魔法少女 輝火花火
不毛な会話を、次々と繰り出す二人からは、少し視点を外す。
同年8月18日--富山県--下新川郡
少女は、目覚めた。
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照りつける太陽に、青田がきらめく天気のいいこの日、輝火 花火10歳
は、雑草の刈られたあぜ道を歩いていた。
黒いゴスロリ衣装で....
目的もなくふらふらと。
手ぶらでとぼとぼと。
「うちも“あいが”(あんなのが)ほしいっちゃ~」と富山弁でひとりごと。
昨日友達が、新しい自転車を買ってもらっていたので、羨んでいるのだ。
「いい加減、うちもこうて(買って)ほしい....」
花火は、1年前に一度自転車を購入してもらって以来新たに買ってもらっていない、故の不満だ。
ふらふらと、歩き続けること15分
花火は、暇な時、悩んでいる時、怒られた時、に”ここ”北陸新幹線の工事現場を見に行くことにしている。
高く大きく太い柱、そして中に浮かぶように在る巨大な線路、花火にとってそれは、いつ見ても飽きない光景だった。
線路の上に....人影? 太陽の光を背から浴びた人影は、飛び降りるかのように、しかしゆっくりと飛ぶかのように落下してくる。
タンッ”っときれいな音を立て着地する。
ビジネススーツを着た長身のメガネ男、彼は、空桐 浪人と名乗った。
いかにも仕事ができそうな身なり顔達にも関わらず、ろうにん(浪人)とは、かわいそうな名前を付けられたものだ
「やあ お嬢ちゃん はじめまして」
見上げるほど上空から落ちてきた空桐に対して、混乱することも、怖気づくこともなく花火は答える
「あんにゃ誰けぇ?知らない大人とお話しちゃだちゃかんって言われたから、話しかけないで」
すたすた、と歩いて帰ろうとする花火
「ちょっと 待ってよ お嬢ちゃん いいものあげるからさー」
「いいものって何けぇ? 自転車でもくれるが?」
「いやいや、もっとも~っと いいものだよ」と言い、黒いビジネスバッグから赤い石を、それも緋秀や、伊令が手に入れたものより大きめの石を取り出した。
「きれいな石やちゃね。これくれるが?」
子供のとって、かわいい カッコイイ 綺麗 といったものは、単純であるが何よりも好奇心を刺激されるもので、花火には、知らないおじさんと話してはいけないと言う、母親との約束を破ってでもほしいぐらいに、物凄くきれいなものに見えた。
「あげるよ。ただしおじさんのお願いを聞いてくれたらだけど」
「たのんこっちゃ? 何けぇ?」
「おじさんと一緒に、暮らさないかい? ほしい物ならなんでも買ってあげるし、好きなものなんでも食べさせてあげるよ。お嬢ちゃんみたいな、変わった子は、おじさん大好きだからね」
花火は、考える間もなく答える
「ええっちゃよ。自転車こうてくれるなら」
「よし。契約成立だね。はい。お嬢ちゃん」
石を手渡す空桐、受け取った瞬間---痛みはなく悲鳴も無く
花火の体に溶けるように入り込んでいった。
「あぁ 無くなったっちゃ....」残念そうにつぶやく
「無くなってはないよ。お腹を見てご覧」
コスチュームをめくってお腹を見せる。
そこには本来あるはずのないモノがあった。
へその部分に、綺麗に磨かれたルビーのようなものが....
そして彼女の左てのひらには、目があった。
だが目玉は半部以上まぶたが閉じた状態だった。
「綺麗っちゃね~」
新たな異能使い 輝火花火
【森羅万象】の能力を持つ魔法少女が誕生した瞬間だった。
富山弁の少女が登場しますが、私自身富山弁についての知識が、ほとんどありませんので、間違ってるよ。って方は、お教えお願いします