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ろくでもない物語  作者: あかさたな
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仲間2の始まり

俺達は証拠の王の亡骸と共に冒険者ギルドに報告した。

「ダンジョンの調査にご協力ありがとうございます。また追っていたしますのでまた後日いらしてください。また、こちらは換金された宝石のお金となります。」

受付の人は登録したときから変わらず事務的に対応された。この受付の笑顔は誰も見たことがないと噂だ。


そのままお金を等分し分配を終えて、それぞれにお金が入る。

「皆お疲れ、初めての面子でこの大戦果だ!このままみんなで打ちあげとかしねえか?」

密かな憧れである冒険者のお約束である。

「えと、私はいいです。私がいるだけで店に入れなかったりしますから。」

「ならリーダー様の宿屋でそれぞれ食料持ち寄ってやりましょう。話のわかりそうな主人でしたし、これならリレイズさんも参加できるでしょう?」

リレイズが寂しげに辞退しようとすれば意外なことにビトルが名前で呼びながらリレイズのために打ち上げプランを出した。

「ありがとう!ビトルさんのこと誤解してた!」

「トラスはどうする?」

「この空気で断れるかよ。それに下手したら行き着くところまでお前らと一緒に行動することにはなりそうだしな、親睦は深めときてえ。」

何かを諦めたかのような表情で言われる。ビトルといい、何があったのだろうか。

「それじゃあそれぞれ適当に買ってきてくれ。私とリレイズは買い物とかおおっぴらにできないから宿屋の下準備をしておくよ。」

最終的にニャルがまとめ、残った俺達は買い物に出かけることになる。

「トラスはお酒買ってきていいですよ、それが一番でしょう?」

「わかってるじゃねえか、酒に合う飯も頼んだぜ」

やがてビトルにより嬉々として酒を買いに離れるトラス。

残ったのは俺とビトルだけだ。

ビトルはその後何か言うこともなく、肉や魚を買いやがて宿屋に戻る前に寂れた神殿に入る。

「王を討ち、私達をお救い下さったあなたはさすがナルメル様の相棒です。」

「買いかぶりだ、トラスとリレイズがいなけりゃ俺はリザードマンにやられてたし王もニャルがいなかったら俺が死んでた。」

「謙遜は止してください。あなたがいたからという結果は何よりも強く残っていますから」

神殿の中は暗くその表情は見えないが、いい予感はしない。

「リーダー様、私はナルメル様とあなたにどこまでも付き従います。そのために私はなるべき自分になります。この私の決意を受けてくださりますか?」

正面から俺を見据える目はどこまでも遠く間近で見た王の剣より鋭かった。

「何をする気だよ。何かやるならナルメルにやればいいだろ。」

するとビトルは悲しげに笑う。

「ごもっともです。しかし、私にはナルメル様に負い目があり、次点のあなたを頼るのが限界なんです。」

目の前の少女は今にも壊れそうなのに相変わらず鋭いままだ。

きっともう決意してしまったのだろう、それと同時に彼女の何かが壊れようとしている。

不思議と落ち着いた判断ができた、ここは彼女を保つためにも受けないといけないようだ。

「好きにしてくれ。」

俺はビトルに最後の判断を委ねた。



リーダー様の発言ははっきりとしたものではありませんが、その意味はおそらく肯定でしょう。

結局ナルメル様自身でなくその相棒たるあなたに捧げる自分も、引き下がることのできない自分も、その結果を知りながら禁忌に手を出して逃げる自分も全てが私の弱さでした。

今はリレイズさんは忌むべき者に見えません。迫害されながらも明るく生きていられ、仲間の大きな力になれる彼女が この上なく眩しいのです。

私は集中し、かつて私の先祖様が行い、今は禁忌とされている奇跡を祈る。

その奇跡は私の足元から白い光を生み、やがてその光が私を包み込む。綺麗な光です。しかしその光は私の魂をこの身体から抜き取る。

これが神に仕える不死の兵士となるべく生まれた禁忌の奇跡。魂を神に捧げ魂を失いながら神に全てを握られながら神の駒として生きる奇跡。

神により使い潰されるか、神が死んだときにだけ解放される、リーダー様はどこまで生きられるのでしょうか?そんなことをぼんやりと考えるうちに私の魂は私の元を離れ、リーダー様の元に捧げられた。

「ありがとうございます。これにて儀式は終了しました。」

「何をしたんだ?」

「私の魂をあなたに捧げたのです。」

それから私は禁忌の奇跡について話した。


「はあ……わかった。これがこの世界の望んだことなのかあいつの期待したことなのかは俺には全くわからない。だけどビトルと俺はもう一心同体になってしまったんだな。」

悩ましげに、複雑な顔をしながら私の主となった方は確認する。

「はい、あなたが力尽きるか私の魂が消えるまで私はあなたの駒となりました。」

だから私はそれを肯定し自身のしたことを確認した。揺るぎない後戻りのできない事実として。

「とりあえず今は俺達を待ってる奴等がいる、行くぞ。」

禁忌に手を出した私はこれから先ろくでもない目に遇うのでしょう。それがどうなるのかまではわかりません。私の試練は今からが本当の始まりなのでしょう。

ただ、今は私の主に従って宿屋に戻ります。

宿屋への帰り道リーダーはただ一言だけ

「この世界もあいつもろくでもねえ」

とボヤきました。

捧げた魂が共鳴でもしたのでしょうか?私もまたこの運命をろくでもないと少し思いました。

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