Chapter 2反抗衛星 1悪魔の迷宮
01悪魔の迷宮
少年は夢を見ていた。
ルナ01少年の名前であった。
真っ白な大きな部屋で、ルナ01~08が玩具を使って遊んでいた。
皆が皆、決して楽しそうには遊んでいなかった。
ルナ08だけがニコニコと積み木を積み上げはしゃいでいた。
01は、それを見つめていた。
突然、重武装をした警備員が部屋に入ってきて、
08の積み上げた積み木を崩し08の細い左腕をつかんで部屋から連れ出そうとした。
08は必死に拒み助けを01~07のメンバーに求めた。
01もそうであったが他のメンバーもただただその光景を見つめるばかりであった。
「いやだ、助けて・・・・行きたくない」
じっとルナ08を見つめていた。
「助けて、お願い・・・・・助けて、いやだ」
「助けて、お兄ちゃん、お姉ちゃん・・・たすけて、みんな・・・・」
哀願するルナ08
ルナ01がつぶやいた。
「た・す・け・て・・・」
「つれていってはいやだ・・・・」
「い・や・だ」
ルナ01は目を覚ました。
「助けてお兄ちゃん」
目のさめたルナ01の頭の中でその言葉が何度も繰り返された。
「オズだ、ひさしぶりだな~マグワ!」
突然のオズからの電話に
タピオンベース陥落により、フラックス軍との契約が破棄されフリーの立場になり
レジアスに向かおうとしていたマグワが答えた。
「ちょうどいいや、オズ、フラックス軍に在籍してちゃ
やばいんで、仕事が急になくなってしまった。どこかに仕事はないかい?」
「それを、わかってて電話したんだよ、
人の捜索を頼まれてほしい、戦争じゃないが報酬は出る。」
「俺に探偵をやらせる気が?」
少し、呆れてマグワがいった。
「頼むぜ、フリーでなければできねぇ仕事だし、
お前が一番、そいつに近いところを飛んでいる。な~頼むぜ!」
オズが泣きつくようにいった。
「で、そいつを見つけてどうする?」
「救助して、スカイ・ジョーに引き渡して欲しい」
「スカイ・ジョー、・・・・わっははははは、」
マグワはスカイ・ジョーと聞くと突然笑い出した。
「なんで笑う?」
「冗談きついぜ、オズ、俺はついさっきスカイ・ジョーに殺されそうに成ったんだぜ」
「そいつは確かに笑えるな、大笑いだ。笑ったついでに頼むぜ!」
同情に乗っかるようなふりをして頼み込んだ。
「了解したよ。契約コード送ってくんな、受理する。
あっそうだ、俺の機体はジョーにやられちまったんでな。今はガイルの機の中だ、そっちへ頼む」
断るかのように見えて呆気なく了承した。
マグワがコクピットのモニターを見つめた。
「わかった。じゃあ頼んだぞ!」
というとオズは電話をきった。
「ガイル、少しより道だ、付き合うか?小遣いくらい出してやる。」
コクピットの後席から前席を見下ろしマグワがガイルに話しかけた。
マッドサンダーに攻撃を受け後飛行不能で不時着したマグワをガイルが救出していて
マグワはガイルの機に乗っていたのだ
「ああ、いいよ、どうせ、しばらく暇だ!」
ガイルが答えた。
“コ・モンランム”レジアス評議会議室!
「やれやれ、ギディオン軍も思い切った行動に出たものだ。
誰かがタピオンベースのパルスレーザーを消してしまったおかげで
均衡がくずれてしまった。多大なる消耗がまた生まれてしまう。」
“コ・モンランム”取り締まり評議長が落ち着いたトーンで話し始めた。
白髪でメガネをかけた。ごく普通のひ弱な老人のように見える。
「いたしかたないでしょう議長!
