Chapter 1未来錯誤 14エイミーとの約束
14 エイミーとの約束
永久中立法人“ソ・リアテック研究機構”
首都トリストラム領内
夕焼けに照らされ赤く染まった高層ビル群が立ち並ぶ中に
中央医療センターはあった。
中央医療センターの一室
「最近の状態は安定していますが、やはり
施設外の生活は危険な状態に陥る可能性があります。」
白衣の細身の男がそう告げた。
「どれだけ時間をかければ気が済む、・・・あの子が生まれて3年もたつというのに!
俯きながらジョーが呟いた。
「彼女だけの問題ではありません
15年前にこの病気が発見されてから、研究所の方でも最善を尽くしています。
遺伝子のレベルの研究も繰り返し行っていますし・・・・
治療法や薬は研究され続けていますが・・・・
安全が完全に約束されなければ決定的治療難しい病なのです”ブリュエル症候群“とは、」
”ブリュエル症候群”15年ほど前に
“ソ・リアテック研究機構”の
“Drブリュエル”によって発見された発症率0.03%の先天性の遺伝子病!
体力の低下による呼吸困難や発熱など発作的症状の後気を失い死に至るケースが報告され学童児に至るまでの致死率は80パーセントを超える。
未だ治療方や薬は発見されていない、
重度感染患者は専用の安定装置などを配置した治療施設内での生活が余儀なくされていた。
最新の安定装置は“ソ・リアテック研究機構”首都トリストラムの中央医療センターにしか配備されておらず。全世界の患者がそこに治療を求めてやってきていた。
“遊戯室”公園に見立て作られたそこは、室内とは思えないつくりをしていた。
その砂場で二人の幼児があそんでいた。
「お砂の山にスコップをさしちゃだめでしょ、トニー」
トニーと呼ばれた男の子が
「だって、僕が作ったんだもん、エイミーの山じゃないよ」
「さっきエイミーに、くれるっていったよ」
エイミーと呼ばれたかわいらしい女の子がこたえた。
「明日になったらあげるよ、今日はまだ僕のだから」
「トニー安定機治療の時間だよ」
トニー父親と母親が遊戯室の入口に立っていた。
トニーは立ち上がりエイミーを一人砂場に残し父親と母親にかけよった。
「パパ~だ~、パパ~」
父親が
「仕事が早く終わったんで、トニーの様子を見にきたよ、いい子にしてたかい?」
と、トニーを肩車すると楽しそうに遊戯室を出て行った。
一人さみしくエイミーがその姿を見つめていた。
「エイミー」
エイミーの後ろから声がした。
エイミーは少し憂鬱な表情で振り返り
「ジョー、クレア!」
「何だ、元気がないぞ、エイミー」
とジョーがエイミーの頭をなでながら屈んだ、
「あんなの見せつけられたらね。さみしいわよね!」
クレアがそう答えた。
「ううん!」エイミーが首を横に振り続けた
「私には、ジョーとクレアがいるもん、さみしくないよ!
・・・だけど、パパとママがいたらもっとさみしくないかな?」
「エイミーは豪いな、強い子だ、何か御褒美をあげなきゃな」
ジョーがエイミーを抱きかかえ話した。
「じゃあ、もっとエイミーに会いに来てくれる?ジョー・・・」
エイミーの言葉にサングラスの下のジョーの瞳がうるんだ。
「やっぱりエイミーはいい子だ、
だけどしばらくおじいちゃんはエイミーに会えないんだ。」
とジョーがエイミーにいった。
「私はいるから大丈夫よ、毎日でも会いに来るから」
クレアがフォローを入れたが
目を少しうるませ悲しそうな表情で
「どうして?お仕事?・・・・」
エイミーがジョーに尋ねた。
「仕事じゃない、エイミーがすごく欲しいものを見つけたんだ
それを探しに行く」
「やっと見つけたの?」
ジョーの言葉にクレアが割ってはいった。
「ああ、オズからの情報で存在は確認できた。
だが移動を繰り返しているので所在が確認できずにいるので時間がかかりそうだが」
クレアに返答した。
「ジョーに長く会えないなら、いらないよ、そんなの!」
エイミーがジョーの長旅を心配してそういった。
「そんなのいらない訳ないさ、トニーよりもっともっと大きな砂山作ってくれるんだぞ!
