第四話 宿命の闘い
「う〜ん。何処まで跳んで行ったのかな?」
フレアは走りながら呟いた。
「まさか、さっきので終わってた?」
しかしフレアの言葉を否定するかのように炎の玉が後ろから飛んで来る。
「甘いっ」
そう言ってフレア炎の玉を拳で払った。そして姿を見せたアリスの方を見る。
「さて、私に何の用があったの?」
「……」
「黙ってないで答えたら?」
「目的は……お前を殺す事だ」 アリスはボソッと答える。
「どうして?」
「言う必用がない。これを見れば分かるだろ」
そう言ってアリスはフードを払って白い髪と紅い瞳が現れる。
「……成程ね。“ゴーゴン”か」
「もう話す事は無いな」
アリスはそう言うと手に魔力を集めた。すると僅かに赤みを帯た刀身を持つ長刀が現れる。
「覚悟しろ」
フレアはため息をしながら肩をすくめてアリスに微笑む。
「私があなた程度に負けると本気で思っているの?」
フレアとアリスの殺気により急激に辺りの空気が引き締められていく。
数瞬後、アリスがフレアに切りかかった。スピードも太刀筋も完璧。その刀は避けられない。そして先程の様にシールドを張る間も無い。アリスは勝ちを確信した。しかしアリスの刀がフレアを切り裂く事は無かった。
「成程、得物も腕も一級品ね」
フレアは魔力を込めた手の平でアリスの刀を受け止めていた。
「なっ……」
呆然とするアリスを弾き飛ばし怪しく笑う。
「でも…私には届かない」
フレアは手を振ってアリスを弾き飛ばす。
アリスは後ろに転がって衝撃を殺す。
「流石は“真紅の死神”だな」
顔を上げたアリスが言う。それを聞いた瞬間フレアの眉が上がる。
「その名前はもう捨てたわ。幹部の椅子と一緒にね。今の私は只のフレア」
「そんな事が許されると思ってるのか!?
お前に普通の生活を送る権利があるとでも?」
アリスは刀の切っ先をフレアに向けて叫ぶ。
「資格とかそういう問題じゃないのよ。
私は決めたのよ。
普通に生きて行くってね」
「そんなの只の我が儘だ!!」
「違うわ。こうありたいという意志よ。
だから」
フレアは今迄とは比べ物にならない魔力をその手に宿らせる。
「邪魔する奴は容赦しない。
例えそれが私の生み出した命であっても」
そして力を開放
辺りは白い光に包まれた。
しばらくして光が収まり一人の人影が見えた。風で赤い髪がなびいている。
「ゴメンね……
本当は私が犠牲になるべきなんだろうけど……」
「良く分かっているじゃないか真紅の死神。いや、フレアだったか」
フレアの後ろに急に現れた気配にフレアは跳びすさる。
「しかし、哀れなり。平和がお前を弱くした。
それでは何も守れないというのに」
フレアの背後に現れた長く黒い髪を持った男は独特な口調で呟いた。
その姿を確認したフレアは目を見開く。
「お前……何故 生きている?」
男は何も言わずに只微笑んでいる。
「何故生きていると聞いている!!
答えろ!!
クロウ!!」
「フム 確かに君達の奇襲によって私は死にかけた……
しかし死んではいなかったんだ。
君達は昔から詰めが甘い。
それが私を生かした。感謝をしておこうか」
フレアはクロウの嫌味に唇を噛み締めた。
「今日は、この娘を引き取りにきただけだ。このまま退かせてくれないか?」
肩に乗せたアリスを顎で示しながらクロウは言った。
「逃がすわけ無いでしょ。お前に殺られた仲間達の思い……
今ここで」
クロウは仕方ないとアリスを降ろすとフレアに向かい合った。
「仕方ない力の差を見せてやろう」
宿命の闘いが始まった。