表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

ミッション④「ママに会わせよう」【トラ】

ミッション④「ママに会わせよう」【トラ】


 屋敷の屋根の上。ソーラーパネルを設置していれば、間違いなく余剰電力が発生しそうなくらい、うららかな春の陽射しが降り注いでいる中に、四匹の猫、いや、猫又たちが歓談している。

「俺もアオもシロも、みんな作戦を達成したんだぞ」

「そうだよ。トラだけ何もしないのは、不公平だ」

「うるさい。俺は俺だろう」

「まぁ、そうだけどさ。でも、アオの言うことも一理あるからね。俺も、容赦なく撫で回されたし」

「そうそう。もっと言え、シロ。俺だって、身体張ったんだ」

「ブチ。お前は、野良のくせに、あんな鈍臭い真似をして」

「野良だから、何だ。いつまでも飼い続けられるとは限らないんだぞ」

「まぁまぁまぁ。みんな、落ち着いて。――今回の作戦は、トラじゃないと駄目なんだ。協力してくれよ」

「そうだ。単に人間に化ければ良いって話じゃないんだ」

「そう。ブチの言う通りだ」

「えぇい、やかましい。そこまで言うなら、今回だけ、特別に引き受けてやらぁ」

 そう言うと、尻尾が二本ある虎柄の猫は、切妻屋根の向こう側へと姿を消す。

  *

――俺は雄猫だってのに、何で化けると女顔になるかなぁ。小柄なのは、元々だけど。えぇっと。たしか話では、この先の部屋にジュンが居るんだったな。

 上にはゆったりしたシルエットのセーターを着て、下には七分丈のパンツを穿いた細身の人物が、トールペイントでファンシーなレタリングが施されたドアプレートが下がっている部屋に入る。

「おやすみ準備なら、ちゃんと……。ママ?」

 突然部屋に入ってきた人物に向かい、少年は難癖をつけるように言いかけ、そこにいるのが予想外の人物であったことから、しばし茫然と立ち尽くす。

――鳩が豆鉄砲食らったような間抜け面だな。まっ。死んだはずの母親に瓜二つの人物が何の前触れも無く現れたら、すぐに順応できないか。警戒心を解きたいところだけど、喋っちゃいけないのが辛いな。

 細身の人物は、少年をジッと見つめ、不器用な笑みを浮かべながら、両腕を広げて待つ。少年は、両目を潤ませながら、その人物に抱きついて言う。 

「会いたかった。ずっと、言いたいことがあったんだ」

――泣くんじゃない、馬鹿。俺まで悲しくなってくるだろうが。

 細身の人物は、少年の頭を撫でると、そっと少年の腕を取り、ベッドのほうへ誘導する。

  *

「フゥン。それで、ジュンが眠りに就くまで、横についててあげたんだ」

「意外と優しいんだな、トラ」

「馬鹿野郎。そんな美談じゃねぇよ。途中で猫に戻って逃げ出すわけにいかないから、仕方なくだな」

「まぁまぁ。よかったじゃないか。ジュンも、言いそびれたことを言えて、スッキリしてたし。作戦、大成功だよ」

 屋敷の屋根の上では、今日も今日とて、四匹の猫又たちが歓談しているのでありました。

※トラ:野良猫。化ける前は、神社の縁の下に棲み、ゴミ箱漁りしていた。雑種、小柄。

※ママ:ジュンの母親。故人。晩年は闘病生活を余儀なくされていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