3.悪魔令嬢は巻き込まれる
読んでくださった方ありがとうございます
ネモフィラちゃんは二人に向かって堂々と言い放つ
もともと、こんな感じのシーンがあったような気がする
残念なことにいくら現実だと認識しても似たような部分はあるようだ
それが、混乱の元だったりもした
「お前は、俺の絶対の味方でいてくれるんじゃなかったのか」
「当たり前ですよ! アドニスがそんなことをしないというのは知っています。でも、アザミーナ様は私の友人です。悪いことは何もしていません。それなのに勝手にどっちの味方とは決めつけないでください」
ネモフィラちゃんがうつむいて震えるように言う
私はどっちの味方とかはないのだけど、バードック様の友人であるクローバ様の婚約者で、ヒーラギ様に薬を提供している
バードック派と思われていてもおかしくはない
「困ったわね。私はどちらでもいいのだけれど」
「ふざけた発言だな」
「ふざけてなんていませんわ。私はいたって真剣ですのよ。私は確かにクローバ様の婚約者だけれど、今はクロッカス侯爵家の人間。お父様から何も聞いていないですもの」
私の知らないし聞いてもいないよ発言に毒気を抜かれたのか、二人とも黙ってしまった
「私としてはどちらでもよいのですが、お父様が何も言わない限りはどちらの味方とも言えません。でも、今回その薬を仕入れた人間を調べましょう、そこにアドニス様の名前がなければ良いのでは?魔法薬は私の家がトップですもの、違法なものでなければ調べられますわ」
そもそも、ああいう眠り薬は治療のために使うものだ
本人が買うとはとても思えないが、証拠がなければ、バードック様も責めることはできないだろう
「分かった。そうしよう」
「俺もそれでいい」
「アザミーナ様。ありがとうございます」
ネモフィラちゃんは、嬉しそうに駆け寄ってきて私の手を握りぶんぶん振る
多分、貴女が突っ込まなっかたら何もしなかった
けれど、悪い気はしない
「あなたも、もう少し考えてから発言しなさい。あと、いつから王子とそんな関係になったの?」
「そんな関係って、ただの友達です」
会話が聞こえたのか、アドニス様が微妙な顔をしていた
これは彼のほうが片思いだろうか
ネモフィラちゃんの様子を見ていると、両片思いというやつかもしれない
「そうなの?恋人かと思うくらい息ぴったりだったのに」
「こ、こ、恋人なんて! 違います」
ネモフィラちゃんは、否定している
顔も赤くなっていないし、本当のようだ
「アドニス様、頑張ってください」
同情した目で言うと、不貞腐れたように目を逸らされてしまった
クローバ様も何か言いたげな目をしたが気にしない
「言われなくても頑張っている」
「何の話をしているんだ」
「バードック様とヒーラギ様には無縁の本当に遠くにあるものです。両片思いという」
ヒーラギ様はきょとんとした顔をして、バードック様は納得したような顔をしていた
心当たりがあるのならぜひ聞いてみたい
恋というのは不思議なもので、ギスギスした空気を柔らかくしてしまった
魔法よりもすごいかもしれない
「さて、私は部屋に戻りましょう」
「アザミーナ様、途中まで一緒に行きます」
ネモフィラちゃんと並び廊下を歩く
私はこの時忘れていた
彼女と一緒にいるとトラブルがよく起こることを
ありがとうございました。




