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連れて来られた場所とは・・・。

「さぁて何処へ、向かうのだろうか・・・」

と彼女の背中を見つめて歩いて行く。僕は初めて探検する街を楽しみつつ、

彼女の後ろ姿だけは、絶対に見失わないように注意して歩いて行く。

僕の事は、気にしていないのか、彼女は自分のスピードで淡々と歩いて行く。

そして、彼女の足は止まり、馴れた様子で引き戸を引いた。

彼女は店内に入ると、手でドアを押さえ、

「さぁ、入った、入った」

「あっ、ありがとう」と店内へ入ると、視界に飛び込んで来たのが、

壁に吊るされていたり、床に置かれていたりしている。

色取り取り、様々な形のギターやベースを、

眺めているだけで楽しめていた。


「ハナちゃん、遅かったね。もう皆んな集まってるよ」

「げっ!もう揃ってるんだ。じゃ、急がなくちゃ」

と楽しそうに会話を続けている彼女の姿というより、

店長にたいして少し嫉妬していた。情けない話ですけど・・・。


嫉妬の視線を送りまわっていたのに気づかれたのか、

「ねぇねぇ、ハナちゃん。彼って、もしかしてカレシ?」

といわれた彼女の表情の中に迷いを見たような気がした。

振り返り、僕の顔を数秒間眺めた。

「えっ、店長・・・ん?まぁ、何て答えれば、良いかな?

