初めての夜
宿屋 やすらぎ
この町に昔からある宿屋、部屋は広くはないが女将さんの手料理は美味しく、それを目当てに来る客も多いとか。
お一人様150ゴールド 子供50ゴールド
「美味しい料理か、ゴクリ」
「なんだ、腹が減ったのか」
「さっき全部だしたからね…」
「あの団子か…」
「やめて、思い出させないで!!あんなのトラウマになるレベルだわ」
「いらっしゃいませー!」
「お泊まりですか?」
「はい1泊だけ」
「それでしたら、おふたり様で夕飯がつきまして、300ゴールドになります」
「あの、一人部屋でいいので150ゴールドにしてもらえませんか?」
「えっと、お連れ様はよろしいのですか?」
「はい」
「かしこまりましたー、こちらが部屋の鍵でございます。良い夢を」
鍵を貰うと早速部屋へと向かった。
「はぁ、今日はなんか色々疲れたわ」
エレナは財布を確認した。
所持金 450ゴールド
「あぁ、もうこんなんじゃアイテムどころか、数日後には野宿よ、野宿」
「やはり、稼ぐしかないようだな」
「稼ぐったって、今のあんたじゃモンスターも倒せないわよ」
「なんだと!!モンスター如き人差し指1本で倒せるわ!!」
「私より弱いくせに何言ってんの、あーもう疲れたお風呂入ってご飯食べよー」
「へぇ、結構広いじゃない」
「風呂というのは初めてだが何をするところなのだ?」
「な、ななななんであんたも入ってくるのよ!!」
「悪いのか?いや何、風呂とやらをだな…」
「早く出ていけこの変態害獣!!」
「なんだと!!さっきから僕のことを害獣害獣と呼びおって、僕を誰だと、おふぅ!!」
パラシオスの顔面を洗面器が見事に着弾しパコーンという音を立ててその場に倒れた。
「全く、あいつと一緒にいるといちいち疲れるわ」
風呂から上がるとパラシオスはむすっとした顔で宙に浮いていた。
「女の子の入浴中に入ってくるなんてデリカシーは無いのかしら」
「女の子?あぁ、僕には性別というものがないのでな、その気になれば何方にでもなれるし」
性別がない?確かに中性的な顔立ちではあるが、召喚獣ってそんな感じなの?
「それよりご飯よご飯、ここの料理は美味しいらしいし!」
しばらくすると、料理が運ばれてくる。
「待ってました!」
エレナは我慢できず、早速料理を口に運ぶ。
「うーん、どれも美味しい!!」
「そんなに美味しいのか?どれ僕にも1口」
「あんたは食べなくても平気でしょ」
「あぁ、だがお主から得られるマナが微量すぎてな、他の摂取方法を取らねばいくら僕でも我慢できぬ」
「しょうがないわね、はいこれ」
「なんか、同じものばかりではないか?もしかして嫌いなものだけ渡してはおらぬか?」
「そ、そんな事ないし」
「ふむ、まぁよい」
2人は夕飯をたいらげだ。
体力とマナが少し回復した。
「さて、もう寝ましょ」
「明日からいよいよ冒険だな」
「そうね」
こうして、2人は初めての夜をあかすのであった。