6.悪魔令嬢は、イチイに会う
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植物園に向かうと花が散っていた
いや、違う
花びらではなくて、白い紙だ
イチイが一人立っていて、その足元には破かれた紙が散らばっている
明らかに様子のおかしい彼に声をかけるのはためらわれた
「ローレル、イチイになにかあったのかしら」
「イチイ……姉さま止めよう! イチイがおかしくなってるよ」
おかしくなっているのは私が見てもわかる
ローレルが青ざめているのは何か心当たりがあるからだろうか
「ローレル何か心当たりがあるのかしら」
「手紙、紫の花のついたてがみをみていたよ」
紫の花のついた手紙、それはいったい何だろうか
……魔法毒も仕込まれていたのだろうか
何らかの影響で、混乱しているのかもしれない
「ローレル離れていて」
ローレルは頷くと離れて木の陰へ隠れた
「イチイ久しぶり」
「…… アザミーナ様?何でここに」
「帰ってきたのよ。まったくかわいい弟子が来たのに。知らなかったのかしら?」
かをお覗き込むようにして尋ねると、苦しそうに顔をゆがめた
言い出しにくいことがあるように、目を逸らす
「なによ。隠し事?」
「アザミーナ様は、昔誘拐されたことは覚えているのか」
「忘れれるとでも思っているの」
自分から傷をえぐるような真似はしたくないが、ふとした時に思い出す
むせかえるような香りと、赤
自分以外は倒れ伏している部屋
「もし、そんな目に合わせてきたやつが分かれば、報復したいか」
「あれをした目的は知りたいわね、もしかして呪われたクロッカス家の娘という謎も解けるかもしれないわ」
いきなりイチイが肩をつかんできた
「痛いっ」
強い力で掴まれればそれはいたい
頭がおかしくなっている様子はないから、魔法毒のせいではないだろう
「どこでそれを知った! 」
「イチイ、痛いって言ってるでしょう。もう何なのよ」
イチイは顔をゆがめて、こっちを見ない
拳は固く握られて、足は花びらを踏みしめている
「お父様には言わないでね。私は何度か暗殺されかけているのよ」
「そんな、何で早く言わないんだ! 」
「だって、弱みは見せたくないの。それに隠していてもお父様はどうせ知っているわ」
そうじゃなかったら、グロニオサ先生も話しかけてくることは無かっただろう
「俺には、言ってくれても良かっただろう?」
「二番目に心配かけたくない相手に言うわけないでしょ」
「一番は…… 」
「もちろん、ローレルよ」
こっそりと、様子をうかがっている愛らしい姿は、庇護欲を大いにそそる
「実質、俺が一番か。頼りないか?」
「お父様よりは。でも、大事だから二度とあんなこと起こしたくないの」
以前刺されてしまったところに、手を当てる
イチイを殺しかけたのは、傷でなく毒だ
あれは、私に薬の怖さを思い出させるものだった
「気にしなくて…… いいと言っても気にするか」
「当たり前でしょう」
「少し取り乱したな。呪われたクロッカス家…… そう呼ばれるのは、昔あった事件が関係している」
昔あった事件、私が知らないようなことを何故イチイが知っているのだろうか
「それは、ローレルに聞かせられるような話かしら?」
「いいや、全く聞かせられない」
イチイは、いつもの落ち着いた様子を取り戻し、薄く笑みを浮かべて言った
「そう、なのね。私が聞いてもいいものかしら?」
「聞かせたくはない。少し時間をもらえるか」
「私はいくらでも、待つわ…… じゃあ、ローレルを呼びましょうか」
ローレルを呼ぶとたんぽぽのように笑って、だっと近づいてきた
久しぶりの三人での会話は穏やかなものとなった
忘れないように、なくさないように、その時間を楽しんだ
明日は午前8時に次話投稿します
憂鬱な気持ちってなかなか晴れないものですね




