表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ろくでもない物語  作者: あかさたな
19/79

ドラゴン

ただただ適当に兵士から奪った槍を持って砦の頂上を走る。

砦は巨大なドラゴンと配下の軍勢により内部への侵入まで許していた。

邪魔な魔族は力に勝るテイマパーティーによってなぎ倒されていく。ゴブリンやボガードが爪に引き裂かれ、魔法を使う魔族はテイマが銃で撃ち抜いていく。わざわざ威嚇のためにテイマは二人に派手に炎を吐かせ注目を集める。

そして俺とビトルとニャルはテイマらによって拓かれた道を走る。

ドラゴンの弱点はセージのクラスによってブーストされた力と元の世界の事前知識で俺は知っている。だがその弱点に辿り着ける者は今の俺達だとビトルだけだ。

一時的にビトルの奇跡により身体能力をブーストさせられているが脚が重い。元々凡庸な自分には不釣り合いな場所なのだと実感する。

「おい、一匹撃ち逃がした。気をつけろ」

テイマの弾切れにより空いた間隔を逃さず突っ込んでくる鳥のような魔族。だが階段を走り続けていきなりよけれるほどの余力はなかったが後ろから盾が投げ飛ばされ正面から突っ込んだ鳥魔族が撃墜される。

「油断するなよ、死ぬぞ。」

追いかけてきたトラスが盾を投げつけ助けてくれたようだ。だが、そのまま後方から追いかけてきた魔族を止めるため盾を拾い階段に立ち塞がった。

もう恐れるものはない、槍をビトルに持たせ後は走る。

やがてテイマの弾丸も尽き俺のブーストされた体力も尽きた頃に砦の頂上へと出る。

ここまでしてようやく目線を同じに出来る。ドラゴンは脅威に他ならなかった。よく見れば砦の兵らの大砲等の攻撃が一部効いたのか身体に細かい傷を作りやや消耗していた。そして下でリレイズがこれまでにない程に死をばらまいているお陰でその分ドラゴンへの余力が生まれていた。その事がきっかけになったのか1ptが砦の内部から飛び立ち、近くで光に包まれた剣を振るいそれを仲間が全力で守っている。セージなんかじゃなくても一目でわかった。

あれが勇者だ。

勇者は光の剣で鱗の上からドラゴンを斬っていく。

「いけー!倒しちまえ!」その姿に砦の戦士の士気も上がり盛り上がる。しかし目に見えてドラゴンが弱りだした時に変化が起きた。

ドラゴンが思いっきり咆哮を放ったのである。咄嗟に耳をふさぎ身を屈めるが鼓膜は破れそうになり、音の衝撃により飛ばされ落ちそうになる。

「主はこの私がお守りします。」

しかし、それを助けたのは一人咆哮を受けて平然としているビトルだった。俺を助けるため翼の奇跡により白い羽を生やしたその姿はまさに天使のようだ。

見れば咆哮により敵味方問わずまともに動けなかったり吹き飛び落ちていくもの後がいた。

当然のようにそれを間近で受けた勇者パーティーも無事ではなく勇者は本物のより強大な神にでも守られているのかふらつきながらも耐えていたが勇者の仲間は耐えきれずに墜ちる。一目散に落ちていく仲間を助けて行くがドラゴンはその絶好の機会を逃すことなく仲間を助ける勇者を攻撃し、勇者は仲間を守りきるが墜落した。

勇者の敗北に沸き上がった人族は冷め魔族は沸き立つ。

まさに絶望的だ、勇者は倒れたがこの世界の神はそれをよしとしないだろう。勇者を復活させドラゴンを倒させるだろう。

俺達が入り込める隙はここしかない。

俺はビトルの槍に魔力を込めどんな敵にもダメージを与えられるようにして送り出す。

「では行って参ります」

ビトルは静かに告げ飛び立つ。

ドラゴンは新たに現れた敵に目を向け炎を吐き出すが空に舞う羽のように軽やかにビトルは炎をよけ、教えたドラゴンの弱点である逆鱗を目指して突き進む。

ドラゴンもそれを察したのか後退しながら爪や胴体でビトルを落としにかかるが勇者の攻撃により弱ったドラゴンの動きは悪く本来近接職でないビトルでもかわしている。

まさに喉元にまで迫らんとしたときドラゴンは深く息を吸う

「咆哮が来るぞ!」

セージ職についていたおかげで一度やった攻撃は大体わかる。

砦の戦士に力の限り叫び砦の壁にしがみつく。

その後再び振動が襲い来る。一度目よりも余裕がないのかさらに強い。その後敵味方問わず魔法職や俺みたいな身体が強くない者は衝撃を全身に受けその場から動けなくなる。

ビトルは?

ビトルの姿を探せば衝撃を受けあちこちが潰されたのか血塗れになりながらも喉元へと辿りつきその喉元に逆さの鱗のと普通の鱗の隙間を縫い槍を突き立てていた。

魔力付与の呪文により英雄にしか倒せないドラゴンに傷をつけドラゴンは見悶える、しかしビトルは槍を離さず更に光刃の奇跡を祈り堅い鱗を持つドラゴンは内側から光に貫かれ落ちる。

ドラゴンはまだ生きているが地上には生憎なことに対生物最強のチートが待っていた。ネクロマンサーの作り出した大きな闇に沼のように沈むドラゴン。空に飛ぶ事ができたなら逃れられたであろうが今は飛べずやがて闇に完全に沈む。

空には血塗れになりながらもぼろぼろの翼でその場にいるビトル、下には大きな闇を作り出したドラゴンを飲み込んだリレイズ。

勇者なくては勝てなかったが、最後に美味しいところは俺達がかっさらった。



理想の勝利だ。勇者が英雄になるためのサクセスストーリーを邪魔してやった。これでめでたく俺達は名前をあげ、目的の第一歩を踏み出せた。次の敵は教会と魔族だ。だけど今は勝利に浸ろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