Chapter 2反抗衛星 8悪魔の咆哮
08悪魔の咆哮
すでに夜は明けていた。
森に降りたマグワとガイルはロブの後を追っていた。
ロブが通った後はすぐに分かった。
モンランム軍の地上兵器の残骸がその足跡とともに散らばっていたのだ。
「ヘッジホッグの10台20台ものともしない、なんてやつだ」
マグワがつぶやいた。
「それにあの重いトンベリをトータスを振子がわりにして、ひるがえらせた。」
ガイルがマグワにいった。
「オズに暗号で連絡を入れておこう!」
マグワはそういうと足を進めた。
マッドサンダーは遠方に地上戦艦オージアスをとらえていた。
前方上空から飛来した幾つものミサイルや砲弾がが次々とオージアス着弾し
周辺では爆発が起こっていた。
「アサー隊オージアスを目視した。援護に向かう」
マッドサンダーを追撃していた地上戦艦ビューバロックの艦載機隊はそれを見つけると
マッドサンダーの追尾をやめ、
地上戦艦ビューバロックからやってきた他のチャンバー隊と合流し
オージアスの援護に向かった。
マッドサンダーにオズから暗号が届いた。
「なに・・・、また厄介なことに・・・・」
そう呟くとジョーはマッドサンダーの進路をオージアスからずらした。
「上部甲板収納砲座全て損傷!」
「艦載機隊壊滅!」
地上戦艦オージアスのオペレーターが叫んだ。
「何-っ、まったく太刀打ち出来んのか・」
オージアス艦長は苦渋の選択に迫られていた。
「撤退をすればタピオンベース攻略は仕切りなおしになってしまう。」
「ビューバロック艦載機隊オージアスを、磁気煙で覆え!
砂丘にまで後退しビューバロックと合流して時期を待つ。」
「パルスレーザー攻略が失敗に終わればそのまま砂丘潜航して戦線を離脱する!」
とオペレーターが言うと、すぐさま他のオペレーターが叫んだ。
「トンベリビースト、パルスレーザー施設のモンランム護衛軍を殲滅!!」
「なに?・・・・・?」と言い少し考えると
「ビューバロック以外の二艦とも合流する。本艦に向かわせろ!」
「合流後体勢を立て直し反撃にうつる。」
艦長がそう叫ぶと傍らにいた参謀がつぶやいた。
「やりましたな。パルスレーザー施設の奪取も時間の問題でしょう。」
「作戦行動中の陸戦部隊、トンベリビーストのサポートに移れ」
艦長がそういうと
上空をチャンバーが数機通過し磁気を帯びた煙幕を撒き散らした。
地上戦艦オージアスは少しづつ、煙の中に姿をくらましていった。
「地上戦艦オージアス、反応消えました。目視も出来ません。」
ルシファーの艦内でオペレーターが叫んだ。
「まだ森林地帯だ。砂丘潜航は不可能、姿が消えたといえ地上を移動中だろう
行方をトレースして計算しろ、
急速接近して、上空より下部ATL砲で攻撃する。デビルズラビリンスよりエネルギー波受信体制をとれ、・・このルシファーから逃げ切れぬことを証明するのだ。」
「他、三隻の地上戦艦も接近中です。」
「構うことはない、奴らは足が遅い、集結する前に個々に叩く」
ルシファーの司令官は自信満々の顔でオペレーターに返事を返した。
「殲滅されたパルスレーザー守備軍のもとに、マッドサンダーが向うと通信がありました。」
「うむ、そちらは任せることにしよう
下腹部大口径ATL砲準備、発射態勢に移れ」
司令官が落ち着いた口調でそういった。
飛行戦艦ルシファーの4つのエンジンが大きく火を噴いた。
出力を上げたのだ。
チャンバー隊がミサイルをルシファー目がけて発射し続けているが、
隙間なく放たれる機銃掃射によって、破壊されていく
チャンバーも何機かは、機銃掃射の餌食になって爆発墜落していった。
飛行戦艦ルシファーが磁気煙のたちこめる領域に接近していた。
日は完全に上っていたので森林に煙で覆われた地帯がルシファーのブリッジから目視で確認出来た。
「地点推測計算を急げ
磁気煙の、流量、熱量、密度を入力確実に探し出せ!」
