宴とネクロマンサー
「遅い、酒が温くなるだろうが。先に飲んじまったじゃねえか」
帰ってきたビトルさんとリーダーさんを待っていたのは待たされて痺れを切らしていたトラスさんの文句だった。。
いつも独りでクエストしていたときにはなかったピンチとか色々あったけど何とかなってお金も入ってよかった。
「悪いな、ちょっとビトルに相談受けてて」
「男が女のせいにすんじゃねえ。」
「ほら、お肉もお魚もチーズもあるからトラスは暴れないでください。」
わいわいと仲間は騒いでる。そしてそれを少しはなれて見るのは私と私の神様。
だけどいつか本当のことに気づいたらこのパーティーはどうなるのか?嬉しい反面前提が嘘なので少し不安かな。
「私にもお酒飲ませてください。」
でもそんなものは生き死にと同じように気にしていても仕方ない。
だから私は仲間の輪の中に一歩踏み出した。
「お前死体じゅねえか、酒わかんのか?」
「わかりますよ!むしろ再生能力のおかげで人一倍活性化してます!」
「あたしにゃお前の身体はよくわかんねえがまあいい、一口飲んでみな。」
注がれる蜂蜜のような色をしたお酒が注がれる。
「いきます!」
グラスを傾け恐る恐る口をつける。
すると一口でこれがどういうものかわかった。
全身の毛が逆立つような身体に染み込む刺激と口を満たす濃厚なほんのりと木の匂いが混じった香りが私を包んだ。
「はあ……はあ……凄いですねこれ!美味しいです!」
「その様子だとちゃんと味わえてる見てえだな。立場上お前は好ましくはねえが、あたし個人的にはできるだけ仲良くしたいんだ、酒がわかるやつでよかったよ。」
「でもこれはあまり呑みすぎると危なくないですか?」
私でさえこんな刺激を受けたのに……
「お前は普通氷とか水で割って呑むもんそのままいっちまったからなあ。いや、先に説明しなかったあたしがわりいが」
なるほど、いつからか思いきりがよくなってしまった自分の早とちりだったみたい。
「肉や野菜も食っとけよ、中々の値段のやつ買ってきたんだから食わなきゃ損だ。」
リーダー様がこっちに向けた皿には鶏肉が香草と共に焼かれ、所々に塩を入れてあるものだ、タレをかけただけのものと違いこういうのは調味料の味と鶏肉本来の味を楽しめる。
「では、いただきます」
柔らかい肉にハーブの香りと塩の味がお酒で充たされた身体に更に活気を与える。
いつ以来だろう、まともにご飯を食べたのは。
いつ以来だろう、こんなに食事が楽しいのは。
初めて会ったばかりの人達だけど私はこのパーティーが好きだ。
やがて皆が眠るまでこの楽しい時間は続いた。
「おはようございます」
「お前らのランク上がるだろうから今日はこの町を出るための下準備にクエストしてもいいかもな。」
翌日気だるげな様子だったリーダーさんと違いいつもと変わらない二人に私は軽く驚くと共に今日の始まりを実感する。
しかし、昨日の成功からのパーティ内の明るい雰囲気は受付で叫んだリーダーさんにより霧散する。
「あんなダンジョン踏破してボスも倒したのに昇格はないだって?ふざけるな!!」
変な話だ。初級冒険者でも冒険者ランク上がること間違いな手柄をあげたはずなのに……