Chapter 1未来錯誤 03 マッド・サンダー
03 マッド・サンダー
8インチ程の小さなモニターに映し出されたのは
ヘリオスベース滑走路の管制官であった。
「モンランム専属特Aソルジャー、ジョー・クレンナ
登録形式ソ・リアテック77式BHVT-01戦闘ヘリ、コード名称“マッド・サンダー”
発進の許可をする。」
「了解、オールグリーンだ。」
重量感のあるパイロットヘルメットをかぶり、パイロットスーツに身を包んだジョーが
マッドサンダーと呼ばれた戦闘ヘリのコックピットから管制官に向かい口を切った。
「ターゲットポイントの、データ送信を頼む、」
マッドサンダーのメインローターがゆっくりと回転し始めた。
メインローターの回転数が上がってくると共に
テールローターも回転を始め、空気を切裂く音がしだいと大きくなっていった。
「本出動は特別許可になり、貴方が作戦に参加することによって
得られるクレジットは0です。」管制官が冷徹にいった。
「百も承知だ。」
ジョーが答える。
「武器弾薬の燃料等の消費も自己負担になります。お忘れなく、」
少し間をおいて、表情を和らげた管制官が
「本作戦に参加する理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「野暮用だ!」
と吐き捨てるようにジョーが返事を返した。
「発進する!!」
それ以上管制官に質問させまいと、スロットレバーを一揆にあげ
ジョーはマッドサンダーの機体を上昇させた。
ブラウニー戦闘ヘリが数十機並ぶ発着デッキから
マッドサンダーは対地用の重装備を施し夜の空に飛び立った。
待機中のブラウニー戦闘ヘリを照らしていたスポットライトが
マッドサンダーの方に向きを変え照らし出し
発進を見送った。
マッドサンダーのコックピットにターゲットポイントの地理情報が送られてくると、
ジョーはスロットル脇のキーボードをカタカタとはじきコンピューターに入力を済ませた。
やがて基地管制塔のスポットライトが届かなくなり。
マッドサンダーのヘッドライトと、識別灯が暗闇の夜空に浮かんだ。
ソ・リアテック77式BHVT-01戦闘ヘリ、コード名称“マッド・サンダー”は
ソ・リアテック社の研究機関で、特殊オーダーにより開発された。
モンランム社の“レジアス・ウルティマ・トライセルプロセッサ”(モンランム社外非売品で社内でも管理者クラスでしか仕様できない)を
それを制御コンピューターに搭載した世界でたった一機(生産コストが非常に高価なため)の重装備可能な多目的戦略ヘリである。
縦列複座式、機種下方に機種前面に取り付けられたカメラと照準機で適格に目標物にヒットする3連砲身回転式40mmガトリンクガンを装備、
砲後方にガトリンクガン弾3万弾ストック庫を備え付可能
コックピット前席両脇下部とコックピット後席後方両脇に可動式ジェットエンジンを計4機搭載、長距離の高速移動が可能で、ジェットエンジンの可動により恐ろしく急激な小回りも実現
前部ジェットエンジンの給気口上部ら、棒状の特殊ソナーが前方に向けて張り出し、索敵能力に丈けている。
コックピット後席側面から張り出した両翼には各種ミサイル。爆雷。ミサイルポッド。長距離遠征用の予備燃料タンクなどが装備でき、両翼端には各種サイドワインダーを3機、計6機登載
後部可動ジェットエンジンのカバー部にグレネード弾などを装備可能
本体からテールローターまでの尾翼の下部に、後方かく乱用のブイと後方迎撃用の小型ミサイルを発射できるシャフト口が二つ
メインローターの羽は5枚と高馬力
テールローターは鋼鉄製のカバーに囲まれ
機体下部には。ラウンドモービルなど運搬用のアームが収納されている。
着陸時に必要な車輪3つは滞空時は収納可能
同クラスの戦闘ヘリではマッドサンダーの戦闘能力を上回る物はありえないといえよう
戦場では、ジョーの操縦テクニックとあいまって文字通り“狂雷”とかす。
狂雷は、おとなしく闇夜の空を東へ向かった。
「シンクロ率、拒絶反応を確認します。」
何処かのモニタールームの一室で声がした。
「サテライト1α+49.2-49.2β+43.8-52.1
サテライト2α+49.1-49.6β+43.9-52.9
サテライト3α+48.1-49.3β+44.9-51.1
サテライト4α+49.1-49.9β+46.9-53.1
サテライト5α+49.1-49.9β+60.9-59.1
サテライト6α+48.4-48.2β+59.9-49.1
サテライト7α+48.6-49.2β+53.9-49.8
サテライト8α+3.5-69.8β+83.9-0.23
全て拒絶反応0でオールクリア」
「サテライト8のみ、αに動きが見られません!」
「検体の、脳活動に見られる異常な状態が依然継続されています。」
「穴埋めするかのようにβの動きが活発になって動作、シンクロ補てんしているようにも見られます。」
モニターの明かりに照らされた薄暗い部屋の中で研究者達の声だけが響き渡っていた。