はじめの死者
第五話「利用的計画」に伊令にの描写を少し付け足しました。
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カラオケルームの首切り事件から2日経った。
----8月22日
俺は帰る家をなくした、と言うよりは捨てたので、しばらくの間、いやもしかすると、ずっとになるかもしれないのだが、伊令の家に住み込む事になった。
都合の良いことに、伊令の母親は不倫して離婚したらしい。
父親は、家に居ることは居るのだが、世間に公表できなほどの研究をしている自称マッドサイエンティストらしく、離婚して以来、自分で地下に研究室を作り、極稀にしか姿を現さないらしい。
昨日から住み込ませてもらうことになったのだが、幸か不幸かは、現状判断できることではないのだが、かのマッドサイエンティストのお父様に遭遇してしまった。
風呂に入っている時に、しかも伊令と二人で入っていた時にだ。
常磐家は、どうやって生計を立てているのかは定かではないが、結構な豪邸で風呂も大理石で作られた言わば、温泉施設そのものである。
この際そんなことは、どうでもいいのだが、入浴中に突如、檜製の扉が『キキィ....』と音を立てて開いたのだ。
消去法的に、入ってくるのがお父様だと見きった俺は、すぐさま湯船に潜り身を潜めた。
薄紫色の長い髪を丁寧に洗っていた伊令は、「ちょっとおとうさ~ん のぞかないでよ~」と泣きそうになりながら言う。
「おぉ 久しぶりだな いーちゃん ソーリー ソーリー。デンジャーなまでの生命エネルギーを感知したんだがな おっかしいなー 故障かな?」と言って引き返していった。
引き返したのが分かった俺は、湯船から浮上する。
「ぷは~ あっちー」
少しばかりのぼせてしまった俺は、湯船からすぐさま退散した。
その瞬間---『バターン』と扉が勢い良く開けられた。
「オオオオオオオー ェェェェエクセレント!生命エネルギー反応18000メガガウス超えたアアアアー なんだこれ~!!!! ってお前誰だこれ~!!!!」
あまりのテンションの高さにおかしな日本語を使う、自称マッドサイエンティストが現れた。
スラリとした長身、ぼさぼさの白髪に白衣、そして丸メガネ、見た目はテンプレ科学者。
顔は、少し痩せているように思うが美形だ。
[お父様とは、到底思えない]見た目だ、お兄さんだ、と言われても信じてしまうかもしれない。
でそのお父様は、両手でラジコンのコントローラーの様な物をもち、俺とそのコントローラーらしきもの、(察するに、生命エネルギーを測るものなんだろうが)を高速で交互にチラチラ見ている。
「YOUは一体なんなんだね!....いやまあ なんでもいいか------それよりYOU!」
お父様とは、到底思えない、と言ったのは、ある意味あっていたのかもしれない。
「YOU! お願いだ。被験体になってくれ!」
と全裸の俺にすがりついてくる....マッドだ。
「おとうさん!! いい加減にして!」
と飛んできたプラスチック製の風呂桶がメガネにクリーンヒットした。
この不運にも不幸な出会いが、後に『幸』となることを、緋秀はまだ知らない。
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8月22日夜
某県 23時頃
山奥 木が生い茂る、真っ暗な山肌を、泣きそうに必死に誰かから逃れるように走る一人の女性。
「ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ」
「逃げたって無駄だぜぇ 」
男は、追いかける
「キャ!! 嫌嫌嫌ぁ 止めて 来ないで!」
木の根に躓き動けなくなった女性に、男は詰め寄る。
「はっ手間かけさせやがって、能力持ってんだろ? 戦おうぜぇ なぁ」
「イヤイヤイヤァ~ 来ないでっ 来ないでよぉ」
女性は、恐怖に震えパニックを起こしている。
「ちっ つまんねぇなぁ 戦わねぇなら死ぬしかねぇよなぁ あぁ?」
そう言い男は、右手を女性にかざす。
「!『ホールド』! 」
先程まで震えていた女性は、石にされたかのように固まる。
そして男は、落ちていた大きめの石を掴み、顔面を力いっぱい殴りつける。
鈍い音と共に、鮮血が飛び散る。
女性は、叫び声を上げることも、痛みに叫ぶことも叶わず、ひたすらに殴り傷めつけれ、そして殺された。
「やっと見つけた能力者だってのによぉ もうちっと 楽しませてくれよなぁ」
と言い放ち、男は山を降りようとする。
「「ストーップ」」の声とともに木の影から、金髪の少年が現れた。
「ダメじゃないっすか こんなにしちゃ これ人殺しっすよ?」
「だっ誰だ! ナニモンだ」
戸惑う男。
「ナニモンって言われても特に名乗る筋合いもないっすからね まあ敢えて言うならば『正義の味方』っすかね」
「わ わらわせんなよ お前に何ができるってんだよぉ」
「なにもする気はないっすよ。ちょっと『プレゼント』をあげようと思っただけっす」
と言い金髪の少年は、男に手のひら大の、赤いリボンのついたボックスを男に投げる。
ちょうど男の手に吸い込まれるかのように投げられた箱。
「どういうつもりだぁ? 」
「まあまあ 開ければわかるっすよ どうぞ」
始めは動揺していたものの、今となっては、全く警戒していない、それどころか余裕を見せている男は、素直に箱を開ける。
----刹那 男の姿が消滅する。残るものは、何もない。
「あ そういえばいい忘れてたっす。それ『プレゼント』って名づけた僕の異能っすよ 対象の『罪』の多さで効果が変わるんすよ。 今回は最高ランクだったみたいっすね ま、もう死んじゃったみたいっすから 今更なんすけどね」
死んだ(殺した)相手に対してと独り言。
「は~もうこんな時間。 眠たくなってきたっす 帰ったら真樹雄さんに報告しなきゃっすね。」
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異能者生き残り22/24人
二名GAMEOVER
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