8.悪魔令嬢は、混乱する
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イチイの言葉の意味は考えてもよくわからなかったが確実に心に残っている。手厚く保護というと過保護すぎるということだろうか
「もう、いろいろ訳が分からない」
こんな時、お味噌汁と白米が恋しくなる。残念ながらないなら作ればいいなんてことができる能力は私にはない。仕方がないから気晴らしに薬の調合でもやろうかな
調合室は草もにおいが染みついている。安全確保のためにもちろん換気はしているがこればかりは仕方ない。黙々と作っているとノック音が聞こえた
「お嬢様、クローバ・カミモル様がいらっしゃいました。お嬢様にお会いしたいと」
「カミモル侯爵子息様が」
ここで追い返すとお父様に何を言われるかわからない。出迎えないといけないだろう。瓶を手に持ったまま玄関へと向かう
「アザミーナ様突然の訪問申し訳ございません。俺は何か嫌われるようなことをしてしまったのでしょうか」
「そうではないのですが、学校は良いのですか?」
「あなたに嫌われることよりどうでもいい問題です」
「どうでもよくないです。それに嫌ってなんかいないですわ」
なんということだ、クローバ様は学校をさぼってここまで来たらしい。復讐のためにここまでするとは恐ろしいものを感じる。
慌てて嫌っていないことを伝えると安心したような顔をした
「良かった。夜会に強引に誘ってあきれられてしまったらと思って。叔母を言い訳にしましたが俺があなたにパートナーとして隣にいてほしかったそれだけです」
「そんなことを言われてしまうと断るにも断れませんわ」
これ以上断り続けるとどのような手段に出るかわからない。私は悪魔令嬢とは違うから甘い言葉に騙されないし、駆け引きをする気もない。
「クローバ様は当日何色を身に着けるのですか?」
「あなたの瞳と同じ紫にしましょうか」
「では、私は藍色にしましょう」
バカバカしいやり取りでも今はいいかもしれない。でも、心の中はずっともやもやしている。このまま続くならいっそのこと終わらせてしまったほうがいいかもしれない。ひどい話だろうが他人のクローバ様よりもローレルやお母様にお父様のほうが私にとっては大事なのだ
「カミモル侯爵子息様はなぜ私との婚約を了承したのですか?」
「それは、あなたのことが」
「私がそんな薄っぺらな言葉で納得するとでも思っているのですの?ずいぶん私をバカになさってるようね。私はあなたにそう思われるほどかかわった覚えはないですわ」
そもそも、私にはクローバ様を助けなくてはいけない理由などない。この婚約もお父様が交わした約束を守るために私を使うのであって私の意思などない。復讐だってこの人が勝手に勘違いしていることに巻き込まれているだけだ
「ねえ、カミモル侯爵子息様。私ここのところずっと考えていたのですけれどわかりませんでしたの。頭の足りない私にもわかるように説明してくださらない?」
「まるで、俺のことを全部見透かしたように話すのですね」
「いけないかしら?私納得できないことは納得しないのよ。正直クローバ様が何を考えているかわかりませんわ」
乙女ゲームの主人公のネモフィラちゃんのように純粋に良い側面だけ見ていることなんて私にはできない。クローバ様ははぐらかすか本音を話すかどちらを選ぶのだろう
「俺はアザミーナが覚えていないことが悲しいよ」
いきなり何を言っているのだろう。彼の顔には戸惑いと悲しみが浮かんでいる。これも演技なのだろうか、それとも本当なのだろうか見分けがつかない
「覚えていないって…」
「すまない。今日はもう帰らせてもらうよ。今度はパーティーで会いましょうアザミーナ姫」
そのままクローバ様は本当に帰っていってしまった。もし本当に私が彼と出会っているのならクロユリはあなたと共にのストーリーとずれてしまっているのかもしれない。
もし彼が私に復讐の感情を持たずに接してきたならばひどいことをしてしまったことになる
クローバ様の行動の理由を知るどころかわからないことが増えただけになってしまった
明日の午前10時に次話投稿します