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守るべき者

御子姫は、異形の里へ急いでいた。

大戦が始まって間もなく、鳩が数回里から届いた。豪鬼の様子が書かれていたが、行ってやることは難しかった。ろくに食べもせず、丸くなって寝てばかりで、すべてを拒否しているようだと。その後、鳩は届かなかった。


あの日以来、豪鬼は毎日柿の木に登ったまま一日を過ごしていた。御子姫が来るのを辛抱強く待っていた。一年が過ぎ、ある日を境に突然、柿の木に登らなくなった。柿の木に八つ当たりをして、毎日毎日殴ったり平手突きするうち、この頑丈な木を折り倒してしまった。そうして、豪鬼は殻に閉じこもった。


「豪鬼!豪鬼!」

結界の内に入ると、目に入ったのは様相の変わった屋敷周りだった。山羊の小屋がなくなり、鳩小屋も消えていた。何より、大きな柿の木が倒れていた。折られた箇所には、子供の拳や張り手の跡が残っていた。


「豪鬼!すまなんだ。豪鬼!豪鬼!」

御子姫は、奥から出てきた育ての親に、すぐに来ることができなかったことを詫びた。彼らは何一つ文句は言わなかった。かえって、ただ見ているほかなかったことを、御子姫に何度も頭を下げていた。

山羊は、豪鬼が突然起こす癇癪で、絞め殺してしまったと語った。鳩は御子姫との連絡用と理解していたようで、御子姫が来ない怒りの矛先が真っ先に向かった。

「それで連絡が途絶えたんじゃな。私は便りがないのは元気でやってる証拠だとばかり…」


御子姫は何度も豪鬼の名を呼んだ。どれくらい、呼び続けただろうか。


「ヒ…ぃメ。…ひ、い。ぃめ」

納屋から、子供がひょろひょろと出てきた。

「豪鬼かっ!!」

御子姫は駆け寄って、肩ほどまで伸びきった髪をかきあげ、顔を両手で包んだ。痩せて小さくなった豪鬼がそこにいた。ぎゅうっと抱きしめると、御子姫は涙ながらに謝った。豪鬼はぼーっと御子姫を見ていた。

「ひ…ぃめ。いめ」

豪鬼は、御子姫に向かって、姫と呼んでいた。


御子姫は豪鬼を風呂に入れ、その間に肉を薄く切ってもらった。

風呂に入れながら、髪を切って整え、爪も切ってやった。豪鬼は嘘のように静かにされるがままだった。頭を洗いながら角の様子を見ると、焼き切ったはずが少し膨らんでいるように思えた。

「私がおらんかったのが、そんなに悲しかったか。本当に悪かった。もう二度としないから。(はよ)う元のように元気になっておくれ」

風呂に入ってさっぱりとした豪鬼は、出された肉をしばらくじーっと見ていた。一枚、また一枚と、やっと食べることを思い出したようにゆっくり食べた。


御子姫は、早々に本家へ戻らなければならなかった。しかし、豪鬼のこんな姿を見ては、すぐに戻る気にはなれなかった。



一週間後、御子姫は響家本家に戻った。待ちかねていたように、次々と予定が入ってくる。

まずは、大戦(おおいくさ)の締めをしなければならない。それも兼ねて本家で大宴会が行われる運びとなった。

その席には奏家代表として、将吾と妻帆波も出席した。ちょうど同年代の者たちが中心に活躍したので、労うためにもぜひにと出席することとなったのである。


宴会には、特別な計らいで双子も出席した。双子は十六になっていた。もちろん、お目付役として剛拳も同席した。

大広間では、宴会の前に全員で無事大戦を終えられた報告と御礼をした。この大戦の成功は、今後の(ケガレ)との戦を考えると、何より価値ある人材育成ができた。これ以上の成果はなかった。


宴席では、上段の間に御子姫が座し、隣の席はわざわざ空席とした。それは御子姫の、総代の席は空席のままにという意思の表れであった。

大広間の上座中央には将吾と帆波がいた。その横並びに双子と剛拳や戦船(いくさぶね)の軸である主将の(つい)が座した。


しばらくすると、御子姫の元に将吾がやってきた。

「いつまで、総代を決めずにいるつもりだ」

将吾は四十になり、父将隆から表の仕事を任されるようになってきていた。

「総代の席は、あくまで頭領の私と対になる者が継ぐべき席です。将吾殿には、表のことを引き継いでいただけたらと考えています」

「だがなあ…」

「もしも、将吾殿が戦ができ、対がいなければ、私は将吾殿を総代に選んだと思います。ですが、今は将吾殿には帆波がおりますし、お二人目の後継もお生まれになって、今総代が空席だからと、焦る必要はないのではありませんか」

「まあ、そう言われてみればそうだがな」


将吾は一旦引き下がったが、また御子姫に話を振ってきた。

「ところで、奨弥のことなんだが…」

御子姫は、将吾の方へ振り向いた。何を話すのか、何か知られているのか気になった。

「まだ、離縁はしていないそうだな。失踪してから十年以上経つ。いったい、どうなっているのか聞いても構わないか」

「困りましたな…」


御子姫は、少し考えながら言葉を選びつつ、将吾に子供のことを話した。将吾は話の内容に動揺した。それもそのはずである。己の出来心で、響紋衆としての未来を潰してしまった女の名が、今になって聞かされたのである。

