11.悪魔令嬢は、決意する
ブックマークありがとうございます。よろしくお願いします
クローバ様は厳しい顔をするとナーシサスと向き合った
「アザミーナ様に謝りなさい」
「クローバ様いいのですわ。ガジュマル伯爵令嬢様が心配するのも無理はないの、私はそれを行うのに十分な技術と知識を持っているわ。でも、自分の意思での悪用はしません」
「俺はアザミーナ様と話がある。戻っていなさい」
ナーシサスは渋々といった様子で会場のほうに戻っていった。ちらちらと振り返りながら行くのでポニーテールが揺れる
「アザミーナ様。手紙をくれなくなったのは、俺が母親のことを話したからですか?」
「そうですね」
やはり、あの時は試したかったのか。いきなり母親が死んだことに触れてくるのはどうもおかしかった。熱くなっていた頬が完全に冷え切り取引の思考へと移る
「私のこと信頼していないでしょう?」
「いえ、しているのは本当です」
また、嘘をつく気だろうか。今晩はもうごまかさせる気はない。幸い月も満ちており明るくて、相手の顔もはっきり見える
「どうしてあなたの母親を毒殺したかもしれない親を持つ私を信じれるというのですか?」
「あなた自身が信頼できると知っているからです」
「嘘をつかないではっきりと言ってはどうですの?母親を毒殺した犯人を親に持つ私は信頼できないって」
「では、はっきり言いましょう」
クローバ様はこちらに目を合わせた。さっと月に雲がかかり表情が一瞬見えなくなる。静寂の後、月が再び顔を出した
「俺はあなたを愛している」
「はぁ?」
「確かにあなたの母親のことは疑っています。アザミーナ様のほうがよく彼女のことを知っていますが、それは今の彼女でしょう。昔のことを聞いていますか?」
「いえ、知りません」
「彼女は親殺しなんです」
頭を殴られたような衝撃が来た。そんなはずはない、今まで聞いたことはない。あの優しい母がそんなことする筈がない。頭がひどく混乱する
私の意識はそのまま遠のいていった
悪魔令嬢はどこから間違えてしまったのだろう。厳しいけれども優しい父親、王城で活躍する自慢の母親、天使のような弟。彼らと一緒にいれば彼女にも魔法薬師としてのプライドや倫理があったのではないのか。もちろんゲームでは書いていなかった、でもそれは当然だ、誰も悪役令嬢の過去なんて興味はないから。でも、誇りに思っている薬師魔法をバカにされたら?さっきのように否定されていたら?クローバ様と距離を感じていたら?
尊敬していた母親が親殺しをしていたら?
「アザミーナ様」
誰かの声で意識が急に浮上した。私は何を考えていたのだろう、ゆっくり瞼をあけると心配そうなクローバ様の顔があった。あまりに近くて心臓が早く鼓動する
「無事でよかった」
「魔法薬師が倒れるとは情けないわね。ここはどこかしら?」
「クロッカス侯爵家ですよ。気絶したあなたを連れて帰りました」
「ご迷惑をおかけしました」
申し訳なくなって謝るが、それよりも母のことが気になる。親殺しというのは本当だろうか。知りたいが、人から聞いた噂などあてにはならない。それならば
「クローバ様!」
「はい。何ですか」
「私を王都に連れて行ってくださいませ」
クローバ様の通う学校は王都にあり、王城にも距離が近かったはずだ。本人に会って聞いてみよう。お母様も私も傷つくことになるかもしれないがもやもやするよりずっといい
「お母様に直接会って話を聞きたいの」
これにて一区切りつきました。次話は本日午後8時に投稿しようと思います
クローバ様は結構無神経だと思います




