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ろくでもない物語  作者: あかさたな
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教会と嫌われもの

朝食事を終えて俺達は馬車に乗る。

「お待ちしておりました、先日はとんだご無礼を。ささ、ビトル様ご一行はこちらにどうぞ」

昨日ビトルから騒動については聞いた。この人が宿舎にいた責任者だろうか。

「その馬車4人のりだろ?」

「問題ございません。同じ馬車がもう1台ございます。」

俺、ニャル、ビトル、リレイズ、トラス、テイマ、ミステ、テイク

ちょうど8人だ。

「俺はこいつら見ねえとだしそっちは一人余るな」

「だったら私が向こうにいきます。」

すかさず新しい友達にそわそわしながら近づいていく。なついてるのはリレイズのほうじゃないのか?

「お決まりのようですね、こちらへどうぞ。」

責任者の言葉に従い馬車に乗る。

「リレイズ、これ持っててくれこっちの荷物に入りきらねえ」

その前にリレイズに温泉町の包みで包んだ箱を投げ渡しておく。

「進めー!丁重に砦までお届けするのだ!」

責任者の声に従い場所を囲む騎士達と共に出発する。

「眠い……今までの馬車と違ってシートもふかふかだし寝てしまいそうだ。」

「昨日眠れてないのでしょうか?」

ビトルは心配して聞いてくれる。

「いや、昨日の夜新しい魔法をいくつか覚えてさ、その反動で。さっきリレイズに渡した箱も昨日遅くまで起きて作ったものだしな。」

「ならば少しの間おやすみなさいませ。主に何かああるようなことあらば私が起こしてあげますので。」

「ああ……頼んだ」

ビトルに任せると綱が切れたように眠りに落ちる。



しばらく揺られていながら退屈してきた。あたしはいい機会だから気になったことを聞いてみた

「新しい魔法ね、おい大丈夫なのか?」

どっからみてもこいつは魔法に長けた性質だとかそういったやつじゃねえ、そんなやつが叩き込んでるんだ。身体が持たねえぞ

「私の見立てだと今はこんなだけどちゃんと大丈夫だよ」

未だこいつが何なのかわかんねえ。

「心地よさげに寝息をたてています、彼女のおっしゃる通り大丈夫でしょう。」

違うんだよ、今の話じゃないんだよ。

「それよりも少し妙だね。」

「何がですか?」

「この馬車さ、正騎士の守りがやや多い。」

「あの責任者が詫びのつもりで過剰につけてんだろ。お陰であたしらは楽できる。」

そんなことを話しているとやがて馬車が止まる、襲撃か?

「お願いがあります。」

扉を開き責任者が出てくる。だが、襲撃にしちゃ妙に神妙な顔だ。

「このまま何事もなかったように馬車に乗り先はどの町へお帰りください。滞在の間は精一杯もてなしますねので」

「ふうん、上に今回の失態を報告したら貴族の娘に手を出そうとしたことは咎めない代わりに町からいなくなったネクロマンサーと教会の弱味を握るテイマが固まってる今が好機だから始末しろって言われたんだ。」

