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最強の召喚獣現る

「おーい、エレナもうすぐ儀式の時間だろ、早く行かないか」


私は親に促され嫌々家を出た。この国の魔術師は16になると、召喚獣を呼び出し従えるのが習わしなのである。立派な魔術師は召喚獣を従わせ名を馳せる者もいる。


私も今年で16になった、魔術師の家庭で生まれた私は嫌々その儀式を受けることになったのだ。正直魔術師なんてなりたくないし、才能もないので今まで全くこれといった修行はしてこなかったのである。


魔術師の家なんかに生まれければよかった。そう思いながら1つため息をついた。


「よぉ、エレナお前が来るなんて久しぶりだな、まさか儀式を受けに来たのか?はっはっは、やめといた方がいいんじゃないか?恥をかくだけだぞ」


「そ、そうだよね、ははは」


くそっ、これだから嫌なんだ。事実、私には才能がなく何をやってもいつも失敗ばかり、私だって最初は色々やってみたさ、でも何をやっても上達しないのだ。


「あら、エレナ来てたの?もう来ないかと思ってたのに」


っげ、ミレーニアだ。この魔術学校に入学してから、何かと嫌味を言ってくるたちの悪い女だ。しかし、腹立たしいことに彼女には私と違い才能があった。その才能が認められこのクラスの首席に選ばれた。私とは正反対の人物だ。


「親がどうしても行けと言うからさ」


「ふん、貴方、親が言わないと何も出来ないのかしら、少しは自分で努力してみたらいかが」


早速これだよ、私だって努力はしたさ、でもいくらやっても魔力の値が一向に上がらないんだ。


「さぁ、では皆さん今日は待ちに待った召喚の儀式をする日です。立派な召喚獣を呼び出して凄い魔術師を目指してください」


先生のそんな言葉で儀式は始まった。皆、魔防陣の上に立ち集中すると召喚獣が一人ひとりにつくのだ。そして、いよいよ私の番がやってきた。


魔防陣の上に立つと目を瞑り集中する。もしかしたら、物凄い召喚獣が現れて私のダメダメな人生を変えてくれるかもしれない。そんな願いを込めて。


「こい、私の召喚獣!!」


…、


しばらくしてもなんの反応もない。


「せんせー、エレナが魔防陣おかしくしました」


え、なんで何も出ないの?いくらひ弱な魔術師でも、こんな事にはならない。


「おかしいですね、儀式は成功しているはずですが」


「あなた、もはや魔術師ですらなかったという事ね、次私の番だからどいてくださる?」


半ば強引に押しのけられると、私は恥ずかしさと怒りで教室を出た。


やっぱり来るんじゃなかった、なんなのよ私には召喚獣すら呼び出せないって言うの?もう魔術師なんてやめてやる。


「おい」


「え?」


急に後ろから声をかけられたが振り向くと誰もいない。気のせいかと前を向き直すと再び声が聞こえた。


「お前が僕を呼び出したのか?」


そこには、空中に浮かぶ子供だろうかこちらを見下ろしている。


「誰、貴方?」


「誰とは失礼な、僕を呼び出したのは君だろう」


「あ、ごめん君もしかして近所で有名な悪ガキのカケルくんね、そう言われてみればカケルくんだ。うん、ごめん、なんか失敗して呼び出しちゃった?」


「誰がカケルくんだ!僕は召喚獣だ」


「あぁ、じゃあ隣に住んでるいつか役者になりたいと夢見てる、なぎさちゃんね、今度は召喚獣ごっこ?でも召喚獣のお芝居なんて需要あるかなぁ、お姉ちゃんあまりオススメしないなぁ」


「僕を近所のガキ共と一緒にするな!!」


「じゃあなんだっていうんだ」


「だから召喚獣だと言っているだろう、お前が呼び出したのだからな」


召喚獣?こいつが?どうみても人間の子供なんだけど、でも空中に浮いてるな、最近の子供は空中に浮くことが出来るのかな?


