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父、奨弥(1)

「やっと豪鬼のところへ行けるね」

ラゲッジに詰めこめるだけ荷物を載せると、やれやれという様子で奏司は後部座席に乗り込んだ。上下スェットで、御子姫に言わせると、よくそんな寝間着のような格好で出かけられるな、らしい。


双子の見送りに手を振られて、車は出発した。途端に奏司は寝始めた。御子姫は窓側へ持たれているのを、わざわざ自分の膝に頭を乗せた。

「ダメだよ。御子姫の匂いが気になって眠れないじゃん」

そう言ったはなから、寝息を立てている。


「奏司、着いたぞ!起きよ!」

「そうしっ!!そ、う、しっ!!」

豪鬼が勢いよくドアを開け、奏司に肘打ちを食らわせる、奏司は反射的に受け止める。

「こらあっ!」


「怒ってるぞっ!ヤバいっ!!」

「ヤバい、ヤバい、にく、にく、ヤバい!!」

豪鬼は奏司から肉の入ったクーラーボックスを受け取る。一つには豪鬼が好きそうな特性焼豚が入っている。肉は今日は奮発して米沢牛が塊で入っている。養い親や里中に配れるよう黒船のカステラも一本ずつ買ってきた。


「里長、これ俺からのお礼。陣羽織、作った。着てみてね」

「豪鬼にはこれ、俺とお揃い、スェットやパーカー。スニーカー買ったんだ、戦人の里に来る時、これ履くんだぞ」

バゲッジから大きなトランクを取り出すと、奏司は豪鬼達が暮らす家へと持っていった。

「山のような荷物ですな。いったいどうしたんですか」

「着物を作ったんだ、袴も。剛拳と豪鬼の分。スーツもある」

「今夜、相談したいことがあるんだ」


「まずは里のみんなで肉食べようよ、豪鬼が待ちきれなさそう」

里長は御子姫に挨拶をし、話し込んでいた。奏司の変わりぶりについて、大学のことや、表の仕事について。

「そうですか、それは大層驚かれましたでしょう」

「あんな男だらけのところにいさせられぬと」

笑いながら事の顛末を話していた。


夜には豪鬼と一緒に風呂に入り、豪鬼に買ったものをいっぱい並べていた。豪鬼が一番気に入ったのはチェスだった。西洋版の将棋のようなものだ。

まともに豪鬼と囲碁や将棋ができるのは奏司くらいだった。

チェスもまたそうなるのが目に見えていた。チェスは駒が形でわかるところが豪鬼にはわかりやすかった。それがまた余計に強くなっていく要因でもあった。


豪鬼は何回か勝負をして気が済んだようで寝てしまった。豪鬼は頭を使うと集中力が凄い分、大変疲れやすいようだった。



豪鬼が寝てから、奏司は剛拳に相談を持ちかけた。一つ目は奏家本家での奨弥のことだった。先日の出来事や、御子姫が禁止したことが逆効果になっていること。禁止は賢明な対策ではないことなど。


二つ目は父奨弥が御子姫と契ってからも、本家に大勢の女がいたこと。そして、自分の中に父奨弥がいるということ。自分の意識が薄れた時に、忘れた頃にいきなり出てくること。


「ごめん、ちょっと整理がつかなくて」

「奏家本家のことは、私が来た時にはもうそんな風でした。まだ今の方がましなように思えます。どうされたいんですか」

「戦の練習になりそうなスポーツとかできるよう、そういう施設を作ろうかなって。ここの里は穏やかなのに、戦人の里は殺伐としてるもん」


「もう一層の事、公認のバーとかスナックとか家以外で飲んで発散できる場所を作るとか。母さんの店にも大勢来てたよ」

「それは御子姫殿が許せばできそうですね。街の居酒屋のようなものなら」

「どうして父さんは街に出て、母さんと知り合ったの。母さんは、御子姫のことになると機嫌が悪くなって聞けなかったし」


「父さん、総代だったのに、モテモテでいっぱい女の人いて、何が不満だったのかな。将隆って人のことは里長から聞いてる。表の仕事を父さんの代わりにしてて、実質総代はその人だったって。だから父さんは嫌気が差したのかなあ。