「洋巳とのことは…」

「誰も知らないことになっております、ご安心下さい」

御子姫は小声で囁いた。そして将吾にはっきりと意思表示した。

「私はその子供を奨弥の代わりに、総代につけるつもりです。その子が私の元に来たあかつきには、奨弥との離縁をすると約束しております」


将吾は思いもしなかったことを御子姫から聞かされ、父将隆に話をした。将吾には八歳になる息子、将真(しょうま)がいた。奨弥の息子は十歳になるという。まるで、幼い頃の自分と奨弥のようだった。こんなことにうろたえる将吾を見て、将隆は行き先が危ぶまれるなと思った。



御子姫は豪鬼に会いに行く前に、剛拳から奨弥と子供のことを聞いていた。名を奏司(そうし)と付けたと。戦に行く際に神守(かもり)の者たちが見送りに集まる、船着場にて引き合わせたいとのことだった。


御子姫は大戦後、多忙を極めていた。その中、大戦の報告を政府関係者にしなければならず、将隆とともに一席設けることになっていた。それにあたり、御子姫は覚悟を決めていた。政府関係者からは、十年間に渡った大戦の素晴らしい成果に対し、御子姫の評価が決定的なものとなった。

「おまえの信用はこれで安泰だな。俺も骨を折ってやった甲斐があるってものだ」

「はい、叔父上には力添えいただき、表の方々との人脈も築けて感謝しております」


御子姫は、将隆と二人きりになっても動じずに、運ばれてくる料理を美味しそうに食べながらお酌をしていた。

「どういう風の吹きまわしだ」

「何がでございますか」

「とぼけおって。何が目的だ、奨弥の子供のことか」

「お察しが良くて助かります。将吾殿からお聞きになりましたか」

将隆は七十八になっていた。対戦前の六十後半だった頃に比べれば、やはり年による衰えは否めなかった。だからだろうか、年齢からくる、権力への焦りともいうべきものが見え隠れした。


「奨弥の子供が(とお)になります。十六になったら総代の座につけようと思います。その確約がいただきとうございます」

将隆は御子姫を舐め回すように見ていた。

「そのためなら、身を任せても良いというわけか」

「私は存じ上げておりますよ、奨弥との祝言の時、叔父上がどのような目つきで私を見ていたか。それからも事あるごとに、本当にいやらしい目で見ておいでだった」

将隆は鼻で笑うと、御子姫に帯を解くよう命じた。


御子姫は立ち上がると、帯締めをほどき帯を解いた。その様子を酒を飲みながら将隆は楽しんで見ていた。着物を脱ぎ、肌襦袢になると、将隆の横に座りお酌をした。

将隆の手が襦袢の合わせから入ってくる。御子姫の乳を揉みしだきながら、やわい肌は気持ちがいいと言ってまた酒をあおっていた。

指で乳首を転がされ、御子姫は思わず声が出そうになった。将隆の手は襦袢から見えている太ももへと伸びていった。尻へと指を這わせていくと、もっちりと張りの良い尻をなぞりながら、徐々に指は裂け目へとたどり着いた。

「あ…はぁ…」

とうとう、御子姫は声が漏れてしまった。その声を聞いた途端、将隆は襦袢を剥ぎ取り、御子姫の身体を電灯の下に(さら)した。


「ほう…美しいな」

将隆は明るい中で、ゆっくりと御子姫の股を開いていった。御子姫は思わず顔を手で覆った。将隆は、その手を払った。

「おまえのその恥ずかしむ顔が見たいに決まっておる。どうじゃ、あそこもよく見せてもらおうか」

御子姫の腰に手をかけ、灯の下に引きずると、将隆は膝に手をかけ、ほら見せい!と一気に股を広げた。御子姫の股の間が照らし出されると、恥ずかしさからか汁が光った。

そこへ将隆は酒を垂らし、ずるずるとすすった。

「あ…ああ…」

将隆は酒を垂らしながら、芯芽が膨らんでくるのを楽しんだ。

「ああ…はあぁ…あああ…はぁ…はぁ…はぁ…あ、あああああ…っ」

「そうだろう、こんなに膨らませて。気持ち良いだろう、なあ」

将隆はねちっこかった。御子姫があの手この手で喘ぐ姿を見て喜んでいた。


そうやって明るい電灯の下で、御子姫は散々(もてあそ)ばれた。

意地と誇りはないのか。昔、奨弥にそう言った。御子姫は思った。これが私の意地。では、誇りはと問われれば、いかなる陵辱(りょうじょく)を受けても折れぬ心だ。


そう、強く思った瞬間に、とうとう将隆の一物が御子姫の股の間に割り込んできた。大股開きにされ、汁が垂れ、明々と電灯が灯る中、なにもかも見られながら、ひくひくとする股の間に飲み込まれるように一物は入っていった。

「おうおう、食らいついて気持ちが良いな、おまえは良いものを持っとる。奨弥を唯一褒めるなら、おまえをここまでに仕上げたことだ」

そう言って笑う将隆の声に、体は反応してしまう。

「ああああ…っ!ああ、はあああ…」

「どうじゃ、気持ちよかろう、そんじょそこらの竿ではないからなあ」

「あ、あ、ああ、あああ、あっっ…」

御子姫は指を咥えて、これ以上声が上がっていかないようにしていた。それでも、ずん、ずぶん、ずん、ずぶんと腰を振られた挙句、一物でかきまわされると、大声をあげてしまうのだった。


この調子で一晩中、御子姫は将隆に蹂躙(じゅうりん)され続けた。明け方、解放された御子姫はきちんと着物を着ると、女将に髪結いを呼ばせて、来た時の通り整えさせた。料亭に神守(かもり)の車を呼び、本家までと告げ後部座席に入るなり、横になって帰っていった。

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