Chapter 2反抗衛星 7グロリアーナの野獣
07グロリアーナの野獣
トンベリビーストは
タピオンベース第一警戒ラインを超えたところだった。
前方上空には幾つもの爆発が起こり
徐々に近づいてくる飛行戦艦を照らし出した。
トンベリはトータス改の脚部が森林の木々の先に時折引っかかりながら
超低空飛行でミサイルだの対地砲火だのをぎりぎり交わし飛行していた。
「完全に、見つかってる。なぶり殺しにされる。」
ガイルがよけたミサイルの爆発の光に照らされながらそう呻いた。
「聞いてやがんのか?おい、ノーバディー、」
マグワがトータス改に対して尋ねた。
前方に突如ブラウニー戦闘ヘリが一機現れた。
「やられる」マグワとガイルはそう思った。
図体がでかいうえトータス改をぶら下げた。トンベリの機動力では
ブラウニー戦闘ヘリの機動力にかなうはずなかった。
「誰のことだ?」とマグワの質問に質問をぶつけながら
ロブはトンベリの機体を大きく傾け
ブラウニーヘリからの攻撃をかわしブラウニーヘリとすれ違った。
とすぐさま、トータス改の左手が後方に向きその手に構えたガトリングガンを掃射して、ブラウニーヘリを撃墜した。
「うお、あぶね~、てか、お前に聞いてんだよ!」
マグワが傾いたコクピットの中で叫んだ。
「俺は、ロブだ、ロブ・キンスキン、ノーバディーなんてやつじゃない」
とマグワの質問に答えると目の前の森林に向かってガトリングガンを掃射した。
木々に隠れていた。ハンターKF-BOT058クウァッシュ(AIを組み込まれた無人のロボット兵器)
二体に命中し爆発した。
「あんなとこにハンターがいやがった!」
マグワがそう叫んだ。
「ハンターは前衛だ。間もなくラウンドモービルやらがうろちょろ出で来る。」
ガイルがいった。
「ラウンドモービルを確認したらタッチダウンする。」
トンベリはその後全ての爆雷を投下して引き返せ!」
ロブが叫んだ。
「まさか、ラウンドモービルの群れの中に降りる気か?」
マグワがいった。
「手前で降りても通り越して降りても同じことだ。背にして戦うか前にして戦うか・・・」
ロブが森林の中に何かを見つけた。
「ならば、ど真ん中に!」
とガントリーを解除した。
トータス改を切り離し軽くなったトンベリが少しふわりと上昇したが
ガイルが慌てて戻ってきた操縦系をコントロールし全ての爆雷を投下した。
ロブの乗ったトータス改が木々と
ラウンドモービル“バルファウム社制 ヘッヂホッグBHXR-1676”十数台の真ん中に
ドスーーーーンと音を立てて着地した。
ヘッジホッグのパイロット達は一瞬何が起こったのか分からず。
唖然としたがすぐさまトータス改に向け銃口を向けた。・・・が
それより早くトータス改のガトリングガンが掃射され数台が一瞬にして犠牲になった。
残りのヘッジホッグが体勢を立て直そうとしたその瞬間、
周辺に爆発が次々と起こり混乱と火炎のうずにのみこまれてしまった。
トンベリからの大量の爆雷が着弾したのだった。
辺りは一瞬で火の海に変わった。
火の海の中でガトリングガンや機銃掃射ロケット弾の発射音が幾度となく響き渡った。
「トータスを黙視できない、どうなってる?・・・奴は無事なのか?」
少し距離を置いたトンベリの中から燃え盛る炎をみつめてマグワが言った。
「ああ・・おそらく・・・周りのヘッジホッグは全滅しているだろうよ・・」
ガイルが答えつづけた。
「どうする?マグワ、ずらかるかい・・・・追うかい?
