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15.盗賊退治


 攫われた行商人の女を助けるべく、俺達は洞窟の中へ入っていった。


 ダンジョンと違い、複雑に入り組んだような構造ではないので、最奥へ辿り着くのは容易だ。


 円形状に広がった空間を、岩陰から覗き込む。


 壁にかけられたランタンの灯りの下、盗賊達は連れ攫ってきた女の衣服をひん剥いている。

数はざっと8人。

どうやら()()()()()のようだ。


「お盛んだな。品性のかけらも無い下衆どもが」


「盗賊にお行儀なんて期待するだけ無駄だろ。アンタはちょっと落ち着け」


 隣で歯を鳴らすリブを小声で諌めながら、俺は足元に落ちている石を数個、そっと拾い上げる。


 あの女を助けるには、盗賊達を事を起こし、無力化するしかない。

それも、依頼報告のために殺すのは無し。

対して、相手は俺達を発見すれば、躊躇なく命を取りに来る。


 そんな状況で、俺達2人で正面から突っ込んでいって、無事切り抜けられるかと問われれば、答えは否だ。


 だが、奴等はおそらく、天狗になっている。

自分達が計画した——いや、下手をすれば思い付きで実践してきた追い剥ぎ強盗の数々が上手く行き、誰にも発見される事なく利益を得られた事に、快楽を覚えているはず。

最奥付近に見張りの一人も置いていないのがいい証拠だ。


 おまけに、盗賊達が目の前の餌に涎を垂らしている今なら、チャンスはある。


 俺は拾った石の半分をリブに差し出し、標的を首の動きで示した。


「まずは奴等の目を奪う。いいな?」


「任せろ」


 石を受け取ると、俺の意図を汲んだようにしっかりと頷くリブ。


 さて、盗賊退治と行こうか。


 俺達は左右別方向を向き、石を投げた。


 ——パリン、パリンッ!


 壁にかけられたランタンが二つ、音を立てて壊れた。


「なんだ!?」


 この洞窟に誰かが入ってくると想定していなかったのか、動揺を露わにする盗賊達。

間抜けな連中だ。


 俺達は暗闇に紛れながら、次々とランタンを破壊していく。

奴等に視界をもたらしていた光源が、徐々に弱くなる。


 最後のランタンを破壊する。

洞窟内が暗黒に染まり、盗賊達の視界は完全に奪われた。


「お、おいテメェら!松明もってこい!」


「バカ!侵入者を()るのが先だろうが!」


「その侵入者をどう探すってんだ!見えねぇんだぞ!」


「灯りだ!灯つけろ!」


 動揺を露わにし、急いで戦闘準備を始める盗賊達。


 遅いんだよ。


「——ぎゃっ!」


 暗闇の中で、短い悲鳴が響く。

リブが盗賊を仕留めたようだ。


 まず一人。


「ハァッ!」


「《ポゼス》ッ!」


 暗闇の中をまともに動けない盗賊と違い、俺とリブは軽快な足取りで盗賊達に攻撃を仕掛けていく。


 アンデッドであるリブの目は、光がなくても視える。

そして俺は、死霊を放つだけなので視界が無くても問題ない。


「ぎゃあぁぁぁーーーっ!!?」


「お、おい!どうした!ガッ!?」


 死霊が取り憑き、錯乱した盗賊を見て混乱する仲間を、リブが鞘に収めた剣で殴打し意識を刈り取る。


 我ながら、中々にいい奇襲作戦を思いついたものだ。

なんて感心している場合じゃないな。


「《ポゼス》ッ!《ポゼス》ッ!」


 強制憑依の死霊魔法を連発し、盗賊達の正気を奪っていく。


 喚き散らす盗賊達の汚い悲鳴が重なり、洞窟内にこだまする。


 せいぜい良い夢見な。


「ひ、ひぃぃぃぃっ!」


 一人分の足音が、出口の方に向かっていく。


 最後の一人まで追い詰め、ソイツが逃走を図っているようだ。


「逃がすかっ!」


 すかさずリブが動き、直後に打撃音が響く。


 どうやら無事に仕留めたらしい。


「終わったか?」


 俺は手元の死霊に魔力を与え、天井に放つ。


 ゴーストボールの青白い炎が、洞窟内を薄く照らした。


 口元に布をあてがわれ、半裸の状態で怯え縮こまる女と、白目を剥いて倒れる盗賊達が、視界に映る。


「1、2、3、4……あ?7人?」


 倒れている盗賊の頭数が、ランタンの灯りの下で見た数と合わない。


 リブが仕留めた、出口に向かおうとしていた奴もちゃんと含めた。

なのに、一人足りない。


「——避けろっ!」


 リブの警告に、俺は咄嗟に後ろへ飛び退く。


 ついさっきまで立っていた場所に、短剣が数本突き刺さる。


「チッ、今ので仕留めれりゃ、お互い楽だったのにな」


 岩陰から男が一人、ゆっくりと姿を見せる。

灰色の髪に、魔物の毛皮で仕立てられたコート。

狩人のような格好をした男だ。


 やはり仕留め損ねた奴がいたか。

おそらく、最初のランタンが割れた時から岩陰に身を潜めて、反撃の機会を窺っていたのだろう。

まさか、自分達が同じように盗賊の奇襲を受ける事になるとは。


「オマエら、死ぬ覚悟はできてんのか?」


 剣を抜き、残虐な笑みを浮かべながら、男はそう問いかけてきた。

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