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豪鬼との契り

母洋巳と剛拳が、初戦(はついくさ)のお祝いをしてくれるという。奏司は眴と一緒に屋敷に向かっていた。

「戦に出るには精進潔斎しないといけないので、豪鬼さんは大変でしょう」

「まあね、肉が主食のようなものだからね」

「今日はいっぱい食べれていいですね」


二人が到着する頃には、辺りには肉の焼けるいい匂いが漂っていた。今夜はたいていどこの家でも、肉料理だろう。

「ねえ、何持ってきたの?」

「ワインですよ」

「へえ、珍しいね」

「以前、洋巳さんから聞いてたので、街へ行ったついでに」


食事が随分と進んで、豪鬼がテーブルを離れたのを機に、眴はおもむろに豪鬼について話し始めた。

「豪鬼さんから、(ケガレ)が祓い切れていないような感じを受けます」

(みそぎ)は十分すぎるほどしたんですが」

「豪鬼さんの持つ独特の気のせいかもしれませんね。ただ非常に強いので、豪鬼さん自身がですが。(ケガレ)をねじ伏せているようです」


「どうしたら…」

洋巳が心配そうに聞いてくる。

「豪鬼さんは御子姫殿と一緒に戦をしているなら、御子姫殿にお願いするのが一番いいと思います」

「そうですか…」

剛拳も今一つ、渋っているようだ。


「俺が一緒に連れてくよ、それなら心配ないでしょ」

(みそぎ)してもらうってことは、(つい)になるってことよ」

「御子暇はもうそのつもりでいるよ」

奏司は豪鬼を呼んだ。

「豪鬼は御子姫と(つい)になりたいんだよね」

豪鬼は大きく首を縦に振った。


「ごうき、ひめ、いっしょたたかう、ついなる」

洋巳と剛拳はしばらく顔を見合わせていた。洋巳は豪鬼の顔を見た。


ーーなんという因果なのだろう、二人ともに


御子姫と(つい)になるのか。あの、御子姫の大切な婚儀の日から、運命は紡ぎ出されているようだ。


「そう、豪鬼は御子姫殿が好きなのね」

豪鬼はにっこりと満面の笑みで頷いた。

「ひめ、だいすきっ!!」

奏司は異形の里でのあの事を引き合いに出した。豪鬼がどれほどに、御子姫を大切な存在と思っているか。


「だけど、奏司。(みそぎ)を見てるって、大丈夫なの?」

「俺は大丈夫。御子姫に聞いてみるよ。御子姫がいいって言うなら」

「そうですな…確かに以前、アカメ対策で二人を(つい)にと。(みそぎ)ができるかどうかは豪鬼の心の成長具合を見て決めると、仰られた」

「その時が来たんだよ」


奏司は、豪鬼がどれほど頭が良くて、感情細やかで豊かかを話した。言葉は出てくるのが遅く単語も切れぎれだが、話していることは理解できている。

ただ、いろんなこと、頭の中のことを話す言葉で表現するということが難しいだけだと、奏司は説明した。

「初めての戦でも、豪鬼は御子姫の動きを見て、慣れてきたら自分で考えていた。何より、(ケガレ)に対する反応が早いんだ」


その晩は、豪鬼と奏司と、時々は眴も交えて、囲碁や将棋、チェスなど豪鬼が好きなだけ勝負をした。相変わらずの勝負強さに、勝った人がアイスを食べられるというルールも、五個目には洋巳に止められていた。