グローリアーナの野獣を・・・・・・」
「グローリアーナの野獣?」
マグワが驚いてガイルの言葉を繰り返した。
「さっき名前を聞いてピンと来たんだよ
ロブ・キンスキン、ギディオン社専属の特Aソルジャー
2093年のグローリアーナ攻防のギディオンの大英雄だよ!」
めらめらと燃えあがる炎の中からロブの乗ったトータス改がゆっくりと出てきた。
先ほどまで自機に装備されていなかった。ヘッジホッグの武装を幾つか携えて、
「あらゆる兵器を自在に操り!グローリアーナ攻防ではギディオン劣勢の状況下の中!!1個師団を相手に民間人十数名を守り抜いた。
奇跡的戦闘能力と強運の持ち主だ。」
とマグワが説明した。
燃えあがる火炎の中ロブはつぶやいた。
「100%不可能なことには手を出さない、しかし99%不可能なら話は別だ
1%にかけてみる? そんな子供じみた真似はしない
1%の状況を生み出せるように即座に時間をかけず考えて考え抜く
考えても無駄なら1%の状況に事態を導いていけばいい!
作り出すのさ、あらゆる方法を用いて1%の結果への道を・・・
道がないのなら0%ってことだろ、1%なら何処かに道はあるのさ!
俺は運がいいのではない 、ただその道を探すのに長けているだけだ。」
「お~、お~、言ってくれるね!」
マグワが呆れたよう言った。
「こんなの、探していたというのか?スカイ・ジョーは・・・」
「どうするマグワ、ずらかるかい・・・・追うかい?」
ガイルがまた同じ質問をした。
「お前はどうしたいんだよ」
マグワが質問で返した。
「このまま飛んでても、こいつ(トンベリ)では、たぶんこの戦域をきりぬけれない」
「降りて、丸腰で、奴の後を追ってみないか?」
「確かにな、このままじゃ落とされるわな、」
「それにスカイ・ジョーに絡んでグローリアーナの野獣にもからめば」
ガイルが後席のマグワに振り向いてにやりとした。
「女にもてる・・」
「いうと思ったぜ、よっし、お前の意見にのっかってやる。」
着陸ポイントを探そう!」
相変わらず安直な二人であった。
軌道エレベーターの中央コントロール室で軍務総監がモニターに向かって叫んでいた。
「非常事態宣言です。サテライト8の検体が全て脱走しました。」
モニターには評議会の面々が映し出されていた。
「所在は?脱出経路はトレースできたのですか?」
モニターの向こうで評議長が、衣装を整えながら言った。
「それが、各監視カメラのHDD映像を及び
赤外線探知、熱感知データを確認してはいるのですが一切痕跡がなく」
評議長が襟を正しながら
「自分達のアビリティに気付いているようですね。」
といった。
「はっ、警報も一旦は発信できたのですが!すぐに閉鎖されて
警備員への連絡配備もままなりません、軌道エレベーター塔は
クーデターに匹敵するレベル状態に置かれています。」
「このやり取りも聞かれているかもしれませんな!」
評議員の一人が言った。
「通信回線にシールドを掛けました。専用回線であればしばらくは大丈夫かと」
「現在もシールドをかけた回線でのみ警備員に連絡を
以後は直接伝達のみ、装備もアナログ装備に切り替えています。」
軍務総監はそういった。
通信回線にシールドとかけるとは、ある一定のプログラムで外部からのアクセスをロックさせることだが、
プログラムを解析されてしまえばロックも解除されてしまう。
「サテライトの検体が、レジアスを脱出して他社の手に渡ってしまうことだけはどうしても避けなければなりません。」
評議長がそういうと
「地球をまず、つくるべきだったんじゃないかね、月から先に作っても
引っ張っておく引力がなければ、離れて行ってしまう。」
一人の評議員が苦笑いをしながら口をはさんだ。
「今は、先のことを考えるのが先決ではないのかね、
後小事を振り返っても意味はない!」
他の評議員がくぎを刺した。
「一刻も早く見つけ出してください
捕獲が難しいのであれば、見つけ次第処分も認めましょう?
予備のサテライトもすでに準備は出来ています。」
評議長が決断を下した。
軍務総監が
「マザーレジアスは彼らと干渉出来ないのでしょうか?」
評議長が答えた。
「マザーレジアスにつながる回線は有線無線を合わせると無限に近い数あります。」
「ある一定のラインまでは完全防御出来ているようですが、
防御枠を広げて穴をあけるわけにはいかない様です。
サテライトの人数が減れば少しばかりの余裕が出来ると思うのですが・・・」
間をおいて
「少し疑問があるのですが?・・・次の段階での教育を受けていないサテライトが
独自で行動を起こしたようには思えません。
首謀者がいると思いませんか?軍務総監!」
軍務総監はモニターの中の評議長を見すえた。