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金の力

 アリスが消えた後、広場に居たプレイヤーのほとんどは、何が起こったのか理解出来ていないのか、その場に立ち尽くしている。


 ただ、例外もあり、この場を離れていくプレイヤーも居た。恐らく、このまま時間が過ぎるのをただ待つ。ということは愚策だと考えたのだろう。俺も、人ごみをかき分けて歩き出す。


 俺が目指している場所。そこは今、俺が居る国、ガレアの中央市場だ。


 ガレアは、七つの大陸に創られた国の中で、最も規模が大きい国だ。


 理由としては、近くに海があり貿易がしやすい事、石油や石炭などの天然資源が豊富である事等が主なのだが、一番の理由は自然に人が集まる場所だからだ。


 なぜ人が集まるのかと言うと、プレイヤーがFLOを始めるにあたって、一番最初に訪れる国がここ、ガレアなのだ。


 始めたばかりのプレイヤーは、レベルを上げたり、お金を稼いだりするために、しばらくガレアに留まる。


 そして、中・上級者プレイヤーは、初心者プレイヤーを自分達の所属しているギルドに勧誘するために、さらに多くのプレイヤーがガレアに集まり、その多くが、ガレアをギルドの拠点として活動している。


 そのため、ガレアは様々なプレイヤーやNPCで溢れており、ガレアの中央市場もFLO最大規模の市場である。


 中央市場では、他では買えない様々な武器やアイテム等が数多く売られている。


 今回、俺が来たのは、ここでしか買えない上に、数量に上限があるレアアイテムを入手する為だ。


 しばらくして、俺は中央市場に着いた。


「いらっしゃい!良い武器そろってるよ!」

「獣人の奴隷はいかがですかー」

「安いよ安いよーお土産におひとついかがですかー」


 市場に入ると同時に、商人達の声が響き渡る。


「そこのお兄さん!この武器買わないかい?安くしとくよー」

「いや、遠慮しとくよ。」


 こんな風に声を掛けられる事数回、ようやくお目当てのお店に着いた。


 店に入ると、70歳ぐらいの老人が1人で経営していた。客は俺以外には誰も居ない。


「おや?いらっしゃい。こんな老いぼれがやってる店に来るなんて随分物好きだね。」


「いやいや、じいさんの目利きの正確さは折り紙付きだからな。」


 そう、俺は閉じ込められる前からこの店にはお世話になっている。


 まあ、向こうはボケているのか、そういう仕様なのか、俺の事は覚えていないが…


 とにかく、本題に入る。


「スキル結晶は何個置いてある?」

「スキル結晶なら1000個程あるが…」

「今後の入荷予定は?」

「何ともいえないな。元々レアなアイテムじゃし、乱獲された事で採取できる場所も少なくなっておるからの…」

「じゃあ、全部貰おう。」


 1000個と聞けば、多いように聞こえるが、FLO全体で1000個と言うことだ。プレイヤーが少なくとも4000人を超えるこのFLO内で、1000個という数は十分に少ない。スキル結晶は現時点で、ここ以外の店では購入出来ないし、入手場所も特定されていない正真正銘のレアアイテムだ。

 俺は在庫全てを買うことにした。


「あんた気はたしかか?スキル結晶は一個10万ルピーするんじゃぞ!?それを1000個ということは1億ルピーじゃ。そんな大金を一般人が持ってる訳…」


「それなら大丈夫…ほら、支払い完了だ。」


 俺はクレジットカードから1億ルピーを支払う。ちなみに、ルピーとはFLOの通貨単位で、1ルピー=1円だ。


「1億ルピーの入金を確認しました。」


 機会のような音声で、入金確認のアナウンスが狭い店内に鳴り響く。


「こんな大金をあっさり支払うなんて…あんた、何者じゃ?」


「ただの冒険者だよ。」


 スキル結晶の他に回復薬等の戦闘で必要な道具一式を揃えた俺は、呆然としている店主に見送られながら店を出る。

 1億か…結構したな。

 なぜ1億もの大金を持っているかと言うと、この前、ちょっとした臨時収入が入った。

 まあ、大体予想は付くと思うが、家族の遺産だ。


 前にも話したが、俺以外の家族は全員事故で死に、家族が残していた遺産が丸ごと俺に入った。その中でも特に、親父の裏金がヤバかった。親父は政治家をやっていたんだが、その時にため込んでいたであろう1億円程の裏金が親父の部屋に隠されていた。親父は、周りから凄く信頼されていたから、裏でこんな事やってたなんて家族である俺も知らなかったし、多分他の家族も知らなかったと思う。


 そんな訳で、俺はFLOに2億近く課金してある。

 いや、現実で使えよ!と思っている人も居ると思うが、俺は高級車(親父の車)も、家も既に持ってるし、使い道が無かったからFLOをお金の力で無双しようかなと思っていた時にこの事件。

 正直、出来過ぎていて怖いぐらいだ。


 ふと辺りを見渡すと空は暗くなり始めていた。


「適当に宿屋探すか…」


 俺は、目に付いた宿屋にチェックインして、夜を明かすことにした。

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