ぎょっとナルメルの方を見れば色ガラスの窓を覗きこみながら訳知り顔で言う。

「何故そのことを」

「それは今の問題じゃない。トラス、ビトル、この相棒を頼んだよ。今回は調子にのって余計なことをした。」

そう言えばナルメルは煙のように消える

「テレポート!」

禁断魔法に指定されている筈の魔法をいとも容易くやってのけたナルメル、お前は本当に何なんだ。

「ナルメル様には違いありません。」

そんなあたしの心を見透かしたかのようにビトルは未だ目覚めないリーダーを寂しげに撫でながら呟く。

ビトルは何なのかわかってるのか?だが本当にナルメルならなんでそんな顔をするんだよ、お前の信仰する神だろ?ビトル。

「私達はやるべきことをやりましょう。」


私は手加減していた、側のテイマさんや騎士さん達が死なないように。襲ってくる矢や魔法を身体で受け止め刺客を呪いで無力化させる。

迫る刃はミステさんとテイクさんが爪で弾いたり折ったりしてもらっている。

「そろそろ諦めたらどうだ?ネクロマンサー、ひょっとしたら命だけは残されるかもしれないぜ?」

「待つのは生き地獄だろ?俺達はよく知ってるよ」

二人に守られながらテイマさんも戦っている。

急に馬車は進路を変え深い森の中へと入った。そして私達を待っていたのは山賊と正騎士の連合隊だった。

相手が国の命令で襲ってきているならここで死人を出せばそれは更なる討伐の言い訳になるかもしれない。

二人は炎を使えば森と一緒にテイマさんを焼くことになる。

「悪魔と忌避すべき者に裁きを!」

正騎士の号令により更に人が押し寄せる。後ろでは呪いで無力化した人をプリーストが回復させていてキリがない。

らしくないことをしなければ良かったのかな?一人の私だと皆塵にしてまたどこかの土地に行けばそれでいいのに、でも今はビトルさんやリーダーさんに迷惑がかかる。

「悩む必要はないよ、ただ山賊が裏切ったのか全滅したということにすればいい。謎の全滅だ。正騎士は味方でもなければ上司でもない。私達の敵だ。」

聞きなれた声が私を包む、見れば黒い私の神様がいた。

「ニャル様……」

「君達がやれば跡が残る、証拠が残る。本当にこの世界は私が嫌いなみたいだ。これは私にしかできない。」

そう言うとニャル様の右腕が枝分かれする触手となりそのまま襲撃部隊に向けて伸び貫き、切り裂き、叩きつけ一瞬の間に襲撃部隊を残らず始末した。


「悪い!目を覚ませなかった。」

やがてリーダーさんが馬車に乗る前に渡した箱の側にやって来る。ニャル様もこれでテレポートしてきたみたいです。

「すぐにビトルも来る。とりあえずは待機だ」

「すまない、この惨状をみればわかると思うが私が動いた。私が調子にのったミスが招いた結果だ。」

「まさかここまで露骨に消しにくるとはな。」

「現地を見るまでもねえや、こいつぁ砦に行っても下手すりゃ砦の中も外も敵だ。どうする?」

「いや、ここは襲撃部隊長と族の長の首だけとって後は埋葬しよう。そして悠々と正面からなに食わぬ顔で砦に入ろう。この規模の戦力だと傷もつかないと見せつけながら裏で何してるかって弱味を握りながら歩いて嫌がらせだ」

「またえらい図太いこと言うなあお前さん、だが砦の中で襲われる可能性は?」

「さっき言った通りだ、そこそこの規模の襲撃だったが俺達は傷ひとつないと見せつけたら手出ししてこないさ。向こうは最前線で人手は幾らあっても足りないんだ。それこそ山賊と組むくらいに。これ以上は放っておいても今はまだ大丈夫なやつよりも対処しなきゃまずい砦に力を入れるだろう。」

「なるほどねそこのネクロマンサーももう再生が終わってるし俺も固いこいつらのお陰で傷なしだ。このまま泣き寝入りよりかはずっといい。俺はそれでいい、こいつらも基本俺の意見と同じだ」

「お、オナジク」

「私問題もたない。それでいい」

私は安堵で崩れ落ちながら相談を始めたニャル様達をボーッと見ていた。

「お待たせいたしました。」

「はあ、はあ、無事か!」

「お、お待ちください!」

やがて息を切らしたビトルさん達も到着して、ニャル様は全てを暴露した。

「それで、あたしらを殺さねえために馬車を分けてたってことか。」

刃を責任者さんに突きつけるトラスさん。怒りはやり方に怒ってるのもあるけど私やテイマさん達のために怒ってくれている。なれないことをしたと思ったけどやっぱり仲間っていいものです。

「は、はい。その通りで。」

「叩き斬ってやってもいいところだが、お前らはこいつ使うのか?」

「君も慣れてきたね、テイマはどう思うのかな?」

「こいつみてえなやつはよく知ってる。お前ら別にした辺りにも出てるが中途半端なやつだ。薬になりゃしねえが取り扱い間違えれば毒にゃなるな。いらねえ」

「ならいいな、テイマが言うなら間違いないだろう。このまま放っておこう。気が変わらないうちに逃げてくれ」

その言葉に一目散に逃げる責任者さん。彼は彼でロクな目にあってませんでした。

「それじゃ移動するか、歩きになるが仕方ねえ。羽のあるこいつらが」



そして半日ほどで私達は高い高い砦の壁と山のように巨大なドラゴンの咆哮に迎えられました。

いつかどこかに恐怖を置き忘れていてよかったと思いましたよ。遠くにいても魂ごと身体を震え上がらせるようなドラゴンの咆哮とこの砦が放っている命を賭けた戦いの雰囲気に飲み込まれて倒れそうになるのですから生きていたら卒倒してしまいます。

仲間を見れば修羅場に慣れてるのかテイマパーティーはむしろ喜び、意外なことにリーダーさんとビトルさんが平然としている。緊張を隠せないのはトラスさんでした。

「ここを乗り越えれば私達の目的の一歩を踏み出せます!もう始まっちゃってますよ!急ぎましょう‼」

「あ、おい待てコラ。突っ込むな。」

「いやぁ、ここは尻込みしたら負けだ、俺達も前に出て苦戦してる正騎士に見せつけるように鮮やかに道を拓いてやる。」

翼を広げたミステ・テイクの脚に捕まりながら飛んでいく。」

「ビトルが主役だ、トラスは物理的に勝てないし俺に至っては戦闘向けじゃない。手段とか話し合う暇もねえ、行くぞ」

「あーもう、どいつもこいつも。あたしがいればリレイズ、お前の邪魔になる。あたしはあの二人を援護してくるからお前は周りを気にせずぶっぱなせ‼」

私が元気に振る舞えば仲間も元気付く、だから仲間のためにも私は[ネクロマンサー]である自分を恥じないでただ前に進まないと!

「生者たる魔族さん、こっちです!あなたの死が迎えに来ましたよ」

私は触媒の骨を両手に持ちながら砦の外周を攻める魔族の軍隊に突っ込みます。後はリーダーさん達にお任せです。

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