じゃ、店長スタジオ借ります。健児ついてきて!」

「おお!ハナちゃんも中々、やるねぇ!もう、尻に敷いているんだ、

ハナちゃんも、隅に置けないね」

「店長、セクハラだよ、セクハラ」と僕の腕を掴んで引いていく。

僕は店長と目があい、アイコンタクトを交えて頭を下げた。

そしてほぼ同時に苦笑いを浮かべていた。

やっぱり同じ人種だから、分かりあえるのだろう・・・わかんないけどね。


「健児、ここだよ、ここ」

そして僕の目の前には、頑丈そうなドアが出現していた。

まぁRPGで例えると、心して開けよ・・・っていう感じかな。

しかし勇敢な彼女は、馴れた手つきでドアを開ける・・・。

あろうことか、もう1つドアが僕らを、待ちわびていたように控えていた。

つづく・・・。

まぁ設定がRPGだったからだけど、

ドアの向こうから微かだが、音が漏れていた。

彼女は最初に開けた頑丈なドアを閉めると、

最後のドアを開け放った瞬間、それは訪れた。

大音量の音が僕を襲ってきた。スタジオ初体験!恐るべし・・・。


彼女は嬉しそうに、微笑みながら部屋の中へ入ると音が鳴り止むと、

彼女にたいして早足で近づくと、

「何してたんだよ、おそかったじゃんか!」とベースの子と、

ハイタッチを交わしている。

次はドラムの子に、近づくと握手をかわす。


最後にギターを構えたままの、女の子に近づくと、

ラッパーの人たちが、行うような挨拶を行なっている。

握手したり、なんか色んな事をしてた・・・難しすぎて、

僕には分けが分からなかった。


そして、突然スタジオ内に現れた、怪しい人物を発見したらしく、

三人がアイコンタクトを行っていた。

頷いたり首を振ったりしている姿に気づいた彼女が、

「あっ、ごめん、皆んな、紹介するのを忘れてた・・・」

「紹介するね、健児だよ」

「よ、よろしく、お願いします」と頭を下げたけど、

何を?って言われたら困る。でもそんな事を、

言うまで親しくないですからね。


僕は、女の子達の紹介して貰おうと、思って後ろを振り返ると、

すでに彼女は、そこには居なかった。

彼女はというと、部屋の隅の方でギターを、

なにやら作業を行なっているようだった。


「健児くん、よろしく!」と不意打ちに、後方から声がかけられ、

びっくりして振り返ると、ギターを構えた女の子から、

「わたしは、カナだ」と僕に向けて拳を突き出している。

「ぼくは、健児です」と僕らは拳と拳を合わせた。

「うん、知っている・・・」と真顔で言われていたから切ない・・・。


「ねぇ、ハナとは、どういう関係なの?」

「さぁ、どういう関係なのかな?」

「ぷっ・・・健児くんって、面白いね」


「よろしく!健児くん」とベースの子は、右手を上げて待っていた。

「わたしは、ミキです」と少し照れくさかったけど、

無事にハイタッチを交わすと、

「ふぅん、ハナがねぇ、男を連れてくるなんてね」と僕の品定めをしているのだろう、

隅から隅までチェックされていた。


僕はドラムの子に、視線を投げかけてみた。

それに気づいたドラムの子は、僕に微笑みかけると、

スティックを軽やかに回してみせた。

クルクルと回すと、リズミカルにドラムを叩きだした。

その姿は、ほんと格好良かった。

感想がこれしか出てこなくて悪いけど、

やっぱり格好良かったと、いう言葉しか出てこないし、見つからない。

最後に揺れているシンバルを、左手で受け止めると、握手を求めてきた。


「よろしくね、健児くん!」と、差し出された手を握りしめる。

「わたしは、ナミです。えっと、ハナの彼氏って事で良いのかな?」

「彼氏?えっと、僕も、よく分からないんです・・・けど、そう思いたいです」

と笑って答えるが、何やらブツブツと呟いていて、

僕の言葉を最後まで聞いてなかったようだった・・・。

「そ、そう。と、言うことは、私にも、チャンスが有るって事で良いのかな?」

「えっと、チャンスって、何の事ですか?」

「ううん、ごめん、ごめん。独り言だから」と笑っているナミさん。

すると、後方からジジ、ジィィと電子音が聞こえた。

「け、ん、じ」と名前を呼ばれて振り返ると、

ギターを構えた彼女が立っていた。


すると彼女は、笑みを浮かべながら頷くと、

「本物の音楽というものを、聴かせて、あ、げ、る」と言われて

全身にゾクゾクと電流が走ったような気がした・・・いろんな意味で。


そしてココが、スタジオだった事に初めて気づいた。

僕が連れてこられた意味にも、気づくことが出来た。

僕のために、始まるんだ・・・LIVEが。


4人の女の子たちは、互いの顔を確認しながら、微笑み合っている。

すると、ナミさんが、スティック同士を叩き始めた。

「1、2、1234!」音がスタジオ内を走り回り、飛び回る。

その音を聴いた瞬間、音の洗礼を受けていた。


hanaは、全身でリズムをとりながら、一心不乱にギターを弾いている。

ベースのミキは、腰を支点にしてリズムを取っているのか、

体を揺らしながら楽しそうにベースを弾いている。

手の動きも滑らかで見ていて格好良かった。


楽しんでいるという表現が1番似合っているのが、

ナミさんだった。満面の笑みでドラムを叩く姿が、

とても楽しそうで、僕まで笑顔になっていった。

もう一人のギタリスト、カナが弾くのを止めと、

左手でマイクスタンドを、握りしめたと思ったら、

右足でリズムを取り始めると歌っていた。


ちょっと今までは気づかなかったけど、カナさんの歌で気付かされた。

そっか、これは、あの曲なのか・・・あれはデモだったのか?

そんな事なんてどうでも良かった。

だって、すげぇ、格好良いんだよ。


「後悔、ほんとうに後悔しているの?

本当に、そこまで自分を追い込んでみたの?

後悔している暇があるなら、前へ進んでみなよ。

簡単なことだろ?何も考えなくても良いんだよ。

少しだけ、足を前に出せば、良いだけなんだよ。

なにウジウジしてんだ?出来ない?そんな事ないさ。

出来ないと思うのは、自分が、そう決めつけてるんだよ。

前へ踏み出そうと、してないだけだろ?

そんな奴に、わたしは頑張れなんていわない。


後悔している、お前なんて、応援しない。足を一歩前へ踏み出せ。

前へ踏み出すだけなんだよ。なぁ?おもったり簡単な事だろう?

