第八話 レインとシリア
「あ〜 くそっ
あいつ見つけたら殴ってやる。
アイツのせいで金ヅルは死んじゃうし、お気に入りの服は破れるし、しかも領主殺した犯人にされるし」
シリアは街中を走っていた。
遠くから
「あっちに逃げたぞ〜」などという声が聞こえてくる。
「あ〜もう」
焦っていたシリアは曲がり角から現れた人影に気が付かなかった。
鈍い音が響きシリアは尻餅を着いた。
「いたたた」
「大丈夫か?」
尻餅を着いているシリアに手が差しのべられる。
「すみません。ちょっと急いでて」
そこでシリアは相手の顔に見覚えがある事に気付いた。
「あ〜アンタは」
「ん?お前昨日の」
シリアの目の前にレインがいた。
「アンタのせいでアンタのせいで〜」
シリアがレインの胸ぐらを掴みゆさゆさと揺する。
「おい落ち着け。
そして周りを見ろ」
「落ち着いてられるか〜」
「いいから見てみろ」
レインはグキッと音を立ててシリアの顔を横に向かせた。
横を向いたシリアの目の前には男達が立っていた。
「……」
「……ニヤッ
捕まえろ〜」
シリアは一目散に逃げ出した。
「おいお前、ちょっと付き合ってもらおうか?」
レインにも警官が声をかけた。
「は?」
「アイツの仲間かもだろ」
「いやいやいや。それはないでしょ」
「問答無用かかれ!」
そうしてレインもシリアの後を追って一目散に逃げ出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
二人は街の外まで走り抜けた。
「……なんで俺まで」
そう呟いたレインにシリアは食ってかかった。
「元はといえばアンタのせいでしょ。アンタがあのオッサンを殺さなかったら今頃……ハァ まあいいわ。その代わりに私にあなたの魔術を教えてよ」
「なんで俺が。面倒だ」
そう言ってレインはスタスタと歩いて行ってしまう。
「ねぇちょっと待ってよ」
シリアはそれを追って行く。
奇妙な二人組の旅が始まるのだった。
第一部は中途半端ですがここまでです。
第二部では1年後、一緒に旅を続けたシリアとレインが……
という予定です。
いつ書くかは未定です。第一部の訂正をして、少し違う作品を書いてからの投稿になると思います。