Chapter 2反抗衛星 6ルナ08β
6 ルナ08β
Drギルモンがベルモットを引き連れてモニタールームにやってきたときには、
モニターはすでに全部回復していた。
エンジニア達に報告を受けたレベッカが近寄ってきた。
「ウィルス的な何かプログラムが働いたようで、一時的にモニターの管理コンピューターがフリーズしてしまったようです。
カメラの方は正常に作動しておりHDDにも異常はありませんでした。」
「ルナ01~08の様子は、モニターが消える以前の映像もチェックしましたがなにも変化はありません」
「08は相変わらず椅子に座ったままですが、01~07は皆眠っていました。」
ルナ01が手を振ったり起き上がってカメラを見つめた映像はそこから消えていた。
Drギルモンがモニターを見渡し何かに気付いた。
『始まっている。・・・・しかも全員に、・・・・大きく仕掛けたな』
心の中でつぶやいた。
「どうかしましたか?Dr」レベッカが不思議そうな顔をしてよってきた。
「いや、なんでもない、それより明日は最終調整だ。寝床に戻るとしよう」
と部屋を出ようとして、立ち止まりレベッカに質問した。
「いややはり、08の様子が何か変に感じなかったか?」
あえて、先程博士が感じたことと違うことをレベッカ問う
「いえ~、そんな感じはしませんでしたが、」
レベッカが答えた。
「ベルモット、警備員を向かわせて様子をみさせてくれ
あ~報告は朝でよいから!」と頭をかきながらいった。
「はい、わかりました。」ベルモットが答えた。
「眠気が飛んでしまったようだ。外に出て風にでもあたってくるよ」
というと、Drギルモンは部屋をでた。
ルナ01はすでに気づいていた。
ルナ02~07も、自分と同じような夢を見ていて同じように白い人間に会い
同じようにルナ08を助けたいと思っていることを、
頭の中には先ほどのDrギルモン達のやり取りが映し出されていた。
警備員がルナ08のもとに向かう!
『ひどいことをしに行くのだ』そうおもった。
様子を見させろとDrギルモンはいった。
よく聞けば様子を見るだけであるはずなのに
なぜかひどいことをしに行くように思えて仕方なかった。
頭の中にルナ08の部屋の画像と警備員室の画像が映った。
一人の警備員がモニター室からの連絡を受け装備を身にまとい部屋から出た。
警備員室の画像は警備員室の入口のある廊下の画像に切り替わった。
やがて、警備員がエレベーターに乗るとエレベーター内の画像に切り替わった。
あと二つ画面が浮かびあがった。ルナ08のいるフロアーのエレベーターの扉が
その二つの画面に同じアングルで映し出された。
映像はまた増えた。
ルナ08の部屋までに行く通路と、ルナ08の部屋の入口のドアを映した画像だ。
各々二つづつ、まったく同じ映像が3組
頭の中に浮かんだ
まるで、あのモニタールームに並んだモニターのように
ルナ08の部屋の中の映像が4つに分かれた
部屋の中に配置された。カメラの数分だった。
それが更に二つに分かれた。4つのアングルの映像とまったく同じ4っつの画面が現れたのだ。
エレベーター内を映す映像は1つ
後は同じ映像がそれぞれ左右に並び6組
エレベーターがルナ08のいるフロアに到着した。
警備員がエレベーターを降りると
エレベーター内の画像がきえた。・・が
エレベーター前を映す右側には警備員の姿が映っているが左には映っていなかった。
カメラの死角に警備員が入るとエレベーター前の映像は消えた。
やがてルナ08のいる部屋の前を映す右側の映像に警備員の姿が入ってきた。
やはり、左側には何も映っていない。
警備員は部屋の前に立ち止まると、鋼鉄製のスライド扉の目の高さに設けられた窓に顔を近づけ、いちまいのカードをリーダーに通した。
すると中が見えなかった窓が透明になり中をうかがうことができた。
ルナ08の部屋の中から入口をとらえているカメラの右側にその様子が映ったが、左側の映像には何も変化がなかった。
レベッカが当直しているモニタールームが映し出された。
ルナ08の部屋を映すモニターには左側の映像が映っていた。
警備員が窓を覗き込んでいると突然カードリーダーがピッと小さな音をたてた。
警備員は振り返りそちらを見つめた。
続けて網膜認証のカメラが赤くひかり、指紋認証のパネルが緑色に発光した。もう一度カードリーダーがピッと小さな音を立てた。
ロックが外れる音がし、扉が自動的に廊下から見て左に開いた。
警備員は驚いた。
椅子に座っていたルナ08がすっと立ち上がると
首を左に傾げた。
「ココカラ出シテ」
ぱっと眼を見開いて入るが、焦点が定まっているようには見えない
「なにを言っている」
警備員がルナ08を椅子に座らせようと右足を部屋の中に踏みいれ体が部屋の中に入ろうとした瞬間
いきなり左に開いていたドアが動いた。警備員にぶつかり、また開いて
また閉まり。鉄の扉が何度の何度も開閉を繰り返し警備員を殴り続けた。
やがて警備は部屋の中にぐったりと倒れこんだ。
その様子は、左側の映像には映っていなかった。
ルナ08は歩き出し倒れた警備員を踏みつけて部屋の外に出た。
ルナ01~07も同じように映像を操作し扉を開け外に出た。
Drギルモンが首都レジアスを見下ろせるバルコニーの手すりに肘を掛け
煙草をふかしながら心の中でつぶやいた。
『アメリア単独での脱出も不可能ではないが・・・・
安全に逃げ出すにはいくらか協力が必要ではあった。
しかし、まさか全員が事を起こしているとは!騒ぎが大きくなりすぎるやもしれん、ルナ08βは何を考えているのだ?』
「さて、私もそろそろ動きだすとしよう!」
様子を見に行っただけの警備員が戻ってこないと
警備室が騒ぎ出したのはそれから1時間後であった。
ルナ08の部屋の前に駆けつけた警備員が部屋の中で息絶えた警備員を発見した。
非常警報が首都レジアスの中心部軌道エレベーター内に鳴り響いた。
軌道エレベーターキルメス研究所同フロアの通路兼バルコニーに
ルナ達8人は姿をあらわした。
外気が冷たい風となって彼らに当たったが、
生まれてから一度も味わったことのない感覚であった。
彼らはそれを心地よく感じていた
ルナ08一人を除いて、