エイミーの為だけにパパは・・・・・・」
「エイミーにパパが居たの?」
満面の笑みを浮かべエイミーがジョーに問いかけた。
「ああ、間違いなくエイミーのパパだ、時間はかかるかもしれないがなるべく早く連れてくる。」
ジョーも笑みを浮かべ答えた。
「エイミー、一人で病院の先生や看護婦さんの言うことちゃんと聞けるから
クレアもジョーと一緒に探しに行ってくれる?」
さみしさを我慢する覚悟でエイミーはクレアにいった。
ジョーとクレアは驚きの表情を浮かべた。
「二人で探したほうが早く見つかるでしょ、エイミーのパパ」
にっこりと笑ってエイミーは二人を見つめた。
ヘリオスベースに全速力で向かうマッドサンダーのなかで
ジョーは孫娘とのやり取りを思い出していた。
「やっと、見つけたんだロブ・・・くたばるなよ!」
「マッドサンダーよりヘリオスベースへ、
ギディオン軍の地上戦艦と遭遇、帰還途中の箱河豚部隊が全滅した。
生存者のいる可能性もある。ポイントを送信する至急救助に向かってくれ!
それとマッドサンダーの補給準備も頼む!」
「ヘリオスベースよりマッドサンダーへ、
現在その地上戦艦の西方に3隻のギディオン軍地上戦艦が出現し、
レジアス東方三基地はすべて第一級警戒態勢にあり救助隊を出す余裕がないし、ポイントまでたどり着けるかどうかもわからん!
補給行動も自主で行うか、南方バローベースで行ってくれ」
「くそっ、」
ジョーは舌打ちをするとキーボードをたたいた。
モニターにマップが表示され
先ほど遭遇した地上戦艦以外の地上戦艦の配備状況が映し出された。
マッドサンダーから
北東グレンブルベース、東方ヘリオスベース、南東ビルドゥマルベース、
空路は制圧されていて、ヘリオスベースに戻ることもままならない
ヘリオスベース滞在のトレーラーに戻らなければ自己補給も難しい、
「ちっ」また舌打ちした。
しばらく考え
マッドサンダーは進路を少し南方に傾けると
電話回線を開き呼び出しを掛けた。
ププププププ、ププププププ、ププププププ、ププププププ、ププププププ、
ププププププ、・・・・・・
「くそ、何やってんだ。オズ早く出てくれ!」
ププププププ、ププププププ、ププププププ、ププププププ、ププププププ、
ププププププ、・・・・・・カチャ・・・でた。
「よ~、ジョーお前さんから電話なんぞ珍しいな!」
オズがいった。トレーラーにいたジョーに電話をかけてきていた男だ。
「どこにいる、オズ!」
ジョーが、あわてて聞きなおした。
「バローベースからビルドゥマルベースへ向かってる。
おっきなドンパチが始まったみたいだ、バローにいたせいで儲けそこなっちまった。
今ならまだ間に合いそうなんでビルドゥマルベースに向かっちゃいるが・・・」
大型トレーラーの助手席に座りながらオズが、答えた。
「トレーラーも一緒か?」
ジョーが聞く
「ああ、客の荷物も積んでるんでそのトレーラーで外環状線を走ってる。」
首都レジアスの外環部には8つのベースを繋ぐ環状鉄道と環状高速道路がはしっていた。
「でかした。オズ、そちらに向かう補給させろ!」
オズは傭兵のプロモーター傍ら、武器の売買もしていた。
「路上でか~?」オズ
「最短時間で合流できる何処かのサービスエリアで落ち合おう!」
「それと、傭兵を雇いたい、パソコンに地理コードを送る
そのポイントに一番近い、今現在フリーのソルジャーを向かわせてくれ!
人名の救出だ!」
「あ、ははっ、」
オズが高らかに、笑った。
「スカイジョ―からおいらに依頼か!こいつは、笑っちまうぜ!」
PDA端末をバッグの中からとりだすと、ジョーのデータを受信し
検索を始めた。
「傭兵を使ってまで、助けて~奴はとはいったい何者だ?・・・」
「ロブ・キンスキン、・・・・
かってギディオン軍でグローリアーナの野獣と呼ばれた男だ!」
「見つけたのか・・・・ついに」
驚いたようにオズがいった。
「お前さんのよこしたデータで見つけれたんだ。感謝するよ!」
ジョーが答えた。
「わかったぜ、このオズ様のネットワークに期待してくんな、今すぐ手配してやる。
電話きるぜ!」
と電話を切ると、またすぐ何処かに掛け始めた。
「オズだ、ひさしぶりだな~マグワ!」
墜落したヘリが幾つもの残骸となり砂丘に散らばり黒煙を上げていた。
箱河豚隊の残骸であった。
一機だけ比較的原形を留めた箱河豚08の機体があった。
テールローターを捥ぎ取られたその機体は墜落の衝撃で大きく変形していた。
機内では、パイロットと乗務員、アルバート、ハンス、ギル、バーキンが血だらけの状態ですでに息絶えていた。
ノーバディー・コロイドの姿はそこには無かった。