理由としては弱いと思うんだよね」

「そうですな。将隆の力は絶対だったので、誰も逆らえませんでした」


「だからって全部投げ出して逃げるなんて、父さんおかしくない?そのくせ、御子姫に未練タラタラで執着激しいし」

「それはどういう…まさか先程の奏司殿の中に奨弥殿がいるということと関係が」

「俺の中の父さんは、本当に御子姫を大切に思ってるのかな。ただ、自分のものを取られるのが我慢できないだけじゃん」


奏司はここで今日話していることは、剛拳との秘密の話であることを念を押した。御子姫に知られたくないことばかりだった。

「父さんがもっとしっかりしてたら、御子姫は将隆にいいようにされなかったと思うんだ。それでも、無理なくらい権力があったわけ?」

「それはどういう…まさか、御子姫殿が?」


「一人で全部守ろうとしたんだよ。将隆ってヤツだけじゃないよ、表の仕事関係で体張ってたんだよ。俺、調べ上げて全員潰してやった」

剛拳はあまりのことに唖然とした。奏司の相談は途方もなかった。相談というより、話すことでごちゃごちゃを整理しようとしているようだった。

「俺、父さんには、御子姫は渡せない。俺の体、乗っ取られたりしないよね」


「ねえ、剛拳。豪鬼と一緒に戦人の里へ来てほしい。無理かな。今よりもっと、ここみたいにいい場所にするから」

奏司は、御子姫には話せないことがいっぱいあった。そのうちの一つは母洋巳のことであった。

「俺さ、刑務所の母さんに会ってきたよ」

剛拳は驚いた。一瞬、洋巳の名前が口をついて出そうになった。


「もうすぐ刑務所を仮出所できそうなんだ。俺、身元引受人になった。神守の妙な弁護士が付いててさ、なんか気に入らないから、俺に変更したんだ。母さんも俺の方がいいって言ってくれたから。けど、問題は御子姫なんだよね」

「それで、どうなさるおつもりですか」

「街に戻すと絶対また薬に手を出すから、できたらさっき言ってた居酒屋っていうかそういうのやらせてあげたい、戦人の里で。どう思う?」


「それは難しい相談ですな」

「でしょ?けどさ、刑務所の中で母さん病気しててさ、子宮も出産時に出血多量で摘出しちゃってるから、ボロボロなんだよね。昔みたいに、もうならないと思うんだ」

洋巳の様子を聞いて、剛拳は心が揺れた。洋巳は洋巳で随分と無理を重ねたのだろう。


あの時、自分が奨弥を止めていれば、こんなに皆苦しまずに済んだのではないだろうか。剛拳はどこまで話してもいいのか、判断に苦しんだ。

「母君のことは、ぜひ御子姫殿と話し合われて下さい」

「そうだね。背中切られてるしね、やっぱ難しいよね」

奏司は話し終わると、胸のつかえが取れたのか、すぐ眠りに落ちた。その寝顔を見ながら、剛拳は己の判断の甘さを悔いていた。



よほど疲れていたのか、翌朝も奏司はなかなか起きなかった。豪鬼と剛拳はいつも通り、早朝に起き鍛錬していた。

豪鬼が何度呼んでも起きない。やっと起きてきた奏司を見て、豪鬼は飛び退(すさ)った。その様子を庭から見ていた剛拳が、豪鬼に声をかけた。

「だれ?」

豪鬼は剛拳の後ろに隠れると、奏司を指差して小さな声で聞いた。


剛拳はまさかと、奏司に近寄った。目つきが、まったくの別人になっていた。

「奨弥殿か」

『相当疲れているようでよかったよ。用心深くなって隙を見せやしない。俺を目覚めさせてくれて、豪鬼に感謝してるよ』

「どうされるおつもりですか」

『どうもしやしない。姫と話したいだけだ。呼んできてくれないか』


剛拳は、豪鬼を連れて里長の家へ行くと、御子姫に訳を話した。

「そうか、二人ともここで待っていておくれ」

御子姫は、奨弥に入れ替わられた奏司の待つ家へ向かった。異変を察知した養い親達が外まで出てきていた。御子姫は奏司と二人きりにしてもらうと、誰も入れないよう結界を張った。


