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夜明け
春。
風暖かなこの季節に僕の学校はすでに倒壊を招いていた。
壊れた西校舎。
半欠けの職員室。
その全ては並大抵の力ではない、ある一人の生徒が組んだ組織の仕業だったのである。
朱治 撤
。その者の右に出るものなど、まずいない。
校舎の倒壊はお手のもの。
ましてや、地区全土にまで広がる彼の名前を知らない人間などいない。
彼はそういう人間なのである。彼は朱治家に独りとして生まれたと言われているが、実のところは兄と姉がいるんだという。
彼の母は普通の主婦。
父は暴力団の頭だという。
なぜ、僕が彼の家系まで知っているのかというと、それは十年も前の話になってしまう。その話はまたするとしよう。