温泉
「すぅーはぁーすぅーはぁー」
「そんなに気合を入れてやらなくともマナの吸収量は変わらぬぞ」
「そ、そうなの?早く言いなさいよ」
道理でさっきから他の魔術師からクスクス笑われるわけだ。あー恥ずかしい。
「そう言えばさっき、その辺にいる魔術師が言っておったが、どうやらこの町にはもうひとつマナスポットがあるらしい」
「うそ、ホントに?」
「うむ、というかお主、ここは自分がいる町であろう何も知らんのだな」
そう、エレナはまだ町から出ていない、家の近所をウロウロしているだけである。
「うるさいわね、今までそんなものに興味が無かったのよ」
「ここでのマナもある程度得られたし、同じところでは吸収率も下がってくる。もうひとつのマナスポットとやらに行ってみるか」
「えー、もう疲れたよ」
「まだ、半日もたっておらぬだろうが!しかし、よいのか?次のスポットは温泉があるとか」
「よし、直ぐに行きましょう」
西にしばらく歩くとその場所はあった。
聖なる泉 アクアリウム
マナスポット 属性水
地中から吹き出した天然の水はマナの力を帯びている。また、近くには温泉があり、魔術師以外にも観光客が多く訪れる大人気の場所。
「へー、こんな場所があったなんて」
「では早速…」
「そうね、早速温泉に浸かりましょう」
「お主、本来の目的を忘れておらぬか?」
「温泉に入ったあとでも遅くないでしょ」
「う、むまぁそうだが」
温泉 オアシス
アクアリウムの近くにある天然温泉、美容と健康に良い成分が多く含まれているため大人気。
大人 200ゴールド 子供 100ゴールド
「ちょっと」
「なんだ?」
「なんであんたもついてくるのよ」
「何故って、僕も入りたいだけだが」
「そんなお金ないわよ」
「案ずるな、もらったお小遣いがある」
「大体こっちは女風呂よ」
「なんだ、またそれか、ならちょっと待っておれ」
パラシオスはそう言うと大きく背伸びをした。かと思うと体を捩りながらなにかしている。
「よっ、ほっ、はっ」
「何してるの?」
「これで僕も女だ文句無かろう」
性別はないとか言ってたけど、まさかそんな芸当ができたとは。目の前で見せられたからには否定できない。
「仕方ないわね、でも問題は起こさないでよ」
「分かっておる」
「それと空に浮くのも禁止」
中はかなり広々としており、平日ということもあってか今日は人が少ないらしい。
「どわっ」
パラシオスは何故だかおぼつかない足取りで、転けている。
「何してんの?」
「歩くのなぞ久しぶりすぎて上手くバランスがとれんのだ。ギャン!!」
「全く、仕方ないわね」
エレナはパラシオスを抱えると奥へと進んだ。
「すまぬな、それよりお主また少し腹がでたのではないか?」
ぷにぷに
「あんた、今すぐ放り投げてあげようか」
「ひぃ、ゴメンなさい」
腰掛けるとパラシオスを前に座らせる。
「おい、湯船には浸からぬのか」
「その前に洗うのよ」
「なんだ、そんな儀式をせねばならぬのか」
「儀式というか、それが礼儀というか、とにかくじっとしてなさい」
パラシオスの髪をゴシゴシと洗う。白銀の背丈ほど伸びた美しい髪は、光に当たるとキラキラと輝いている。悔しいけど、私の髪より綺麗だわ、こいつ黙ってれば間違いなく美少女?なのに。