小さな一歩でも、前へ踏み出せさえすれば、私は応援するよ。

私は大きな声で叫んでやるさ、頑張れ!まけんなよ。


悩んでいる間にも、時間は刻々と進んでるんだぜ。

もったいないだろ?悩んでいる時間を他に回せ!

有意義な時間を過ごそうぜ!1日24時間だって事は、

子供だって知ってるぜ。


良いか、勝てとは言わない、だけど負けるなよ。自分にだけは、まけるなよ。

お前と時間は、一緒の空間で暮らしているのさ。

下を向くなよ、下ばかり見ていると、大事な事を見逃すぜ。

そうさ、お前の大切なものを失わないためにも、前を向け、前を見ろ。

そうすりゃ、きっと、お前の大事な物が見つかるぜ」



と演奏が終わるなり、彼女の口から、変な言葉を投げかけれた。

「どうした?だいじょうぶか、健児・・・」と心配そうな声色で尋ねられた。

なぜだろう?と思っていたら、腕に汗が落ちてきた。でも汗と思ったのは、

瞳から落ちる涙だと気づき直ぐ様、手の甲で拭い取ろうとするが、

綺麗には拭いとれず、腕全体を使って拭いながら答えた。

「ごめん、なんか、恥ずかしいな、こんな姿みられて・・・」

「わかったよ、わかったから、その、なんだ・・・やめろよ、

こっちまで、感染するから・・・」

「こんなの初めてだから、感動しちゃったよ・・・」

「もう、ほんと馬鹿なんだから・・・。この曲のタイトルは、

クヨクヨすんなよ!ってのに・・・・・・」

と頭を撫でられているらしい。でも、なんだろう凄く落ち着く。

「あ〜〜〜ぁ、ほんと、見てられないよ・・・」

「ほんと、ほんと、熱い、熱い、ごちそうさまでした!」

「でも、ちょっと、羨ましいな・・・・・・」

「って、おい、なにいってんだよ、ナミ!」

とナミさんにたいして、二人同時にツッコミを入れている。

ハッキリと見たわけじゃないから分からないけど、



ミキさんの大爆笑だけが、僕の耳の中に入ってきていた。

きっと、お腹を抱えて、笑っているのだろう

そして背後から視線を感じていた。

彼女から頭を撫でてもらっている最中に、悪いと思ったけど、

顔を少し斜めに下げるようにして、後ろを確認してみると、

心配そうな顔で、僕の事を見ていた。

僕と目が合うなり、何事も無かったように、

ドラムをチェックしている仕草をしていた。

ちょっと心配かけてしまったかな・・・あとで謝らないといけないな・・・

そんな思いが伝わったのか、

「いつまで、甘えてんだよ!」と至福の刻は終わりを告げられ、

僕から離れていく彼女はというと、ギターをギターケースに大事そうに収めていた。

「ごめん、健児を駅に送っていくから、先に帰らせてもらうね、

この埋め合わせは、次と言うことで」

「あいよ、ハナ待たな!じゃぁね、健児くん」

「ヒューヒュー、変な所に、寄り道するなよ」

「じゃぁ、健児くん、またね」

三人にたいして何か言おうとすると、背中をグィッと押された。

「えっえっ、なになに?」

「だから、外へ出るんだってば・・・」

「そ、それでは、皆さん、お世話になりました」

というなり、

「早く・・・・・・」と力の入った声で背中を押しながら、

素早く2つのドアを開けると、外へと連れだされてしまった。

「もう、世話のやける子だね」

「・・・・・・・・・・・・」

スタジオから出てみると、レジでお客と対応している店長と目が合った。

「やっぱり、彼氏だよね?ハナちゃんの」

「店長さん、おつかれさまでした。またよろしくお願いします」

と去っていく姿に、僕は思っていた。

その内、彼女の唇から、そう、彼氏だよ。なんて言ってくれる日は、

来るのだろうか・・・と考える時間さえも与えられず、

またしても背中を押された。苦笑いを浮かべる店長にたいして、

少し照れくさかったけど、軽く会釈すると、

背中の押される強さが倍増された・・・。


僕、何か悪いことをしたかな?と思いながら、

