遊部止前(ラストワン)
遊部止前の生活サイクルは以前よりやや特殊になっている。
「くぅ……くぅ……」
止前は長椅子の上で毛布にくるまって寝ていた。
今、彼が寝ている部屋にはベッドも布団も置いているが、滅多に使うことはない。彼曰く、「長椅子が一番安心できる」らしく、ベッドはテーブル、布団は絨毯代わりに使われている。
するとムクリと突拍子もなく彼は起きる。
「……んぅ~……あの夢が現実だったら1000万手に入ってたんだけどなぁ~……」
彼は低血圧らしい。ありもしないことを愚痴りながら部屋を出てそのまま洗面所まで歩を進める。
やがて洗面所に着くと鏡を見て
「うん……今日もイケメンで1日が明るい!」
少し不明な自画自賛をする。でもそれはあながち間違いでもない。
全体的にキリッとしてるがどこか優しそうな雰囲気のある端整な顔。少し茶色がかったショートの黒髪は寝癖がかかっているがそれでも様になっていた。
うんうんと自分の顔に見惚れていた。だがハッと気付き、すぐに本来の目的を果たそうと蛇口を捻るが
「あっ、そういえば水出ないんだった」
ミスを犯す。しかしすぐさま洗面台の下をあさり
「でもバケツに水を汲んでました~~!!」
…………静寂が洗面所全体を支配した
「……うん、こういうのは止めよう。何ていうか……虚しい」
止前は洗面所を出るまで終始無言であった。
―――――――――――
それから止前は朝支度を終え、玄関に向かっている。
彼はこれから日課としているジョギングをやろうとしている。以前の彼ならばジョギングどころかウォーキングすらも滅多にやろうとしなかった。ジョギングも高校時代に彼が友人に付き合わされてやった以来だ。なぜ今になってやりだしたか。これは彼曰く、「単なる暇潰し」らしい。
「さて、と、そろそろ行きますか」
そう言ってる間に準備が出来たようだ。
「まあ誰もいないけど、いってきま~す」
そして止前はドアノブを回しドアを開けた。
だが目の前の光景は彼の今までの言動、雰囲気とは全くかけ離れていた。
最初に飛び込んできたのは死体だった。といっても人間の死体ではない。半分以上が崩れてるが目測でも10m程もあるまるでクレヨンで書きなぐられた落書きのような異形の化物だった。
だがその異形だけでない。周りは同じような異形や絶対に存在しないような怪物の死体が転がり
絵の具をぶちまけたような色彩の建物が所々に建っているが派手な色の隙間からはぬいぐるみのようなものが外を覗きこんでおり
空も建物同様数え切れない種類の色がそれぞれ散りばめられていてさらにその中に図上遥か高くから建物にぎりぎり触れるぐらいの高さまでに愛らしい顔をした星が無限に浮いていてさらにその間を不気味な顔をした太陽と月が縦横無尽に動き回り時々巨大な口で星達を飲み込んでいた。
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