ルシファーの司令官が少し笑みを浮かべながら言った。
「ポイント確定!!」
「ポイントの上空へ移動しろ、高度1000mまで上昇!」
黙々と白い色の磁気煙の一部に目視では確認できないくらいの黒い煙の混ざった地点があった。
それは、砂漠を目指し移動していた。
飛行戦艦ルシファーの翼上部甲板から幾つものパラボラ式の鏡が現れ右翼端から左翼端にかけて一列に並んだ。
パラボラ鏡は艦首上部甲板にせり上がった大きな箱の中央に開いた穴にその矛先を合わせた。
ルシファーの下腹部の中央が直径20m程の円状に開いた。
その中心は淡いピンク色に発光していた。
衛星軌道上でデビルズラビリンスの太陽光収集板が太陽の光を地上に向け反射させるため角度を変えていった。
「ポイント到達、上空です。」
オペレーターが、地上戦艦オージアスの潜伏ポイント上空に着いたことを報告した。
「下部ATL直下砲口角最大!照射タイム10秒に設定」
司令官がモニターに映し出された森林の中の白煙を見ながらいった。
「エネルギーレベル150%」
「高度1000m維持!」
「エネルギーレベル180%、現在の大気状態では、これ以上エネルギーレベル上がりません。」
5秒照射が限界です。」
「よろしい!発射しろ!」
司令官が叫んだ。
ものすごい閃光が飛行戦艦ルシファーの下腹部より発せられた。
20m余りの口径から発射されたATLの閃光は地上に届くと600mの直径に達していた。
悪魔の咆哮のごとく!
五秒経過するとぱったりと閃光は消えた。
煙と森林に直径600mの禿げができた。木々が一瞬にして焼き払われたのだ
そして地上戦艦オージアスは艦首から約3分の2がドロドロに溶けた鉄の塊になっていた。
もはや機能を維持できる状態ではなかった。
次の瞬間艦首の3分の2を溶かしたすさましい熱量が艦尾機関部に伝わり
地上戦艦オージアスの残りの部分が大爆発を起こした。
「オージアス撃沈!!」
オージアス応援に向かっていた地上戦艦ビューバロック艦内で
オペレーターが叫んだ。
「何が、起こった?」
ビューバロック艦長が訪ねた。
「撃沈ポイントに高熱反応を感知しています。」
「大口径ATLの照射を受けた模様」
「あの飛行戦艦は
一撃で400m級の戦艦を沈めれるほどのATLを、装備しているというのか?」
ビューバロック艦長がそういうと肩を落とした。
「飛行戦艦急速接近!!」
「参謀本部より、全艦に撤退命令です。」
オペレーターがまた叫んだ。
「オージアスの陸戦部隊はどうしろと・・・」
「これ以上艦船を失うわけにはいかない
全艦直ちに、砂丘潜航して、戦線を離脱しろのことです。」
「生き残ってる艦載機軍も見捨てろと!」
艦長が苦渋の決断を迫られていたが、あまり時間は残っていなかった。
ルシファーが上空にやってこれば、オージアスの二の舞になることは目に見えていた。
「戦艦タルタロスとスカルロックが、砂丘潜航を始めました。」
「やむを得ん、本艦も直ちに砂丘潜航にうつる。
滑走路閉鎖!」艦長がそういうと
地上戦艦ビューバロックの流線型の上部甲板がゆっくりと下降し滑走路の入り口を閉じた。
「わ~~~~」
叫び声をあげるチャンバーのパイロット
補給にもどり着艦体制に入っていたチャンバー一機が閉じたデッキにぶつかり爆発炎上した。
次に着艦体制に入ろうとしていたチャンバーのパイロットが、
「ビューバロックブリッジヘ
スぺリオン11だ。まだ未着艦機が多数いる。滑走路を開放してくれ!」
「ビューバロックブリッジより出撃中の各機へ
自力で近隣ベースへ帰還しろ!」
「ふざけやがって、燃料も無いから補給しに戻ってきたというのに、
基地までたどり着けるとおもっているのか?!」
空しいやり取りが、出撃中の各機とビューバロックブリッジとの間に繰り返されながら、
地上戦艦ビューバロックはゆっくりと砂丘に沈んでいった。