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ろくでもない物語  作者: あかさたな
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同盟と温泉街

馬車が休憩に立ち寄った町は田舎にも関わらず戦場の近くということでなかなかの賑わいを見せていた。

「後で合流します、何かあれば私に向けて念じてください。あなたの声ならばどこにいても届くので。ああ、トレス待って!」

この町の宿にに荷を下ろすなりトラスとビトルは一瞬で消えた。


表に出て改めて空気の臭いを嗅いでみる。

「この臭いは・・・温泉?」

「ほう、セージだとそんなこともわかるのか。大当たりだ。寂れた温の町が近くに砦ができたおかげで兵士や冒険者の休息の地として一躍有名になってる。」

何故か一緒に行動しているテイマが答え合わせをしてくれる。あの二人が消えたのはそういうことか

「私やテイマさんの仲間は入れませんね・・・」

寂しげにリレイズは言いながらテイマの仲間と寄り添う。見た目特殊だったり肌色で即バレるし経営者も入浴を許さないだろう。思いの外人でないということは不便なようだ。

「境遇似た者同士でなついちまったのかねえ。おいネクロマンサーの嬢ちゃんそいつらの名前はミステとテイクだ。仲良くしてやんな。」

「なるほど!ミステさんとテイクさんですか、よろしくお願いします!」

「ヨ・・ヨロシク」

「この子は話慣れない。こっちミステよろしく」

ハキハキといつものように自己紹介し、それなりに心を開いたのか不馴れな言葉で自己紹介を返される。やはりリレイズは見ていると気分が明るくなる。

「ここにゃ何も風呂だけじゃねえ、温泉を足にかかるだけ貯めて足の疲れを溶かしてくれる足湯もあればここぞとばかりに色々と売ってやがる。お前らはそっち回ってな!」

テイマは小さなお金の入った袋を二人に投げるとリレイズらも観光にパタパタと走り何処かへ行く。

「前に子供だと言ってたがなるほどな、見ていて微笑ましい。」

「見てる分にはいいんだよ、実際には手のかかる奴等だぜ?」

「それで、わざわざ他の子を払ったんだ、何か話したいことがあるんじゃないかな?」

黒い我らがニャル様はテイマをつつく

「賢いなあ、あんたは不気味だから本当はこいつと風呂にでも入ってからサシで話したかったんだが。」

テイマの観察眼は神か

「それは心外だ、ただ衣装が黒いだけでそこまで疑われるなんて」

「白々しい。まあいいぜ、こうして目をつけられちまったら避けて通れねえ。そこの店にでも入ろうや」

クイと親指で適当な店を指す。

「君もくるんだよ、ぼうっとしないで」

しげしげと店を見ていたらニャルに引っ張られる。


「ご注文は?」

「温泉結晶とカリカリアイス、あー飲み物はこの冷酒1本くれ。」

「私は温かいお茶とアイスを貰えるかな?」

「あ、えーとオススメで」

「かしこまりました!しばらくお待ちくださいませ。」


「さて、話は他でもない手を組もうというところをもうちょっとばかし細かく練ろうやということだ。俺達は明確な目的もそれぞれ抱えてるのが何かもまだ話してねえこれじゃ何をどうすりゃいいこわからねえだろ?」

注文を終えるとテイマから切り出す。至極全うな話だが

「俺の目的は大舞台で派手にあいつら活躍させて教会連中への嫌がらせだ。そこの黒いのが信用しねえから話すがあいつらはドラゴンと人間の合成生物でね、教会がこの世界の終わりまで秘密にするか始末しておきたい代物なんだよ」

「待て、テイマお前ネクロマンサーどころじゃねえじゃねえか。しかもどっちも得するフェアな同盟なんてその教会の弱みの暴露の共犯者だろ。」

「話がはええのは良いことだ。まさにその通りだがお前も似たようなもんだろ?お互い教会に嫌われようぜ」

確かにそうだがヘタすればこっちの命も危ない。

「君に任せるよ、何かあっても君だけは私に必要だから助けてあげるから心配しなくていいよ。でもどっちでもリターンもリスクもあることは忘れないで。」

ニャルが関わりたがらないということはここは運命の分岐点なのだろう。ニャルとテイマからじっと見据えられ俺は頭を悩ませる。

すると視界の端に偶然水を集め一ヶ所に落とし穴を開けている岩を店の窓から見つける。

「そうか、そうしてみるか?」

「決まったか?」

「ああ、どうせ堕ちる者同士だ、固まって堕ちよう、全員道ずれだ。」

テイマは俺の結論に驚いていたがやがて今までと顔を変える。

「おい、お前さんらなかなかおもしれえじゃねえか。だがお前のその発想は砦なんて目先を目標にしてねえ。本音を言えば適当に切り上げておさらばしようと思ってたが気が変わった。お前さんらの目的はなんだ?内容次第じゃ本当に同盟組んでやる。」

目的か………ここは受付さんの言葉を借りるのが一番しっくりくるな。まさか邪神をこの世界に呼んで新たな勢力が生まれるなんて言えねえし。

「このぐだぐだとした魔族と人族の世界を変えることだ。」

「なるはどなるほど、ちまちま嫌がらせに走る俺なんかとはスケールの違うビッグな夢だ。世界を変えればあいつらもネクロマンサーもまた扱いが変わるだろ、万々歳だ」

そう言った後しばらく俺達を見て黙るテイマ

「どうだ?組むのかやめるのか?」

いつの間にか同盟の話に乗るか乗らないかは俺が聞くようになっていた。

「お前さんだけなら馬鹿だこいつと思ってやめていた。だがそこの黒いのとそれに平然と並んでるお前さんを見てたら不思議と惹かれるものがある。同盟締結だ」

テイマも結論を出す。

「なら今の神々をマヌケと嘲るように華々しくナルメル神の元で戦ってくれ、そしてドラゴンはこっちにくれ。一人人間越えて、しかも都合のいいやつがいる。後は可能な限り協力するし好きにして構わない」

「わかった。最終的にゃその方向にもってこう。こっちからの要望は待ってくれ。現地を見ねえと俺は頭がまわんねえんだ」

「くく……なるほど、なるほどなるほど。いや、なかなか皆と一緒に堕落しようなんて考えには至らないし、それを臆面もなく前に出せるものじゃないよ。でもよくやったと誉めてあげる。今夜私の部屋にきたらご褒美をあげるよ、面白いけどいざというときの危険率は何も変わってないからね。」

ニャルはご機嫌に言う。今後どれだけのことをしてどれだけを敵に回すかを考えればテイマの言う通り今回の砦は目先のことでしかないのだろう。だが今は

「お待たせいたしました。こちらアイスとホットティー、こちら温泉結晶セットと冷酒、そしてこちら当店オススメの温泉岩を模した温泉岩饅頭です。饅頭はお茶のおかわり自由なのでいつでもどうぞ。」

だが今は目の前の小さな岩程もある大きな饅頭をどうにかしなければ………

「黒いの、熱いのと冷たいのってどうなんだ?ぬるくなえか?」

「意外と悪くないよ、お互いの熱さ冷たさがより際立つんだ、テイマのそれこそなにかな?」

「名物だよ、温泉の成分を魔法で固めて味をつけてんだ。源泉は不味いがこいつは酒に合う。温泉結晶から酒を飲んでこのカリカリアイスで口をサッパリリセット。こういうちょっと呑むときにいいんだよ。」

こちらの存在感に関わらず互いの注文した品について話し合うニャルとテイマ

「なあ、手伝ってくれる気は」

「ねえな」

「ないね」

ちくしょう、やっぱりこの町もろくでもねえ。

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