仲間は嫌われ者
「お疲れ様でした。あなたがよき仲間に恵まれることをお祈り致します」
さっき聞いたような神が国教になるような国だ。こんな明らかな黒魔術士を抱え込めばどうなるかわかったもんじゃない。
「待って!せめて自己紹介だけでも聞いてから!もう馬小屋にも泊まれないんです、後がないんです。」
部屋から押し出そうとするが手紙の通り力があるのか逆にずるずる押し込まれていく。
「あーもう、仕方ねえ。自己紹介してくれ」
「はい!私の名前はリレイズです。享年16歳死んでからは年を数えてません。職業はネクロマンサー。生きている相手なら大体有利ですし夜に寝ずの番もできて食べなくても生きていける絶好の人材です!」
ふむ、メリットはすごいが
「そこまでの人材でなんで最低ランクの冒険者やってるのか、なんで誰もお前を誘わない?」
痛いところをつつくとおろおろキョロキョロしだす。
「えと、ほら、あまり家からでなくて」
「私としても嘘つきは信用できないなあ」
後ろでニヤニヤしながらニャルも援護する。ナイスだ
「そうですよね、嘘はいけないですよね、嘘つかれたら凄く傷つくからね。」
観念したかのように項垂れながらも腹をくくったのか徐々に語気が強くなる。
「私の長所はさっきの通りで。そして短所はネクロマンサーは死を操る死人だから宗教辛みの施設からはまともな恩恵を受けられず、忌み嫌われることよですが毎日頑張って生きてます。」
「やっぱりな。言えるなら具体的な話も欲しいけど。」
「聞きたいですか?まず支給食は本当に食べられなくなるまで残ったものしか出されない。加減を知らない子供からは石を投げられる。ギルドは正統な評価を下さないまだまだたくさんあります!」
本当に最低限だけ扱いあとはほとんど迫害状態か……デメリットは重いが、どうしたものか。本人はぐいぐい元気に押してくるけどこういう根本が重いのは凡人たる俺には手に余る
ちらりとつい責任から逃げるように後ろで見物してるニャルを見る。
「初仕事かな、悩める者を導いてあげなくちゃいけないね。」
察してくれたのか、椅子から腰をあげこちらに近づき優しげな笑みと共にリレイズの前にしゃがみ目線を合わせる。
「大丈夫だ、君は何も心配はいらない。私が君を肯定しよう。」
「あ、あなたは?」
「土壌の神ナルメルだよ。」
リレイズの目が見開かれる
「え、あ、え?確かそんな名前の神も昔に聞いたような、少し待って。」
そう言ってローブから取り出した広辞苑みたいに分厚い本をパラパラとめくる。
「背も見た目も声の特徴も見に纏う服も何もかも同じ?まさか本当に?でもなんでこんなところに?」
本と目の前のニセモノに忙しなく視線を往復させている。素直な反応だなぁ。
その反応に満足そうにしながらニャルは真実をばらす。
「とまあ普通の人相手の名乗りだけどだけど君には特別に更に正直に話すとしよう。私はナルメルに為り代わった別の存在なんだ。」
グニャリと一瞬で姿を変えて黒い仮面で顔を隠した姿となる。
「え、変身魔法は何の触媒もなしに使えるはずもないのに、あなたは?」
この世界であり得ないことをしたらしい。
「私はニャルラトテップ。土の精にして外なる世界の無貌の神だ。この世界の神は力があるだけのろくでなし共だ、死をも超越した君の力は素晴らしい。私は君を歓迎しよう、そして神が君から奪った者を私は与えよう。」
高らかに正体を告げると共に不遇な少女に勧誘の手を差しのべる。
「私が……私が認められる。神が私から奪った者はここにある。私の居場所はここにあったんだ!」
感極まったように涙しながらニャルの手を取る。チョロいなおい。もうちょっと疑わないといつか大変な目に…………もうあってるか。
「私の悲願のために協力してくれるかい?」
「はい、この身魂朽ちるまで!」
「なら今から君はナルメル教徒だ。もちろん本質は私でありただのカモフラージュだが、神の聖印を与えられることで君の扱いは変わっていくだろう。」
どこにそんな根拠がある。
「ありがとうございます、ニャルいえ、ナルメル様」
「これから予定では本来のナルメルのプリーストが何も知らないままに仲間に来る、君も合わせてくれ。」
「わかりました。それで彼は?」
「私のなくてはならない相棒だよ。その一点以外は凡人だよ。たがいずれ我々を引っ張るリーダーになる。」
「よろしくお願いしますね、リーダーさん。」
心なしかニャル繋がりで尊敬の目で見られる、やめてくれ、そんな目で見ないでくれ。
茶番でパーティーメンバーが増えた。
しかし、俺じゃ判断できなかったとはいえこれでよかったのだろうか?
まだ何をするかもどういう事情で異世界に目をつけたのかもわからないまだ。