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第3話 果てなどない飛躍

 響輝の蹴り、奈美のこぶしやピストルが、確かに入っていたはずだ。四対一という差で、攻めができているはず。


 だが、オリジナルライトは堪えた様子もなく、平然と立っている。ウエストポーチから包帯を取り出すと、余裕しゃくしゃくと血が流れる腕に巻きつけていく。


「ほら、隙だらけですよ。いつでも攻撃どうぞ?」


 オリジナルライトは自分の腕に意識を集中しているように思える。……たしかに、一見隙だらけ。


 その直後、響輝と喜巳花が銃を構えた。そのまま躊躇なく発砲する。だが、オリジナルライトがわざわざ言うくらいだ。

 当然、本当は隙などではなかった。


 地面をすべるようにかけて弾丸の雨を寸のところで回避していく。


 そのオリジナルライトの動きを先読みして、こちらのピストルを撃つ。それはたしかにオリジナルライトの腹を貫いた。

 だが、オリジナルライトが崩れることはない。


 攻撃が当たったことがウソだったかのように、響輝と喜巳花の目の前まで急接近してしまった。

 その勢いのまま、ふたりは倒されてしまう。


 このタイミングこそが隙か。すでに動き始めていた奈美に続き、一樹も敵に向かって突き進む。

 ちょうど、挟み撃ちの形だ。


 だが、オリジナルライトは、すばやくピストルを手に取る。それを寸分の狂いもなく、こちらに狙いを定めてきた。


 慌てて方向転換し、地面を転がるそのすぐ横を弾丸が擦過。


 対してオリジナルライトは流れるように、後ろを振り向く。そのまま発砲。奈美もまたギリギリで避けはするものの、態勢を崩す。

 結果、オリジナルライトにまでたどり着くことなく、停止してしまう。


「ふざけんなよ……! なんなんだよ、これは!」

「獣と人間の差でしょう」


 地面をこぶしでたたきつけ怒る響輝。それをオリジナルライトは鼻で笑うようにサラッと言い切る。


 それがますます、響輝の怒りに触れたらしく、目の鋭さが上がる。


「てめぇは……てめぇだけは……何がなんでも……ぶっ飛ばす。……絶対に……吹き飛ばす!!」


「そうですか。では、わたしをなんとしても倒したい君たち、諸君に朗報です」


 オリジナルライトはウエストポーチに手を突っ込んだと思えば、ある物体を取り出す。それは、確実に見たことがあるものだった。


「次の実験に移行する段階に入りましょう」


 手に持っているのはリストバンド。プットオンシステムが備わっているあれだ。響輝たちに投げた二個以外に、もうひとつ入っていたわけか。


 それを手首にはめ込む。

「プットオン」


 リストバンドの操作とともに、オリジナルライトの周りにアーマーが生成。すでにドレスアップシステムで生まれていたドレスの上からかぶさるように、アーマーが装着されていく。


 やがて、一樹たちが、見たこともない形態になってしまった。


「……重ねがけ!?」


「その通りです。こうすれば、理論上は各段にパワーアップがするはずです。さっきまでより、うんと」


「……っ!?」

 ……まだ……上がると……?


「そ、そんなの……聞いてない」

 奈美が首をひたすら横に振っているが、無理もない。……そんなの、考えたこともなかった。


「念のため忠告しておきますが、真似はしないほうが賢明ですよ。体が悲鳴を上げて、瞬く間に崩壊しかねますから」


 オリジナルライトは余裕な雰囲気で自分の体を見ている。


「この体だって、本当は相当悲鳴を上げているはずですよ。脳神経が焼き切れるほどの痛みが全身から押し寄せてきているかもしれません。


 これは、痛覚をシャットアウトしているからこそ、できること。使い捨てであるクローン体を遠隔操作するからこそ、可能なのですから」


 そうやって、余裕をかましているオリジナルライトに瞬く間に接近していたのは響輝だった。


 オリジナルライトの死角から鋭いこぶしをオリジナルライトの顔にぶちかました。オリジナルライトはその間、反応を見せていない。


 タイミング、角度、どれをとっても文句ない一撃だった。


 が……、

「ね? 効かないでしょう?」

 オリジナルライトの態勢が崩れることはなかった。


 一応、さっきまで、入っていた攻撃に対して、オリジナルライトはひるみは見せていた。

 だが、システムを重ねたオリジナルライトは、それすらない。


「あ……?」

 攻撃の良さは、だれよりも理解しているのであろう響輝。だが、その目には困惑しか映し出されていない。


「さぁ、こっちの番ですよ」

 オリジナルライトは響輝のこぶしを掴むと自分のほうへと引き寄せる。そのまま、放たれた膝蹴りが響輝を襲う。


「くっそ……いい加減にせえや!!」

 オリジナルライトに向かって飛び出す喜巳花。それに一歩遅れて、一樹、そして奈美もオリジナルライトに向かって駆け出した。


 もう、やるなら、とにかく全員で当たるしかない。その一心での突貫。


 三人でオリジナルライトを囲いつつ、攻撃を繰り出していく。だが、オリジナルライトは一樹たちが放つ攻撃を回避や受け流しで、いなしていく。


 いくらかの攻撃は、通り越して当たるのだが、ダメージが入っているようには思えない。


「……このくそっ!」

 手ごたえをつかめず、苛立ち半分に振りかぶった。


「……っ!?」

 だが、そのを逆に疲れる。すばやく放たれた攻撃で態勢を崩してしまう。直後、囲いから逃げるようにオリジナルライトが跳躍。


「逃がさへん!!」

 喜巳花と奈美、そして態勢を取り戻しつつあった響輝がオリジナルライト目掛けてピストル、銃を構える。


 だが、その直後、その三人の腕が弾ける。どうやら、先にオリジナルライトから放たれた弾丸が、彼らの銃をピンポイントで撃ちぬいたらしい。


 銃を落とし、腕を押さえる三人。対して、オリジナルライトは手の中で銃をクルリクルリとまわしていた。


「パワーでももちろんそうですが。

 コンピュータによる戦闘のアシストを持つこのわたしには、戦闘の技術面においても負けはしませんよ」


 ……、こいつ……死角など、ないのか?


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