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第1話 オリジナルライト

 ***


 響輝たちを救出し、施設を脱出した一樹たち一同。このままふもとまで降りて行く算段でことが進んでいた。


 だが、それはある者の存在によって閉ざされる。


「ここでみなさんにはわたしと戦っていただきます。拒否権はありません。逃げることは出来ませんよ」


 そう言うのは、かつて敵とも味方とも在った和田ライト。……姿見た目は一樹が知っているライトだ。


 だが、奴はこういった。

『中身はオリジナルのライト』

 だと。


 突然のことに、反応できない一樹。だが、その中でも響輝が口を開く。


「……お雨、この実験の総責任者とか名乗っていた奴なのか? なら、随分と背が縮んだな。おまけに姿も。

 てめぇ、変身能力でもあんのか?」


「まさか。わたしの意識をこの体に流しているだけですよ。本当のわたしの体は、その中で転がっていますよ」

 そう言うと、ライトは施設のほうを指さした。


「わたしたちはそれなりの頭脳を持つ七人で構成されたチームでしてね。だけど、そういう人種は、仲良く一緒にひとつの研究しましょう、なんて考えるものはいませんでした。


 軍事技術を重視する者、医学の観点から考える者、バイオ技術を突き詰める者。わたしは立場上、彼らを総括する役目に付きました。


 が……、そんなつまらない役目で終わるのは、お断りですよ」


 ライトは両手をそっと広げる。


「わたしは、君たち個体ごとの記憶の引継ぎ技術に注目し、この発想にいたりました。屈強な体という入れ物を、人間が遠隔操作すれば、もっとも国が望む兵器にしあがると」


 そう言うと、ライトは腰に手を当てた。そこにはウエストポーチが付いており、中からリストバンドをふたつ取り出す。


 すると、それをこちらに向かって放り投げた。


「さぁ、どうぞ。三号さんと六号さん。そちらをお使いください。実験開始です。わたしの技術は、どれほどの力を発揮するのでしょうか。

 君たちで試させてください」


 ……、もっとも冷静な判断をすれば、こんな話無視して逃げるというのが得策だろう。逃がさない、なんて言ったが、こっちは四人もいる。


 オリジナルライトの戦闘力も、そこまで変わらないはず。根本が同じ体なのだから。


 だが、響輝は行動は違った。オリジナルライトが放り投げてきたリストバンドを拾い上げようと動き出していたのだ。


「響輝くん、待って」

 それを制止し、オリジナルライトを見る。


「僕らに……響輝くんたちにシステムを渡すのに、君のメリットがない。だとすれば、そのリストバンドは偽物、罠と考えられる。

 はめた瞬間に毒殺とか」


「そんなつまらないことはしませんよ。わたしの研究の成果を披露するこの絶好の機会を、なぜ自らぶち壊す必要があるのです?」


 口車に乗る必要はない。そう思ったのだが、一樹が止めるより先、響輝は動き、リストバンドを腕にはめてしまった。


「もともと、こいつは一発殴りたいと思ってたんだ。どうやら本人ではないらしいが、この際どうでもいい。

 正当な理由もできたんだ。もう、遠慮しなくてもいいだろうが」


 そういや、響輝は今にでもオリジナルライトに殴り掛からん、といった状態を押さえられていたんだった。

 ……そりゃ、爆発してしまうか。


「プットオン!!」

 リストバンドを操作する響輝。すると、例のごとく、アーマーが形成され、響輝の体にまとまりつく。


「和田ライト。とりあえず、一発殴らせろ!!」


 瞬間、響輝はオリジナルライトとの距離を一気に詰め切った。その勢いのまま、強烈なこぶしをオリジナルライトに向ける。


 すると、オリジナルライトの突き出した両手の平と激しいインパクト。少し押し気味にはなるが、その後停止。

 オリジナルライトに食い止められた形になる。


「このっ!」

 響輝は次の一手を打つ。右手を大きく横に振るう。だが、オリジナルライトはしゃがみつつ回避。逆に響輝に向かってカウンターを仕掛けてくる。


 かろうじて流した響輝がオリジナルライトに足払いを賭けようとするも、すでに跳躍していたオリジナルライトは、響輝と距離を取った場所にて着地をしていた。


「……すばしっこいな」


 ……あぁ、すばやい。だが、それ自体はさほど驚かない。それは一樹たちだって十分できる範囲。いや、もっと俊敏に動けはする。

 だが、……それはシステムを使用すればの話。


 それに……一樹は、どうしても驚きを隠せなかった。


「うん。思ったよりずっと動けますね」

 自分の手を見比べつつつぶやくオリジナルライト。すると、一樹の目線に気が付いたのか、不敵に笑って見せてきた。


「二号さん。わたしの身体能力に驚いているようですね」


 思わず口を出て押さえたがもう遅い。


「君たちは感情や知性を持ちましたからね。結果的に、身体のブレーキ、リミッターを作られてしまいました。体を無理な方向に曲げたり、許容範囲を超えた力を加えれば、体は壊してしまいますから。


 でも、この体はどうなってもいい。痛覚もシャットアウトしています。なので、この体に備わっている力を、限界以上に引き出せるということですよ」


 オリジナルライトは「さらに」という言葉とともに、腰につけられたウエストポーチを操作。

 やはり、それは一樹たちが保有しているものと同じ。……すなわち。


「ドレスアップ」

 オリジナルライトの体は、システムによって強化されるということ。


 その直後だった。一樹の視界からドレスアップで飾られたオリジナルライトの姿が消える。


 気が付けば、すぐ近くで激しい音が。弾けるように響輝の体が吹っ飛び、後ろの木々にぶつかり、沈黙。


「さぁ。ここからが、実験の本番ですよ」

 一樹のすぐ横で、オリジナルライトがそう言った。


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