第6話 オリジナルライトVS文音&綺星
オリジナルライトに追い詰められ、絶体絶命の最中。降ってくるように現れたふたり。
見た目はかなり化け物化が進行しているように見える。だが、その人たちは、まぎれもなく、文音と綺星だった。
響輝を手当てしていた奈美の手まで止まる。
「文音ちゃん……綺星ちゃん……。無事だったんだ」
そんな奈美に、文音が笑みを浮かべる。
「さすが奈美と一樹だ。救出、無事にできたようだな。信じて正解だったようだな。……それに……」
視線をオリジナルライトのほうへと向けた。
「ギリギリだが、間に合ったようだ」
「……ライトくん……」
綺星が少し戸惑うようにつぶやく。だが、……思ったほど驚いている様子もない。
「気を付けて! あれはライトくんじゃないっ!」
奈美の忠告に、文音は特に表情を変えない。
「だろうな。詳しいことはわからないが、さしずめ……、オリジナルの和田ライトのほうが近いのだろう。
人間も変身できるのか?」
オリジナルライトがアゴに手を当て、うなる。
「ほう、そこまで推測できますか。その通り、中身はオリジナルですよ。君たちのオリジナルから、話はどこまで聞いていたのでしょう」
「ふん。……総責任者で『悪魔』だなんて言われていたが。これはまた、随分と可愛い姿をしているじゃないか。
これじゃ小悪魔だ」
「わたし、悪魔なんて言われてました? そんなつもりは微塵もないのですが……。あとでふたりに問い詰めておきましょうか。
それよりは……」
瞬間、オリジナルライトの姿が視界から消える。爆速の踏み込みが、文音と綺星ふたりに向かって襲い掛かる。
が、ふたり。態勢を瞬時に低く構えたかと思えば、同タイミングで蹴り。きれい入ったカウンターで、オリジナルライトが後退した。
「……」
攻撃を当てられたほおと腹を軽く手で押さえている。それは少し戸惑っているようにも見えた。
しばらく。それもなかったかのように、次の動作。腰につけられた銃をクイックドロウ。ふたつの発砲音が空気に響く。
対して迎え撃つふたり。綺星は上半身だけを捻り回避。文音は伸びた爪ではじき、軌道をそらして対処してしまう。
ふたりからは、まだ余裕が見じみ出ていた。
「……本当ですか?」
オリジナルライトの表情に、はっきりとした驚愕がうつった。それは、一樹たちとの戦闘では決して見せなかった表情。
本気で驚いている。
「……そうか……。三本目の注射も済ましているわけですね? おそらく、二本目と三本目のスパンは短いはず。
完璧な状態ではないのでしょうが……、それでも十分でしょう」
オリジナルライトは両腕を持ち上げると、軽く戦闘態勢に戻る。
「どうやら、実験は、まだ続ける必要がありそうですね。君たちの戦い方も、この体でじっくりと検証しなくてはなりません。
完全体に近い形態の実力。図らせてもらいます」
ズシンとピリピリした空気が流れだす。その中で、綺星が敵に注意を向けたまま、声をかけてきた。
「奈美ちゃん。一樹くん。離れた場所で治療に専念してて。とりあえず、あたしたちで持ちこたえるから」
「「……え?」」
奈美と一樹、思わず同時に聞いてしまう。しかし、こっちが口を開くより先、文音も声を変えてくる。
「早くしろ。こいつはさっさと倒して、次どうするかを決めないとな」
……ふたりはどうやら、自信を持っているように思える。さっきの動きから見ても、可能性は……十分にある。
「奈美ちゃん。離れよう。ふたりの治療をまず終わらせよう」
奈美はなにか言いたげな雰囲気があった。文音たちを止めたいという思いがあったのだろう。
だが、この状況で優先すべきことも同時に見えているはず。
「……気を付けて。あのライトくんもどき、すごく強い」
「わかった。……なんとかしよう。ふたりを頼む」
奈美と文音の間で話が交わされると、一樹と奈美は、けが人ふたりをかかえて少し離れた場所に移動した。
一方で、文音と綺星は、オリジナルライトと真っ向から向き合う状態。
今は、喜巳花の治療をしつつ、彼女たちを見守るしかない。……もっと言えば、早く治療を終わらせて、全員で……。
「いつでもどうぞ。ふたり同時に仕掛けてきて貰っていいですよ」
「言われなくても」
「だね」
その直後、戦闘が開始した。ふたりは瞬く間に敵へと接近。まず先に真正面から当たったのは綺星だった。
綺星の一撃がオリジナルライトに受け止められる形で一手。その間、回り込んでいた文音が後ろから攻撃を仕掛けていく。
それをかろうじて避けるオリジナルライト。挟み撃ちの状況にマズイと判断したのか、間を縫うように横に跳躍する。
そこにすかさず飛び出すのは文音。追撃をしようと、オリジナルライトのスピードに食らいついて行く。
そのまま一気に爪を振り下ろした。
「っ!」
当たったかのように見えたが、いつの間にか攻撃をすり抜けていたオリジナルライト。
「綺星ッ! 後ろ!」
文音が叫ぶ通り、オリジナルライトのターゲットは綺星。回り込み、綺星の横あたりから仕掛けてくる。
しかし、綺星は確実に攻撃をガードしていた。バネのように力を受け流しつつ、後ろへと飛ぶ。そのまま、静かに文音のとなりに着地。
「……、…………」
手ごたえはなかったのだろう。攻撃したオリジナルライトの表情は複雑なものに。さらには、文音の攻撃が当たっていたのか。
肩あたりから、血がにじみ出始めていた。
文音と綺星、オリジナルライトの動きについていけている。……これは……ワンチャンどころの騒ぎじゃないぞ。