スキル結晶
目を覚ました俺は、風呂と食事を終え、部屋に戻り、目の前に手をかざし、呟く。
「オープン…」
すると、目の前に画面が表示される。
その画面には、ステータス、アイテム、フレンド、クエスト等の様々なコマンドが表示されている。
俺はその中のアイテムコマンドを開き、そこから昨日購入した、スキル結晶を取り出す。
スキル結晶の使い方は簡単。
手で握りつぶすだけ…なのだが、数が多すぎた。
握り終えた頃にはお昼を過ぎていた。
俺はステータス画面を開く。
天谷 翔 (男)
職業:戦士
レベル:14
HP:315
MP:107
筋力(物理攻撃力):324(374)
知力(魔法攻撃力):121(121)
物理耐性(物理防御力):304(354)
魔法耐性(魔法防御力):193(193)
敏捷:203
運:100
スキル:言語理解
これが、俺がFLOに閉じこめられた当時のステータスだ。
FLOは、リリースさてからまだ2ヶ月ぐらいしか経っていない。だから、プレイヤーのレベルもあまり高くない。現時点では、最高でもステータスがオール500ぐらいだから、俺は中の下ぐらいだ。確か、最高ステータスは1500が限界だったはず。
そして、今の俺のステータスがこれだ。
天谷 翔 (男)
職業:勇者
レベル:1
HP:10537
MP:10098
筋力(物理攻撃力):10606(10656)
知力(魔法攻撃力):10498(10498)
物理耐性(物理防御力):10599(10649)
魔法耐性(魔法防御力):10392(10392)
敏捷:10505
運:100
スキル:言語理解、HP自動回復、MP自動回復、痛覚遮断、即死無効、魔力暴走、気配察知、鑑定、偽装、職の悟り
これが現在の俺のステータスだ。
さっきも言ったが、現在FLO内でトップクラスのプレイヤーはステータスがオール500程度だからどれだけ凄いかわかるだろう。
その差は単純に考えても20倍はある。
だったら20人居れば勝てるじゃないか。と思うかもしれないが、実際はそうでは無い。
確かに、理論上では勝てるのかもしれないが、それを実行するためには、20人が寸分違わず同時に攻撃を与えないと意味が無いし、1回の攻撃で倒せる訳も無く、その内のひとりでも欠ければ勝率は著しく下がる。
そもそも、これは単純な力比べの時に限るものであって、実際は魔法やスキル等の要素も加えたら、20人居ても、100人居てもそんなに変わりは無い。
まあ、ぶっちゃけ化け物レベルだ。まだラスボスである魔王に会った事は無いが、俺ひとりでも結構戦えると思う。と言うより勝てると思う。
何故、こんな急に強くなったかと言うと…
まあ、分かると思うがスキル結晶のおかげだ。
スキル結晶は、結晶を割る事で、割った人にスキルポイントが付与される。スキルポイントは、基本的に、スキルを習得するためのポイントで、スキルポイントを消費する事でスキルを習得する事が出来る。ちなみに、スキルポイントはレベルアップ時にも付与される。
そして、スキルポイントにはもう一つ使い道がある。スキルポイントは、ステータスに割り振る事も出来るのだ。
ちなみに、スキル結晶1個につき、10スキルポイントが付与される。
そして、ステータスは1スキルポイントにつき、10上がる。
つまり、スキル結晶1個でステータスを100上げる事が出来る。
今回俺は、スキル結晶を1000個割ったので、10000スキルポイントを付与された。
そして、スキルポイントでは上げることの出来ない、運以外の7つのステータスに1000スキルポイントずつ割り振った。
その結果、FLOに、運以外の全ステータスが10000を超える化け物が誕生した。
うーん。少しやりすぎたかな?
俺は自分のステータスを見て今更ながらに考える。
とりあえず宿屋をチェックアウトした俺は、冒険者ギルドの本部を目指した。
本部は、様々なギルドをまとめる所で、本部の承認を受けたギルド(公式ギルド)や冒険者は、国からのクエストを受けることが出来る。国からのクエストは、通常のクエストに比べて難易度は高いが、多額の報酬と地位が約束されている。
一方、承認を受けていないギルド(野良ギルド)や、冒険者が受けられるのは、一般のクエストで、大体が個人からの依頼で、良くても貴族からの依頼になる。他にも、公式ギルドに所属する冒険者や、本部から承認された冒険者は、宿代や医療費が半額になる特典まで付いて来るので、野良ギルドや未承認の冒険者はほとんど居ない。
居るとしても、公式ギルドになって監視が付くのを嫌う犯罪者ギルドや、不特定多数の人が集まる所が苦手な冒険者ぐらいだ。
ちなみに俺は後者だ。日本に居た時は、クラスメイトから嫌われていて、班に別れて行動する時はいつも最後まで残って、それでもどこの班も入れようとはして来ない。最終的にはくじ引きになる事が多々あった。
そんなこともあって、グループを作って行動するのは苦手だった。
ギルド本部に着くと、中はどんちゃん騒ぎだ。昼間から酒を飲んでいるやつも居れば、大道芸をしているやつも居る。
「おい、お前、天谷か?ちょっとこっち来い。お前だよ、後ろ振り返るなよ、わざとやってんだろ。」
関わりたくないからわざと知らないふりしてたのに、面倒なやつと会ってしまった。