なんというか……、あれだな。思ってたよりずっと闘いに対する抵抗はなくなってきたな。システムの使い方もだいぶわかってきたし」


「それな! もう、敵なんていやんで。このまま、昇降口を出てって化け物の巣ごと叩き落してもええんとちゃう? ようは王様とりゃあええんよ」


 とか思っている間に、喜巳花と響輝はさらに調子にのってきていた。お調子者ふたりはなんか勝手にポーズとか取り出して……。

 ……ほんと子供……自分もだけど。


 一応、これは約束だったので彼らの横に立って手を挙げた。

「三好さんによってそれは絶対阻止するようお告げをもらっているので、やめてもらっていいですか」


 実はこの探索が決まった後、奈美からじきじきに声をかけられ、彼らの暴走はしっかり止めるよう念を押されていた。なぜ、二年が上級生ふたりの世話係に任命されているのかはいろいろ疑問だが。


「……あいつ、ちゃっかりしてやがるな」

「ほんまやね……」

 奈美の名前を出せばふたりは黙る。これも奈美から教わっていたことだ。なんやかんやで、奈美の世話焼きはしっかり功を奏しているというわけか。


「でも……、これでなおさら可能性は出てきたな。俺たちが昇降口に近づいていけば、化け物と出くわした。つまり、昇降口は化け物の出入り口と言うわけだ。

 あいつらはあそこからやってくる。逆に言えば、そこから脱出できる可能性はある」


「そやね。いいことづくしってわけやないけど。これで……なにかしらはわかるとええな」


 昇降口が開いていてそこから化け物が入ってきてくる。冷静になって考えればむしろ絶望なのではないかとライトは思う。もし、本当にそうなっていたとしたら、とてもじゃないが脱出可能であると思えない。


 いや、これがどんな状況でもなんとか希望を持とうとした結果の思考ということなのだろう。正直なところ、甘い話だとは思った。


 だが、ここでそれを指摘することはみんなの不安をあおること。奈美が言っていたように、不安を必要以上にあおるのはデメリットが大きい。今は黙ってついて行くのが……一番いい。


 角を三人一緒に曲がり、先にある昇降口を目指して歩む。……そして、化け物が侵入してくると想定されている入り口をその目でたしかめる時が来た。


 が……、

「開いてんのかいと思ったら、開いてへんのかーい!」


 と、言うことでした。

 ちなみに、これを叫んだのはもちろん喜巳花だが、別に喜巳花は直接入り口のドアを触って確認していない。見た瞬間、こう叫んでいた。


 それも当然だろう。本来、昇降口をと言えばガラス張りの大きな扉でできた出入り口をイメージするだろう。だが、実際、目の前に出てきたのはガラスどころか、鉄板でできた壁。


 隙間などどこにもなく、どう考えてもここから化け物が侵入しているようには思えない。なにより、これは……扉にはなっていない。


「……これ……「お前らにがしませんよ」感が半端ねえな。隠す気なんてさらさらねえぞ……、これ……」


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