笑えない冗談(ツイッターより加筆転載)
『好きなcpの攻に俺が浮気したらどうするって言わせて受がどう返すかでのcpに対して理想が現れる』
っていうタグを見て。
《ニール×ジョー》バージョンでお送りします。
「俺が浮気したらどうする?」
意地悪な問いかけに、ジョーは目を見開いた。宝玉のような漆黒から、みるみるうちに露があふれて流れ落ちる。そして、震える唇からは、たどたどしく平坦な声が困惑の言葉を紡いだ。
「……どうしたら良いかなんて、わからない、よ」
凍りついたような表情。
ニールが「冗談だ」と口にするより先に、ジョーは悲しそうに微笑んで言った。
「でも、僕が要らなくなったら、ちゃんとハッキリそう言って……ね? 僕、迷惑には、なりたく……な……」
「ごめん! ごめん、嘘~!!」
ボロボロと泣きながらそんな健気なことを言うジョーを、ニールは慌てて抱き締めた。柔らかい金髪に指を埋め、耳に、額にキスを落としながら出来心を謝罪する。
「嘘ってか、冗談。ごめんな、ジョー。どんな答えが返ってくるか気になってさ……お前を泣かすつもりなんてなかったんだ。俺にはお前だけだって」
「ニール……。うん……」
ニールの指が涙を払う。まるで悲しみの雫を取り去るように瞼に、頬に、唇が触れていく。そのくすぐったさにジョーは笑って、つま先立ちになってキスに応えた。
しばらくニールの胸に頭を預けて甘えていたジョーだったが、ふいにニールを見上げて悪戯っぽく微笑んだ。
「もう変な嘘、つかないでね。僕、びっくりして心臓止まっちゃうから」
「それは……洒落になんねぇな」
くすくすとジョーが笑う。彼女の心臓はもう喪われていて、代わりに宝珠が二つ入っている。
何とも笑えない冗談だが、これは彼女一流のジョークなのか、それとも意趣返しのつもりだろうか。ニールはもう何も言わず、可愛らしい妻をもう一度抱き締めた。