「おなか壊すでしょ!いい加減にしな!」


翌朝、いつものように奏司と豪鬼は御子姫を起こしに行っていた。

御子姫は羽織をはおって、庭まで出てきた。

「あのさ、お願いがあるんだけど…」

奏司が言い終わらないうちに、御子姫は豪鬼を呼んだ。豪鬼が御子姫の近くへ行くと、御子姫は少し難しい顔をした。


「やはり、(みそぎ)が不十分じゃな。どうするかのう」

「俺、何かあったら止められるよう、一緒に部屋に入って見てるから、(みそぎ)やってくれる?あの、髪の毛で」

御子姫はしばらく考えて、陽が沈む頃、夕餉を取らずに来るよう伝えた。

「洋巳と剛拳には、一応契りの儀を行うことも伝えておいておくれ」

それだけ言うと、御子姫はまた寝屋に戻っていった。


御子姫は昼過ぎに、異形の里の里長に電話して確認していた。

「左様です。御子姫殿の仰る通り、気の道と、つながる五臓六腑です」

「ありがとう。やはりな、異形には異形の(みそぎ)が必要じゃ」

御子姫が、そう確信しているのと同じ頃、奏司は眴から同じことを聞いていた。


「気の道?五臓六腑がどうのこうのって、前に(ケガレ)(モドキ)を取り出してた時に話してくれたよね」

「はい、豪鬼さんは異形なので、(ケガレ)の気を取り込み易いのだと思います。覇気が強いので。御子姫殿にお任せしておけば問題ないかと思います」



日暮れ時、奏司は豪鬼と一緒に御子姫の元へ向かった。

本家に着くと双子が出迎えてくれた。話は通っている様子で、御子姫の部屋へと通された。豪鬼は初めて訪れる場所なので落ち着かなかった。

御子姫の部屋まで来ると、御子姫の姿を見てやっと豪鬼は落ち着きを取り戻してきた。


「豪鬼、よく来た、偉いぞ」

奏司は、御子姫に眴が話していたことを伝えた。

「そうか、眴が気がついておったのか、それで今朝私のところへ来た時に妙な顔をしておったのじゃな」

御子姫は奏司に話しかけると、眴が言っていることは概ね正しいと話した。

「それで、(みそぎ)なのじゃが、奏司には手伝って欲しいことがあるのじゃ」


奏司は最初からそのつもりだった。豪鬼と一緒に水垢離(みずごり)して、離れへ来るよう御子姫は告げると、先に沐浴場へ行ってしまった。

「豪鬼、御子姫は準備があるみたいなんだ。水垢離しに行くよ」

二人は用意されていた白晒しの浴衣に着替えると、渡り廊下まで来た。その異様な雰囲気に豪鬼の足が止まる。


すると、離れから御子姫が顔を出して豪鬼を呼んだ。

「御子姫が呼んでるよ。さあ、豪鬼、一緒に行こう」

戸をくぐると、奏司は戸を閉めて鍵をかけ、その場で正座して待った。

「豪鬼、こっちへおいで。神様にお祈りじゃ」

御子姫を真似て二礼二拍手すると、御子姫が祝詞を奉納する。


「さあ、豪鬼、神様へ約束じゃ」

「ひめ、まもる、ひめ、だいじ、ひめ、ついなる」

そう言うと豪鬼は自らお辞儀をした。

御子姫は嬉しそうににっこり笑うと、豪鬼の着ているものを脱がして仰向けに寝転ぶよう言った。


すると、御子姫もまた浴衣を脱いで裸になった。

豪鬼には食べられないのはわかっていたので、儀式の時の膳は形だけで何も入っていなかった。

御子姫は豪鬼の一物にふれると勃たせ始めた。豪鬼はすぐに、真っ直ぐに力強く勃った。


人が行為をしているのを、傍で見ているのは妙な感じだった。

「う…」

豪鬼がうめくのを、御子姫は大丈夫か声をかけていた。豪鬼はただ御子姫を見つめて、されるがままだった。

御子姫が反り勃った一物にゆっくりと腰を落とした。


「はっ、ああぁ…」

かすかに聞こえる御子姫の声と重なるように、豪鬼の声も漏れ聞こえた。

「豪鬼、よいか、驚くでないぞ」

御子姫は、白髪と紅い瞳に、全身の響紋が光り輝いた。奏司は何度見ても美しいと思った。


豪鬼は髪が宙に揺らめいていたのが、自分の体をなぞり始めたのに驚いていた。初めは髪の毛をつかんで引っ張っていたが、御子姫が痛がるとやめた。

「奏司、手伝ってくれ」

呼ばれて、奏司は御子姫の近くまで来た。

「輪紋を、私たちを取り囲むように、三つ四つほど出せるか」

奏司は言われた通り、両横と前後に輪紋を繰り出した。


御子姫は輪紋に反響させるように、祓詞を唱えると同時に髪で豪鬼の全身を覆った。すると真っ白だった髪が毛先から澱んだ黒い色へと変わっていった。

(ケガレ)(モドキ)のようだと、奏司は思った。

豪鬼は(みそぎ)が始まってから、ずっとおとなしく横たわっていた。


自分の時とは大違いだ。豪鬼の方がよほど神妙にしている。

それだけ、豪鬼には何をされているのかが、わかっているということなのかと、奏司は感心した。自分が心配することなど、一つもないと思っていた。


やがて、御子姫は豪鬼の中に巣喰い始めていたものをすべて取り出すと、輪紋で御子姫自身を囲ませ、一気に祓った。

全身が輝いて、輪紋ではね返った響紋に取り巻かれ一瞬のことだった。


豪鬼は起き上がると、御子姫を抱きしめた。すると、いきなり御子姫の肩を嚙もうとした。

「豪鬼!待って、噛まないで!」

豪鬼は、肩をつかまれ奏司に引き倒され、ハッと我に帰った。

「ひめ?」

「大丈夫じゃ」


御子姫は豪鬼の頭を撫でると、腰を動かし始めた。

「豪鬼、偉かったの。ご褒美じゃ」

それはまるで、御子姫自身が自分へ言っているようだった。御子姫は久しぶりに本物の一物を咥えこみ、たまらなくなっていた。

しかも豪鬼の物は立派で、御子姫の奥まで貫いていた。

「はああぁぁ…ああっ!あっ!ああっ!いいっ!」


すると豪鬼が、そのまま御子姫を押し倒すと、足を持ち上げ深々と何度も何度も出し入れし始めた。

御子姫は、その都度、あんっ!あんっ!と声を張り上げていく。


奏司はまさか目前で、御子姫と豪鬼のまぐわう姿を見せられるとは思いもよらなかった。

御子姫の方を見ると、目と目が合った。御子姫は奏司へ手を伸ばしてきた。

その瞬間、奏司は背筋に冷たいものが走った。


御子姫は豪鬼に尻を向けると、今度は後ろから思い切り突かれて大きな喘ぎ声を上げていた。

「そうじゃっ!ああっ!ああ、きもち、いいっ!ああっ!いいっ!あああっ!」

奏司に見られていることに、ひどく興奮しているように見えた。

それ以上に、久しぶりの本物の一物への興奮がおさまらないようだった。

奏司には拷問に近かったが、目を離すことができないでいた。


御子姫は、奏司にわざと見せつけるよう脚をひらき、出し入れするところを見せながら、豪鬼の一物にこすられ膨らんできた芽を、指でこすっては体をくねらせ喘いでいた。

「あっ、ああっ、いいっ!ああっ!あんっ!ああっ、い、いいいっ!いいっ…」

豪鬼の、いつ果てるかわからない健剛ぶりに、御子姫の喘ぎ声はずっと続いていく。

奏司は為す術なく見守るしかなかった。

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