「あの、召喚()なんですよ?貴方どう見ても人間の子供じゃない」


「ふむ、そう言われてみればなんかおかしいな、身体も若干縮んでいる気がする」


こいつ、自分を召喚獣だと思い込んでいる近所の子供だ間違いない。


「私、忙しいからこれで」


「あ、おい待て!お前、信じてないだろ」


「はい、だって弱そうだし、召喚獣なら口から炎の一つや二つ出してください」


「ふん、そんなもの下等ランクの奴がする事だ。僕はこう見えて、第10階位の召喚獣だからな」


「第10階位だって?嘘つくならもう少し考えてから言いなよ、あはは」


召喚獣には1から10までのランクがある。初めのうちは1から3までの召喚獣で始まり、徐々に強くなりそのランクを上げていく。しかし、未だに10階位に到達した召喚獣はおらず、大賢者ラハール様ですら7階位の召喚獣なのだ。それが、ましてやこの最弱な魔術師である私に10階位の召喚獣等、呼べるはずがない。


「嘘ではない!僕は10階位の召喚獣なのだ」


「あの大賢者ラハール様ですら7階位なのよ?私にそんな高ランクの召喚獣が呼べるはずがないわ」


「そのラサールとか言うのが誰だか知らないが」


「ラハール様ね」


「それがそやつの限界という事だ」


「でも私、魔術師の中では下の下、そんな落ちこぼれには精々1階位の召喚獣が精一杯だと思うんだけど」


「ふむ、見たところお前の蓄積魔力は雀の涙程だが、いや、それは多すぎるか、微生物の細胞レベルだが」


なんか腹立つなこいつ。


「お前の器は僕を従えるに相応しい程だ。だから僕がこうして呼ばれたのも必然よ」


「器?」


「まぁ、要するに、プール並の器はあるけど、そこには一滴の水しか入っておらぬ、という事だ」


「成程」


ってなんで私はこんなやつの言うこと信じてるんだ。馬鹿馬鹿しい、帰って寝よ。


「おい、エレナ」


聞き覚えのある声に振り向くと1人の男が立っていた。


「げ」


「見てくれよ俺の召喚獣、サラマンダーランク2だぜ」


「キシャァァ」


見ると空中にトカゲの様なものがふよふよと浮いている。


「ふん、その程度の雑魚でよく威勢が張れるな小僧」


「んだとぉ!?なんだそのガキは」


「僕か?僕はこの者の召喚獣だ」


自称召喚獣は胸を張ってドヤ顔でそう語る。


「おいおい、いくら召喚獣が呼び出せなかったからって、近所のガキを連れ回すなよなエレナ」


「ふん、ではここで勝負といこうじゃないか」


何言ってるんだこいつは。


「面白い、かかってきな」


「ちょ、ちょっと待ってよカケルくんに怪我させたらどうするのよ」


「誰がカケルくんだ!」


「それもそうか、悪い俺としたことが子供相手にムキになっちまった」


「そうそう、子供言うことだし」


「お主ら、僕を馬鹿にして!いいだろう僕の力見せてやろう」


「力だと?」


「第8位階魔法、ギルナメルセデス!!」


「…」


「…」


しかし、MPが足りない


なんだ、今一瞬頭の中に変な言葉が浮かんだのだが。


「何故だ、何故発動しない?」


「はっはっは、そんな魔法聞いたこともないぞ」


「ならば肉弾戦で勝負だ!」


「おいおい、やめといた方がいいぞ、怪我するぜ?」


「ふん、僕をあまりなめない方がいい、肉弾戦においても僕は最強なんだ。第10位階の力、得と味わうがいい!!」










それはもう本当にコテンパンにやられました。


「ぅぅう、何故だ、この僕があんなトカゲにやられるなんて」


「何故ってそりゃ当然でしょ、相手はランク2、君を召喚獣だと信じたとして、見たところ多く見積ってもランク1、階位が一つ違うと天と地ほどの差があるって先生が言ってたし」


「ランク1だと!?そんな馬鹿な…道理で身体の調子が悪いと思った」


「多分、私の魔力が少ないからだと」


「何故お前はそれ程の器を持っておりながら、魔力がそんなにないのだ」


「そう言われても、昔からどんな鍛錬をしても魔力が上がらないんだよね」

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