どの道タピオンベースは目の上のたんこぶであって、
そのまま放置しておくわけにはいかなかった。
それにタピオンベース地下には莫大な鉱床が埋もれている。
タピオンベースを陥落した今
なんとしてもギディオン軍からは、死守せねばなりません。」
他の評議員が口をさした。
「ギディオン軍は北東、東、南東方面基地隊してもそれぞれ地上戦艦を配備してきています。」
そのためにレジアス外郭の8ベースは第一級警戒態勢にあり、それ以外の都市からタピオンベースに援軍を送る必要があります。」
軍務総監が答えた。背の高いがっちりした体形である。
「他の都市からタピオンベースを死守する程の部隊を派遣すれば
その分その都市の軍備が手薄くなり侵略される恐れがあります。
傘下協定中の他社に応援を要請してはいかがでしょう?」
他の評議院がアドバイスをした。
「のんきに外交などしている時間はありません、パルスレーザーを復旧させる前に
おそらく、地上戦艦は
第一警戒ライン内に侵攻してしまうでしょう。現在のタピオンベースの戦力と我々の制圧戦略軍とを、合わせても侵攻を食い止め、時間を稼ぐことは不可能に近い
第一警戒ライン内に入られてしまえば、パルスレーザーが復旧したとてパルスレーザーの影響を受けず侵攻されてしまいます。」
しばらく俯いてモニターを見ていた議長だが
何やらモニターに表示されると
「やむをえません、衛星軌道上よりスカイフォートレス1艦を向かわせましょう」
と一括した。
「軌道上より降下させると、元にもどすのにも、莫大な経費がかかります。」
他の評議員がいった。
「首都レジアスの内輪ベースに通常配備させましょう、ギディオン軍も新型の地上戦艦を一度に4隻も作戦投入してきています。対抗措置としましょう」
「援軍を送るにしろ何にしろ地上戦艦との戦闘は第一警戒ライン内で行われることになりそうです。軍務総監これでよろしいですか?」
評議長の机のモニターには”マザーレジアス”出した回答があり
評議長は、それを棒読みしていただけであった。
軍務総監は立ち上がりうなづくとそのまま席をはずし、退出していった。
「さて、次はサテライト計画の進行と承認でしたかな・・・?」
スカイフォートレス(空中要塞)全長260m全福は500mも及ぶ巨大な飛行戦艦であった。
おもに大気圏外衛星軌道上で建造されていた。
宇宙戦艦としても役割を果たせるレベルにまで仕上がってはいたが、脅威は宇宙空間に無く、もっとも、都市防衛の緊急防御の要として軌道上から短時間で目的地にたどり着くことができた。
衛星軌道上
宇宙ステーション“デビルズラビリンス”内で、緊急放送が流れた。
「緊急ミッション発令!緊急ミッション発令!
スカイフォートレス3号艦ルシファーを地上投下する。」
「目標フラックス軍タピオンベース、投下ポイント“窓”を計測中!」
管制室でオペレ―タ―達が計算のやり取りをかわす。
“窓”とは、衛星軌道上から地上の目的地に的確に降下するための大気圏突入ポイントのことである。
「投下速度設定してください。・・・・・現在-200」
ルシファーへデータ送信、投下速度現状維持!
突入時+-0」
「“窓”確定しました。180秒後に初回遭遇します。」
「初回遭遇にて、投下を決行する」
「補助第一ガントリー解除!続いて第二第三第四解除」
ルシファーを左右から支えていた鉄製のアームがはなれていった。
現在メインガントリーのみの支持です。」
「投下タイミングデータ、ルシファーに転送します。」
「以後の操作はルシファー内でおねがいします。」
「こちら、ルシファーブリッジ了解した。」
「一回目の“窓”で突入する」
ルシファーのブリッジに場面が一転した。
「メインエンジン、点火せよ、」
「メインガントリー解除」
「デビルズラビリンスに相対速度合わせ」
ルシファーの両翼の大型エンジンが火を吹くと同時に
デビルズラビリンスからの大きな鉄のアームが、
ルシファーから離れたが、位置は変わらぬままエンジンの噴射が続けられた。
「“窓”接近、離脱カウントダウン始め
50,49,48・・・・・・
・・・・6,75,4,3,2,1、」
「メインエンジンフルスロットル」
ゴーと轟音をとどろかしているように噴射されたメインエンジン
とともにルシファーがデビルズラビリンスから離れていく
その轟音は、空気の無い宇宙空間にはつたわらなかった。