楽器屋から外へ出されてみると、夜風が頬にあたる。

少し肌寒く感じたけど、冷たくて、とても気持ちよかった。

やっと背中が解放されたので、ストレッチをして、コリをほぐした。

背伸びをすると、夜空に輝く星が目に飛び込んできた。

そのままお腹いっぱいに、星を吸い込む勢いで深呼吸を行うと、


「ねぇ、風が気持ちいね」と彼女のほうを見てみると、居なかった・・・。

僕を置き去りにして、彼女は先へ歩き出していた。

「おいおい、僕のことは、置いてきぼりかい。

ちょっと、ちょっと!」と追いかけていく。

帰り道が分からないので、彼女だけが頼りだ。

まぁ人に聞く・・・っていう手もあるけど、何と言われようとも、

やっぱり彼女だけが頼りだ。彼女の背中を必死に追いかけていった。

彼女は何も語らず、振り返りもせずに、歩き続けていた。

そして気づくと、◯◯学園前駅へ到着していた。

二人して電子カードで改札を通り抜ける。

そして駅構内に入った所で、彼女が、急に振り返ったので、

危うくぶつかりそうになってしまった。

「わっ、あぶない!」僕は体中のあらゆる筋肉に、

止まるように支持を出す。後ろに重心を持って行き、

両足で地面を踏ん張り続けると、ようやく、

その場で止まることが出来た。


僕はふぅ〜っ、と息をはくつもりで、口を開けた瞬間・・・

彼女と目が合って、不覚にも固まってしまった。

しかも鼻と鼻が、ニアミス寸前で、至近距離で見つめ合っているから、

考えるつもりはないけど、不埒な考えが脳裏をよぎっていた。

その思いも、彼女の目元が笑っているのを見て、体が反応していた。

何かを察知したのだろうか、足が後方へ下がって行く姿に、

「あら、ざんねん、ざんねん」と右手でデコピンの準備をしている、

彼女の姿が目に入る。


「期待して、変なことを、考えているからだよ」

彼女はデコピンする相手なくして、

手持ちぶたさを解消するために、デコピンの空打ちしていた。

「いやぁ・・・・・・ごめん」

「お願いだから、そこは、否定しとこうよ」

「えぇ・・・だって、ウソつきたくないもん」

「はいはい、正直もんは、存するぞ。じゃ、わたし、こっちだから」

と彼女は自分のホームを指差すと、

「健児は、こっちだから」と丁寧に教えてくれた。


「じゃぁ、またね」とホームに向かって下りて行く彼女に、

「今日は、ありがとう。とっても楽しかったよ」

やっぱり彼女は振り返ること無く、僕に向かって手を降ると、

背中に背負ったギターケースも微かに揺れていた。

彼女の階段を下りていくまで見送るつもりだったけど、

メールが来たことで最後まで見送ることは出来なかった。

「私に見とれていると、汽車が出発するぞ(笑)」

僕は走ったというより、階段を駆け上がりと、

自分のホームを目指して駆け下りていく。

彼女の言うとおり、列車が到着していた。

ちょっとホッとして列車に乗り込むと、出発を告げるベルが鳴り響く。

「ひぇ・・・危なかった、助かったよ・・・」

と列車に揺られて数分後、耳に飛び込んできたアナウンスによって、

急行列車だと言うことに気付かされた・・・。


「うわっ、これ、止まらないっす・・・」と項垂れている中タイミングを、

見計らったようにメールが届けられた。

「私に見とれているから、乗る列車を間違えるんだよ・・・、

次は、ちゃんと確認して、乗ろうね(笑)」

どうやら、彼女にしてやられた・・・ってか、

また(笑)が付いていた。

これは、どの時の仕返し?あの時かな、それとも・・・と考えたとき、

ある瞬間を思い浮かべると、とたんに頬が熱を持ち始めたので、

悔しくなって、彼女のメールにたいして、感謝の気持を込めて、

中指を立てながらメールを送信した。


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