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第4話 無茶を

 ふたつのシステムを重ねがけしたオリジナルライト。圧倒的な強さを見せつけるこの人物は不敵な笑みを浮かべている。


「うん。この差は、芸術的すらありますね。もはや、君たちなど旧型、わたしの研究対象こそが真の最先端と言って間違いないでしょう」


 ゆっくりと後ろで腕を組む。

「この実験結果を提出すれば、それも照明される。そのためにも、もっと実証を重ねなければいけませんね。

 さぁ、……わたしの手で完膚なきまで叩き潰されてくださいね」


 オリジナルライトが一歩ずつ一樹たちのほうへと近づいてきた。


 本当にまずい。まるで打開策が見いだせていない。もう、逃げる一択しかないのだが、この四人全員で逃げ切る方法も……。


「おい、東。お前のウエストポーチを貸せ」

「え?」


 響輝が唐突に、こちらに向かって手を伸ばしてきた。それに対し、自分のウエストポーチをそっと抱え込む。


「……響輝くんも、……システムの重ねがけをするつもり?」

「ダメだよ!! 絶対!」


 響輝の反応より先、奈美が怒鳴ってきた。一樹の腰に巻かれたウエストポーチを、奈美がつかむ。


「危険なことなんだよね? 危ないんだよ?」


 奈美の追求に、響輝がわざとらしくため息をつく。

「それを伝えたのは奴だ。俺たちの敵だ」


「この状況じゃあ、選択肢のひとつなんやろうね。少なくとも、このままやったら、みんなやられてまうで?」

 喜巳花も響輝に賛成するようにフォローしてくる。


 だが、響輝はそんな喜巳花にも制止をうながした。


「その通りだ。だが、やるのは俺ひとりでいい。だから、東。それを貸せ。安心しろ、三好に貸せとは言わねえからよ」


 ……打開策としては、十分な価値がある。確実な方法では当然ない。だが、この状況では、もっとも有効であると言って過言ではない。


 しかし、一樹の腰に巻かれたウエストポーチは、まだ奈美がガッツリとつかんでいる。……離してくれそうもない。


「おや? 五号さん。あなたもシステムの重ねがけをするおつもりですか?」

 オリジナルライトが歩みを止め、口を開く。


「一応、話は聞いていましたよね? あまりお勧めはしないですよ。相当な苦痛を味わうことになると思いますが」


「なんで、てめえの言うこと聞かなきゃなんねえ!」


 響輝のドスが効いた声にも、オリジナルライトは臆する様子は見せない。それどころか、また笑み。


「言っておきますが、こればかりは、あなたの体を思って言っているのですよ? むしろ、わたしからしたら、どうぞ使ってくださいと言いたいぐらいなのですから。


 感覚がある状態で、システムの重ねがけをすれば、どれほどのものになるのか。ぜひとも経過観察してみたい」


 後ろに回していた手を解くと、丁寧に前へと出してきた。


「自らの苦痛を犠牲にしてでも、わたしに実験データを提供したい。そんなボランティア精神があるのならどうぞ。

 慈善事業まで止めるつもりはありません」


「そのよくしゃべる口。今すぐふさいでやるから、待ってろ! 三好! さっさとその手をどけろ!」


「聞いてなかったの? どう考えても誘導でしょ? ここで挑発に乗っちゃダメ! あたしたちは、あの子を倒さなくてもいいの。

 逃げることさえできればそれでいいの」


「それは簡単な話だな。簡単すぎて笑えてくる」


 ……、どっちの言い分も正しいと思う。奈美の言う通り、これは間違いなく奴の挑発だ。これに乗れば、奴の思うつぼ。


 だが、それ以外の打開策があるのかと言えば、それも違う。……なら、……ここで、どうするのが最善か。

 ……いや、可能性が見いだせるか。


「奈美ちゃん……。ごめん」

 一樹のウエストポーチを握る奈美の手をはたき落とすと、腰から外す。そして、響輝の差し出す手の上に置いた。


「っ! 一樹くん!」

 奈美を後ろにしたまま、響輝と視線を合わせる。


「……無茶は……し過ぎないでよ」

「……よく理解しているようだな」


 すでに無茶しようとしている。だから、こういうしかなかった。


 響輝は受け取ったウエストポーチを腰に巻きつつ、オリジナルライトの前に出る。

「……ドレスアップ」

 その掛け声とともに、システムが作動し始めた。


 既に装着されているアーマーの下に入りこむように、ドレスが生成。オリジナルライトと同様に、重ねがけした状態へと変化を遂げる。


「やってしまいましたか……」

 オリジナルライトは少し呆れつつ、両手を下におろす。


「さぁ、どうぞ? 試してみてください」


 そんなオリジナルライトのセリフが終わるより先だった。一気に動き出した響輝は、瞬く間にオリジナルライトの直前まで接近。


 みぞうちに強烈な一発をお見舞いしていた。


「……っ!」

 ずっと速いスピード。


 オリジナルライトの目にも少し驚きの表情が見えたように思えた。


「おらぁ!!」

 間髪入れず二撃、三撃と、追撃をかましていく。それは、今までで一番、オリジナルライトのダメージを与えているのは、言うまでもなかった。


「くっ!」

 オリジナルライトが途中反撃を繰り出そうとするが、響輝はそれを横へと受け流す。


 そこで生まれた隙をつくように、右足を振りかぶる。そのまま、響輝は猛烈な勢いとともに、オリジナルライトを地面へとたたきつけた。


 その勢いは、小さな地面にクレーターを生み出すほど。一樹が直接攻撃したわけではないが、間違いなく手ごたえがあった。


「っしゃおら!」

 地面に倒れているオリジナルライト向けて、響輝がガッツポーズ。


「ざまぁみろ! しっかり殴ってやったからな……ぁ……、あ?」

 響輝のセリフに覇気がなくなっていく。


 それもそのはず……。一樹も手ごたえを感じていただろう。だが、……オリジナルライトは……まだ、立ち上がろうとしていた。


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