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ミッション①「家庭教師を笑わせよう」【ブチ】

ミッション①「家庭教師(チューター)を笑わせよう」【ブチ】


――ご機嫌取りなら任せろってことで、堅物爺さんを笑わせることになったんだけど、このジジイ、クスリともしない。

 総白髪を整髪料でオールバックに撫で付けた老人が、書き物机に向かい、しかつめらしい表情をして、書類にペンを走らせている。その背後で、褐色に黒の斑がある猫が、本棚に登っている。近くの出窓の外からは、三匹の猫が書斎の中をジッと凝視している。

――まずは、ここからジャンプして、あの机に乗ってやろう。サプライズだ。

 猫は棚の上まで攀じ登ると、尻尾を振りつつ、脚を曲げ、果敢に書き物机に向かって跳躍する。が、脚力が足りなかったのが、それとも体重が重すぎたのか、猫は、老人が座る椅子の横に、腹を打ちつけるようにしてベタッと墜落する。

――イテテテテ。これは、予想外だったな。そういえば、この前もコーナーを曲がれずに、顔面衝突したっけ。おや?

 猫が顔を上げると、老人は猫の首の上を片手で掴んで持ち上げようとするが、そのままでは持ち上がらないと判断したのか、もう片方の腕で猫の胴体を抱えるようにする。

「また、性懲りも無く忍び込みよって。坊ちゃまに可愛がられて、味を占めたのだな。ウゥム。いささか暑いが、窓を閉めるべきかもしれないな。それから、坊ちゃまにも、猫と戯れるのをやめさせねば」

――そんな怖い顔して言うなよ。たまには、息抜きも必要だぜ。それにジュンだって、ママを亡くして凹んでるんだからさ。ほら、スマイル、スマイル。

 猫は、身を捩って前足を自由にすると、ペシペシと肉球を老人の頬に押し付ける。

「コラ、やめないか。仲間の元へ返すだけだ。大人しくしないと、三味線屋に売りつけるぞ」

――怒らないでよ。笑わせたら、すぐに出て行くからささぁ。

 猫は、老人の脇腹の下に前足を置くと、爪を研ぐような動作で、服を破かない程度に引っ掻き始める。

「お仕着せが傷むだろうが。いよいよ、皮を剥がれたいようだ、ヒッ」

 老人は、出窓を開けて猫を抛り投げようとしたが、突然、しゃっくりのような頓狂な声を出し、その場にしゃがみ込む。

――おっ! ここが弱点か。それそれそれ。

 猫は、脇腹の一角を、ツンツンと前足の爪で突く。老人は、にわかに顔を綻ばせ、うっすら涙を浮かべながら、堪えきれずに笑い声をあげる。

「クフッ、ハッハッハ」

――ヨッシャ! 作戦、成功。

 猫は、拘束が緩んだ隙にスルリと腕を抜け、三匹の猫が覗く出窓から外へ行く。老人は見逃したが、その後ろ姿には、尻尾が二本ある。


※ブチ:半野良猫。化ける前は、軒端でおこぼれちょうだいしていた。雑種、大柄。

家庭教師(チューター):ジュンの教育係。厳格。住み込みで働いている。


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