『用心深いな…まあその方がいい』

「どういうわけじゃ」

奏司は御子姫を抱きしめた。でもそれは、奨弥のものだった。強く、息が詰まりそうな、がっしりとした抱擁と、息もできないほどの激しい口づけと。

『会いたかった。話したかったんだ』

「本当にそれだけか」


奏司は御子姫から離れて座った。すると御子姫も縁側の近くに座った。

『このまま、奏司が目覚めなかったら、姫はどうする。俺とまた共に生きてくれるか』

「そんな…」

『もう、俺を愛してはいないのか。俺は約束通り戻ってきたのに』

手を伸ばすと、御子姫は逃げようと中腰になった。

『わかったよ、触れられるのも嫌なくらい、もう愛してはいないんだな』


「なぜじゃ、なぜ話してくれなかったのじゃ。黙っていなくなって、こんな恐ろしいことまでして」

『恐ろしい?奏家ではよくあることだ。俺は力が欲しかった。姫と釣り合い、姫を守れるだけの』

「だからといって、話してくれれば、二人でどうとでもなったはずじゃ」


『叔父貴が、よこせと言ってもか』

「どういうことじゃ」

『叔父貴の趣味は年端もいかない娘を手篭めにすることだ』

「それくらい、どうということはないわ」

『姫はまだ十三だった』


御子姫は思い出した。よく痣だらけになって帰ってきた奨弥を。

『渡せるわけないだろう。殺そうとも思ったよ、美琴殿に頼んで。毒まで渡した』

「毒…」

『すまなかった。俺はこんなことになるとは思っていなかったんだ。姫が一緒に帰ろうと泣いてすがった時に、無理して帰ればよかった。たとえ意識を失うことがあっても、それならなおさらどれだけ痛めつけられても、姫を守ってやれた』

「奨弥…」


奏司は立ち上がると、御子姫を抱き寄せた。だが、御子姫は体を固くして拒んだ。

「すまぬ、無理じゃ…今すぐには無理じゃ」

奏司は御子姫を畳に押さえつけた。

『愛しているんだ、おまえじゃなきゃだめなんだ。おまえじゃないと。薬漬けにされたって…おまえじゃないと…』


奏司が切なそうな眼差しで御子姫を見つめていた。涙がぽたっと御子姫の頰に落ち伝った。

『愛してる…一度だけでいい。昔のように抱かせてくれないか』

「もう、無理じゃ!」

その手は御子姫の着物の裾を一気に捲り上げ、膝を股の間に割り込ませた。片手で帯を緩めると襟を思い切り広げた。


スェットパンツをずり下ろし、そそり勃った物を御子姫の(なか)に強引に押し入れた。

「う、あ、あああっ!あ…っ!や…」

そのまま脱ぎながら、御子姫の股を広げ抱え込んで奥まで入れた。ぱんっ!ぱんっ!と肉と肉が打ちつけ合う音が、御子姫の漏れる喘ぎ声と交わる。


御子姫は足を持たれたまま、うつ伏せにひっくり返された。逃げられないよう後ろ手にされると帯を解かれ、奥襟を引っ張られ着物を脱がされてしまった。そのまま背中を押さえつけられると、今度は腰紐で両手を後ろで縛られ、残りの腰紐で足首と太ももを縛りつけられた。


「いやじゃ、やめてくれ!」

『気がすむように抱かせてくれたらよかったのに。俺だってこんなことをせずに済んだんだ』

そのまま片足を引き上げると、また奥まで何度も何度も突き上げた。

『蹴飛ばされるのも厄介だ。こっちも大股開きに結んでやろう』


大股開きにして抱え込むと、わざと御子姫に聞こえるようにべちゃべちゃといやらしい音を立てて舐め始めた。これにはたまらず、とうとう御子姫は喘ぎ始めてしまった。

「ああっ!あん、あん、ああぁ、だめぇ!いやあっ!やめっ!あん、ああっ!ああ…おねが…いやあっ!ああ、あ、あ、いい、いやっ!いいっ!い、はあっ!ああ…」


舐めては指を入れられこすられて、御子姫の体を知り尽くしているだけに、延々と御子姫は逝かされ続けた。何度も絶叫し、蕾はもう剥き出しになり痙攣し続けていた。

『ああ、たまらない。何度も何度も締まって、俺ももう何回もイっている。若い体はいいな、回復早くて、何回もイける』

そう言って御子姫の乳首をまたいじりまわす。

『ほらまた、締まってくる。どこをいじっても感じっぱなしだ』


どれほど時間が経っただろう。御子姫は頭がぼうっとしたまま、うずきが止められず、よだれを垂らしていた。

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